相続人間で遺産分割協議を一度成立させた後、何かしらの事情でやり直しをしたいという場合が出てきます。このようなケースにおいて、一度成立した遺産分割協議を相続人間で解除することができるのでしょうか。

各相続人間による遺産分割協議の解除の可否は、解除の種類によって異なります。

 

【ⅰ.法定解除をすることはできない】

 

売買等の契約で当事者の一方に債務不履行(契約で定められた約束事を果たさないこと)があった場合、他方の当事者は債務不履行を理由にその契約を解除できます。そこで、遺産分割協議において、相続人間で定められた債務が履行されなかった場合、債務不履行を理由に解除できるのか否かが問題となります。

たとえば、被相続人Aの相続人がBとCの2名であり、以下のような内容の代償分割が成立したとします。

→ 代償分割についてはこちら

  • 被相続人Aのすべての財産(遺産総額2000万円)をBが相続する。
  • Bは、被相続人Aのすべての財産を相続する代償として、Cに1000万円支払う。

上記内容の遺産分割協議成立後、BがCに対して代償金1000万円を支払わない場合、CはBの債務不履行を理由に遺産分割協議を解除できるのでしょうか。

 

この点につき、最高裁の判例において、「遺産分割協議が成立した場合に、相続人の1人が他の相続人に対して遺産分割協議によって負担した債務を履行しない時であっても、他の相続人は民法541条によって遺産分割協議を解除できない」旨の見解が示されています(最判平成元年2月9日民集43・2・1、判事1308・118)。

もし、債務不履行を理由に遺産分割協議を解除できるとすると、被相続人の相続開始時に法的効果が遡及する遺産の再分割を余儀なくされる結果、法的安定性が害されてしまいます。

そのようなことから、遺産分割自体は協議成立によって終了し、その後は、遺産分割協議内で定めた相続人間の債権債務関係が残るだけだと考え、債務不履行を理由として遺産分割協議を解除できない旨の判断がなされたのです。

したがって、上記事例において、CはBの債務不履行を理由に遺産分割協議を解除することができません。

 

【ⅱ.相続人全員による合意解除であれば可能】

 

債務不履行による遺産分割協議の解除はできないのに対して、相続人全員の合意があれば、一度成立した遺産分割協議を解除した後、新たな内容の遺産分割協議を成立させることが可能です(最判平成2年9月27日民集44・6・995、判時1380・89)。

 

ただ、一度成立した遺産分割協議を合意解除して再度相続人全員で分割協議をする場合、再分割によって相続人間で遺産の再分配が行われると、税務上では贈与または交換等があったものとみなされます。

また、東京高裁でなされた決定の中でも、「遺産分割の再協議によって、従前の遺産分割の状態から新たに移転され取得した財産は、遺産分割によって取得したものではなく、贈与によって取得したものと言うべきである」旨の判断がなされています(東京高裁決定平成12年1月26日税資246・205)。

そのようなことから、一度成立した遺産分割協議を合意解除した後、相続人全員で遺産分割の再協議して遺産の再分配がなされると、贈与税や譲渡所得税の課税対象となってしまうこともあるため注意が必要です。

 

【ⅲ.遺産分割協議の無効や取消を主張できるか】

 

遺産分割協議も契約等と同じ法律行為にあたります。法律行為とは、人が意思表示をすることで、法律上で認められる権利や義務を発生させたり、消滅させたりすることです。そのため、相続人間で遺産分割協議をする際、何かしらの法律上の不備があった場合、契約と同様に無効や取消を主張できる時があります。
 

たとえば、遺産分割協議に参加した相続人の1人が、分割内容について大きな勘違いまたは誤解をしていたとしましょう。この場合、その相続人が遺産分割協議でした意思表示は錯誤(意思表示に対応する意思を欠く錯誤、表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤)に基づくものであったと判断されるケースもあります。もし、意思表示が錯誤に基づくもので、それが法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものである場合、その相続人は遺産分割協議の取消を主張できる時もあります(民法95条)。
 

また、遺産分割協議をする際、相続人の1人が他の相続人にだまされたり、脅されたりして意思表示をしたとします。この場合、詐欺や強迫による意思表示にあたり、遺産分割協議の取消を主張できる可能性もあります(民法96条)。
 

その他、遺産分割協議に一部の相続人が参加していなかった場合、相続人はその協議の無効を主張できます。なぜなら、相続人全員で協議をしなければ遺産分割協議を有効に成立させることができないからです。

お問合せ・ご相談はこちら

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
04-2958-7666

担当:佐伯(さえき)

受付時間:9:00~18:30
定休日:土日祝祭日

遺産相続相談、遺言・相続手続き、遺言書作成のご相談、相続、売買、贈与、抹消などの不動産登記手続き、会社設立、役員変更などの会社の登記手続きは、実績のある埼玉・狭山の佐伯司法書士事務所にお任せください。
親切・丁寧な対応をモットーとしております。お気軽にご相談ください。

対応エリア
狭山市、日高市、入間市、鶴ヶ島市、所沢市、川越市、飯能市、坂戸市、その他埼玉県、東京都など関東地方全域

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

04-2958-7666
04-2941-6504

<受付時間>
9:00~18:30
※土日祝祭日は除く

  • 一般の相続関連業務

  • 家庭裁判所で行う相続関連業務

  • 不動産登記関連業務

  • 会社・法人登記関連業務

  • 業務に関するQ&A等

  • 改正情報

  • お役立ち情報

  • 相続に関する知識

  • 遺言に関する知識

  • お客さまの声

  • 事務所紹介

ごあいさつ

saeki.jpg

代表の佐伯です。親切・丁寧な対応をモットーとしておりますのでお気軽にご相談ください。

佐伯司法書士事務所

住所

〒350-1308
埼玉県狭山市中央三丁目
6番G-206号

営業時間

9:00~18:30

定休日

土日祝祭日

主な業務地域

狭山市、日高市、入間市、鶴ヶ島市、所沢市、川越市、飯能市、坂戸市、その他埼玉県、東京都など関東地方全域