2006年(平成18年)51日に会社法が施行されましたが、当法施行後に設立された株式会社は、株券不発行会社になるのが原則で、定款に株券を発行することができる旨の定めを設けた場合のみ株券発行会社になります。 

一方、会社法の施行前において、株式会社は株券を発行することが原則であり、定款で株券を発行しない旨の定めを設けた場合のみ株券不発行会社になるという取扱でした。そのため、会社法の施行前に設立された株式会社は、定款で株券を発行しない旨の定めを設けていない限り、会社法施行後も株券発行会社(定款に株券を発行することができる旨の定めがあるもの)とみなされます(会社法整備法764項)。 

ただ、株券発行会社であっても、譲渡制限規定を設けている会社の場合、株主の請求があるまでは株券を発行しないことが可能です(会社法2154項)。したがって、譲渡制限規定を設けているのが一般的である中小企業の株式会社の中には、株券発行会社でありながら株券を発行していない状態の会社も少なくありません。 

株式会社が株券発行会社であると、株主が株券の発行請求をしてきたり、保有株式を他の者へ譲渡したりする場合等に株券を発行しなければならないため(会社法128条、215条等)、株券発行のコスト面でのデメリットが生じます。また、会社側が株主に対して株券を発行した後、当株主が株券を紛失して他の者に善意取得されてしまう(会社法131条)リスクも存在するところです。

そのようなことから、株券発行会社でありながら株券を発行していない状態の株式会社が、上記のデメリットやリスクを回避し、株券を発行していない現状に合わせる目的で、株券不発行会社への移行手続きをするケースもあります。株券発行会社から株券不発行会社へ移行するには、株券発行の定めの廃止手続きを行わなければなりません。

 

【株券発行の定めの廃止の手続き】 

 

株券を発行していない株券発行会社が、株券発行の定めを廃止して、株券不発行会社へ移行するには、以下の手続きを行う必要があります。

  • 株主総会の特別決議
  • 株主等に対する株券廃止公告または通知

 

【株主総会の特別決議】 

株券を発行することができる旨の定款の定めを廃止するには、定款変更の手続きをしなければなりません。そのため、当手続きを行うには、株主総会の特別決議を経る必要があります。 

また、株券発行会社である株式会社の場合、定款の「株式」の章の条項の中には、株券発行を前提とする内容の規定が含まれていることもあります(例:発行する株券の種類、株主名簿の記載事項の記載(記録)の請求の際に株券を添えて書類を提出する旨等)。

定款上に上記内容の規定が設けられている場合、株券を発行する旨の規定と併せて削除または内容を訂正する形で定款変更の手続きをしなければなりません。

 

【株主等に対する株券廃止公告または通知】 

株券発行の定めの廃止の効力発生日の2週間前までに、株主等(株主および登録株式質権者)に対して、株券廃止の公告または通知のどちらか一方の手続きをしなければなりません。 

※株券廃止の公告は、定款で定められている公告方法によって行います。たとえば、会社の定款に「当会社の広告は、官報に掲載してする。」と定められている場合、官報に掲載して公告することになります。

株券を発行している株券発行会社が当手続きを行う場合、公告および通知の双方の手続きをする必要があり、どちらか一方の手続きをするだけでは足りません。

 

株主等に対する株券廃止の広告・通知事項は、以下のとおりです。

  • 株券を発行することができる旨の定款の定めを廃止する旨
  • 定款変更の効力発生日

 

※株券を発行している株券発行会社が当手続きを行う場合、上記事項の他、定款変更の効力発生日に発行されている株券は無効となる旨も公告および通知しなければなりません。

 

【株券発行の定めの廃止の手続き順序について】 

株券を発行していない株券発行会社が株券発行の定めを廃止するために必要となる「株主総会の特別決議」と「株主等に対する株券廃止公告または通知」の手続きを行う順序については、法律(会社法等)上で規定されていません。

そのため、株主総会の特別決議(株主総会の開催日)に先立って株主等に対する株券廃止公告または通知を行う形で、株券発行の定めの廃止の手続きを進めることも可能です。

株主総会の特別決議(株主総会の開催日)に先立って、株主等に対する株券廃止公告または通知を行う形で手続きを進める場合、株主総会の特別決議によって、直ちに株券発行の定めの廃止の効力を生じさせることもできます。

 

【株券発行の定めの廃止の登記】 

 

株券発行会社である株式会社が、株券発行の定めを廃止する旨の定款変更をした場合、株券発行の定めの廃止の効力が発生した日より2週間以内に、株券発行の定めを廃止した旨と廃止年月日を登記しなければなりません。 株券発行の定めの廃止の登記の登録免許税は、1件の申請につき3万円です。 

 

株券を発行していない株券発行会社が株券発行の定めの廃止の登記手続きを行う場合の必要書類は、以下のとおりです。

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 株式の全部について株券を発行していないことを証する書面(例:株主名簿)

 

※株券を発行している株券発行会社が当手続きを行う場合、「株式の全部について株券を発行していないことを証する書面」ではなく、「株券廃止公告をしたことを証する書面」を提出しなければなりません。

 

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