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生前に遺言書を作成していた被相続人が亡くなった場合、その遺言書の内容に基づいて相続手続きを行うのが原則です。しかし、被相続人が遺言書を作成したときの事情と、相続が発生したときの事情が変わっているケースもあります。このような場合、遺言書の記載内容と異なる形で相続手続きを進めたほうが好ましいと考える相続人の方もいらっしゃるかもしれません。
遺言で相続人など特定の者へ財産を承継させる方法に「遺贈」、「相続させる旨の遺言」があります。このサイトページでは、遺言書の内容と異なる遺産分割の可否について、遺贈がなされた場合と相続させる旨の遺言がなされた場合に分けて解説していきます。
【ⅰ.遺贈がなされた場合】
遺贈には、特定の財産を受遺者に承継させる「特定遺贈」と遺産全体に対する割合を指定して受遺者に承継させる「包括遺贈」があります。どちらの遺贈がなされた場合でも、原則として、遺言書の内容と異なる遺産分割協議をすることは可能です。
遺言書で遺贈がなされている場合、その内容と異なる遺産分割をするには、受遺者の同意が必要になります。受遺者から同意を得るとは、いいかえると受遺者に遺贈を放棄してもらうということです。
特定遺贈の場合、遺言者が亡くなった後、受遺者はいつでも遺贈の放棄をすることができ、その効力は、遺言者が亡くなったときにさかのぼって生じます(民法986条1項・2項)。受遺者の放棄によって特定遺贈の効力を失った場合、遺言者が遺言書上で別段の意思表示をしていた場合を除き、受遺者が特定遺贈によって受ける予定だった財産の権利は相続人へ帰属します(民法995条)。そのようなことから、特定遺贈の受遺者に放棄する意思があれば、いつでも遺言書の内容と異なる遺産分割協議をすることが可能です。
一方、包括遺贈を受けた受遺者は、相続人と同一の権利義務を有すると法律上で定められているため、相続放棄と同じ方法で包括遺贈の放棄の手続きをしなければなりません(民法990条、915条)。
そのため、相続放棄と同じく、熟慮期間内に家庭裁判所へ申述する方法で受遺者が包括遺贈の放棄の手続きをした上、相続人全員で遺言書の内容と異なる遺産分割協議を行うことになります。
【ⅱ.相続させる旨の遺言がなされた場合】
相続させる旨の遺言がなされた場合、相続による権利承継をその相続人の意思表示にかからせたなど特段の事情がない限り、遺言者が亡くなった後、何ら行為を要せず、当然にその相続人へ相続による権利承継がされます。そのため、遺言書の内容が相続させる旨の遺言である場合、遺言書の内容と異なる遺産分割協議はできないとも考えられます。
しかし、相続人全員の合意があれば、遺言書の内容と異なる遺産分割協議が可能です。たとえ、相続させる旨の遺言がなされた場合でも、権利承継の対象となる相続人の意思を無視して強制的に権利を取得させるべきではないからです。
東京高裁の平成21年12月18日の判決において、受遺者が当遺言の利益を放棄する旨の意思表示をしただけでは、相続させる旨の遺言により権利承継される予定であった不動産が遺産分割の対象財産になるわけではない旨の見解が示されています。当見解が示された理由として、相続人を含む当事者全員の間で、相続させる旨の遺言により権利承継される予定であった不動産を遺産分割の対象財産とする旨の合意が成立しているとは認められないことが指摘されています。逆に、相続人を含む当事者全員の合意が成立していれば、その意思が尊重されて、相続させる旨の遺言の内容と異なる遺産分割協議ができると解されます。
【ⅲ.遺言執行者が定められている場合】
遺言書に遺言執行者が定められている場合、相続人は遺言執行の対象となる相続財産の処分や執行を妨げる行為をすることができない旨が法律上で規定されています(民法1013条1項)。そのため、相続人全員・受遺者だけではなく、遺言執行者の同意も得た上で遺言書の内容と異なる遺産分割協議を行ったほうが好ましいです。
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