会社法等の改正法施行にともない、2015年(平成27年)51日から、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある旨」が登記事項になりました。 

そのため、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社は、2015年(平成27年)51日以降、一定の時期までにその旨の登記手続きをする必要があります(以下より、「会計限定監査役の定め」と言い、その旨の登記を「会計限定監査役の定めの登記」と言います。)。

 

【会計限定監査役の定めの概要およびその旨が登記事項とされた背景】 

 

株式会社の監査役は、取締役等の職務執行を監査する役割を担う機関(会社法3811項)で、原則として、「業務監査権限」と「会計監査権限」の2つの役割が与えられています。

 

【監査役の監査権限の範囲】

業務監査権限

(会社の経営面全般のチェック)

会計監査権限

(会社の資金面のチェック)

取締役等の職務執行が、法律(会社法等)や定款の規定に違反していないか、または著しく不当な方法で行われていないかを監督する権限 会社の決算書類や財産状態等の内容が正確に表されているか否かを監査する権限

 

しかし、監査役会設置会社および会計監査人設置会社を除く非公開会社(譲渡制限規定を設けている会社)は、定款の規定によって、監査役の権限を会計監査権限に限定することができます(会社法3891項)。 

 

当改正法施行日である2015年(平成27年)51日より前までは、定款の規定で監査役の権限を会計監査権限に限定した場合、その旨の登記をする必要はありませんでした。

しかし、このような状態だと、監査役会設置会社および会計監査人設置会社を除く非公開会社の場合、会社の登記情報上の内容を確認しただけでは、登記されている監査役の権限の範囲につき、会計監査権限に限定されているのか否かが判別できません。

そのようなことから、上記形態の株式会社においても、登記情報上の内容を確認しただけで監査役の権限の範囲を判別できるように、会計限定監査役の定めが登記事項とされたのです。 

 

特例有限会社の監査役は、定款に会計限定監査役の定めがあるとみなされている(会社法整備法24条)ため、特例有限会社によって、監査役の権限が会計監査権限に限定されているのか否かを判別できないといったことがありません。そのようなことから、特例有権会社の監査役については、会計限定監査役の定めの登記をする必要はありません。

 

【会計限定監査役の定めの登記をしなければならないケース】 

 

以下のようなケースに該当する株式会社は、会計限定監査役の定めの登記をしなければなりません。

 

【「会社法施行日以降に設立された株式会社」の場合】 

会社法施行日以降に設立された株式会社の監査役の監査の範囲は、「業務監査権限」および「会計監査権限」にわたるのが原則で、会計限定監査役の定めを設けた場合のみ、「会計監査権限」に限定されます。

そのようなことから、会社法施行日以降に設立された株式会社が、以下のすべての事項に該当する場合、会計限定監査役の定めの登記をしなければなりません。

  • 定款に株式の譲渡制限の規定がある
  • 監査役会および会計監査人を設置していない
  • 定款に会計限定監査役の定めがある

会社法施行日は、2006年(平成18年)51

 

【「会社法施行日前に設立された株式会社」の場合】 

会社法施行日前に設立された株式会社で会社法整備法53条に規定されている株式会社(旧小会社)に該当する時は、会社法施行後、定款に会計限定監査役の定めがあるものとみなされます(会社法整備法53条)。

そのようなことから、会社法施行日前に設立された株式会社が、以下のすべての事項に該当する場合、会計限定監査役の定めの登記をしなければなりません。

  • 会社法施行日前から現在に至るまで定款に株式の譲渡制限の規定がある
  • 監査役会および会計監査人を設置していない
  • 会社法施行日後、監査役の監査の範囲に業務監査権限を含める旨の定款変更をしていない
  • 会社法施行日時、資本金が1億円以下であり、かつ、最終の貸借対照表の負債の部に計上した金額の合計が200億円未満である

会社法施行日は、2006年(平成18年)51

 

【会計限定監査役の定めの登記の申請時期】 

 

当改正法施行日である2015年(平成27年)51日時点において、会計限定監査役の定めのある株式会社(定款に会計限定監査役の定めがあるとみなされる株式会社も含む。)は、当改正法施行日以降、最初に監査役の就任・重任・退任等の登記申請を行う時、同時に会計限定監査役の定めの登記を申請すればよいことになっています。 

たとえば、2016年(平成28年)520日に行った監査役改選にともなう重任登記が、当改正法施行日以降、最初に申請した監査役の登記だったとします。このような場合、会計限定監査役の定めの登記も、2016年(平成28年)520日に監査役改選にともなう重任登記と同時に申請すれば問題ありません。

これに対して、当改正法施行日である2015年(平成27年)51日以降に、定款変更決議を行った上、会計限定監査役の定めを設けた場合は、定款変更決議の効力発生日より2週間以内に登記申請する必要があります。

 

【会計限定監査役の定めの登記事項と記録例・登録免許税・必要書類】 

 

会計限定監査役の定めの登記申請を行うと、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある」旨の登記がなされます。

当改正法施行日である2015年(平成27年)51日時点で、会計限定監査役の定めのある株式会社が、会計限定監査役の定めの登記を申請した場合、登記上には、登記された年月日のみが記録され、原因年月日は記録されません。

2016年(平成28年)520日に監査役改選にともなう重任登記と併せて会計限定監査役の定めの登記を申請した場合の登記記録例】

監査役     〇〇  〇〇 平成28520日 重任
平成28520日 登記
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある  
平成28520日 登記

 

※当改正法施行日である2015年(平成27年)51日以降に定款変更決議を行った上、会計限定監査役の定めを設けてその旨の登記申請をした場合、定款変更決議をした日付を原因年月日として、登記上に記録されます。

 

会計限定監査役の定めの登記は、会社の資本金の金額によって、登録免許税額も変わります。具体的な登録免許税額は、以下のとおりです。

資本金の金額が1億円以下の場合 資本金の金額が1億円を超える場合

申請1件につき1万円

申請1件につき3万円

 

※会計限定監査役の定めの登記を役員変更(監査役の就任・重任・退任等)の登記と同時に申請する場合、役員変更分の登録免許税のみ納付すればよく、別途、会計限定監査役の定めの登記分の登録免許税を納付する必要はありません。

 

また、会計限定監査役の定めの登記を申請する際、それぞれの場合において、以下のいずれかの書類を提供する必要があります。

「会社法施行日以降に設立された株式会社」の場合

「会社法施行日前に設立された株式会社」の場合

  • 会計限定監査役の定めが記載されている定款
  • 会計限定監査役の定めを設けるために定款変更決議をした旨の株主総会議事録
  • 会計限定監査役の定めが記載されている定款
  • 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあることを証する書面

会社法施行日は、2006年(平成18年)51

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