生前に遺言書を作成しておくことで、自身が亡くなったときに特定の者へ財産を承継させることができます。遺言によって自身の財産を承継させる対象として、相続人を選定することも可能です。

 

そして、遺言で自身の財産を相続人へ承継させる場合、「相続させる旨の遺言」をするのが一般的です。

 

ⅰ.相続させる旨の遺言とその効力】

 

相続させる旨の遺言とは、「○○に甲土地、乙建物を相続させる」というような特定の相続人に財産を相続させる遺言のことをいいます。

 

相続させる旨の遺言は、その内容の趣旨が遺贈であることが明らかであるか、遺贈と解すべき特段の事情がない限り、「遺産分割方法の指定」と解されます。そのため、相続させる旨の遺言を作成した被相続人が亡くなり、その遺言書の効力が発生した場合、原則として、直ちに相続人へ財産が承継されます。相続させる旨の遺言を内容とする遺言書に基づいて相続登記を行う際、財産を承継する相続人の単独で手続きすることが可能です。

 

なお、2018年(平成30年)の相続法改正により、相続させる旨の遺言は、「特定財産承継遺言」として民法で規定されています。相続させる旨の遺言により、相続人へ権利承継があった場合、その相続人の法定相続分を超える部分については、権利の対抗要件を備えなければ、第三者(他人)に自分が権利者であることを主張できなくなりました(民法899条の2第1項)。

→ 相続の効力などに関する見直し【2018年(平成30年)相続法改正】についてはこちら
 

そのようなことから、今後、相続させる旨の遺言により、不動産の権利を相続した相続人は、速やかに登記手続きをすることが求められます。

 

ⅱ.相続させる旨の遺言と遺贈の比較】

 

遺言書の記載内容に基づいて遺言者の財産を承継させる手続き方法には、「相続させる旨の遺言」の他、「遺贈」があります。遺贈とは、遺言者が包括または特定の名義で、遺言者の財産の全部または一部を処分する(他の人に承継させる)ことです(民法964条)。遺贈には、財産全体に対する割合を指定してする「包括遺贈」と特定の財産を指定してする「特定遺贈」の2つあります。

 

「相続させる旨の遺言」と「遺贈」には、法的な効果や手続き面でいくつかの違いがあるので、その点を比較しながら解説していきます。

 

【遺言で財産を承継させられる人の範囲が異なる】

 

相続させる旨の遺言で財産を承継させられる人は、遺言者の相続人に限られます。一方、遺贈では、相続人だけではなく、相続人以外の人や法人へ遺言者の財産を承継させることも可能です。

 

【登記手続きの登録免許税は遺贈のほうが高くなることもある】

 

相続させる旨の遺言で遺言者の不動産の権利を相続人へ承継させる場合、「相続」を原因とする所有権移転登記(相続登記)を行いますが、その際に納付する登録免許税の税率は、原則として「1000分の4」になります。

 

これに対して、遺贈で遺言者の不動産を他の人(法人)へ承継させる場合、一定の例外(相続人全員に遺言者の相続財産全部を包括遺贈する場合など)を除き、「遺贈」を原因とする所有権移転登記を行います。「遺贈」を原因とする所有権移転登記の登録免許税の税率は、不動産の承継者が相続人のときは「1000分の4」、相続人以外の人や法人のときは「1000分の20」となるのが原則です。

→ 遺言書による相続・遺贈の登記についてはこちら

 

そのようなことから、遺贈は、相続させる旨の遺言より、登記手続きの登録免許税が高くなることもあります。

 

【承継させる土地が農地の場合に農地法の許可の要否が異なる】

 

相続させる旨の遺言で相続人へ農地を承継させるときは、農地法の許可を受ける必要はありません。そのため、相続させる旨の遺言の内容に基づいて農地の相続登記を行う場合、農地法の許可書の提供は不要です。

 

これに対して、遺言で農地を相続人以外の者へ特定遺贈する場合、農地法の許可を受けなければなりません。農地を相続人以外の者へ特定遺贈する旨の所有権移転登記の手続きを行う際にも、農地法の許可書の提供が必要です。

→ 農地の相続登記・遺贈による所有権移転登記についてはこちら

 

【承継される土地が借地の場合に地主の承諾の要否が異なる】

 

借地権を譲渡するには、地主(賃貸人)の承諾を得なければならない(民法612条1項)のが原則ですが、相続させる旨の遺言で借地権を相続人へ承継させる場合、地主の承諾は不要です。一方、遺贈で借地権を承継させるときは、原則として地主の承諾が必要になり、相続させる旨の遺言の場合とその結論が異なります。

→ 建物と借地権を相続した場合についてはこちら

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