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共有名義の解消方法はいくつかありますが、共有者間の持分放棄もそのなかの一つです。共有者間の持分放棄は、いろいろな面に注意しながら手続きを行わなければなりません。
そこで、共有者間の持分放棄とその登記手続きの方法について、法律上と税務上の問題とあわせて見ていくことにします。
【ⅰ.共有者間の持分放棄とは】
共有者間の持分放棄とは、共有者の一人が自分の持分権を放棄する旨の意思表示をすることです。持分放棄は、相手のない単独行為にあたります。そのため、持分放棄者の意思表示だけでその効果が発生するのです。
民法では、「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」旨を規定しています(民255条)。そのため、共有者の一人が持分を放棄すると、その権利は他の共有者が取得することになるのです。たとえば、AとBの二人が各2分の1の割合で持分を共有しているとします。この場合、Bが持分を放棄すると、Bの持分2分の1の権利をAが取得することになって、結果的にAの単独所有となります。
【※共有者が三人の場合の持分放棄】
共有者が三人いる場合で、そのうちの一人が持分放棄をすると、他の二人の共有者は、それぞれの持分割合に応じて放棄者の持分を取得することになります。持分放棄の規定である民法255条の「他の共有者」とは、持分放棄をした人以外の共有者のことを指します。したがって、他の二人の共有者のうちの一人のみに放棄した持分を帰属させることはできません(登記研究470・97)。
共有者が三人いる場合で、持分放棄によって最終的に共有者のうちの一人の単独所有とするには、他の二人の共有者が各一回ずつ(計二回)持分放棄の意思表示をする必要があります。たとえば、A・B・Cの三人が各3分の1の割合で持分を共有しているとします。この場合で最終的にAの単独所有とするには、以下の手順で持分放棄をする必要があります。
持分放棄者 | 持分放棄の結果 |
B(最初に持分放棄) | Bの放棄した持分3分の1は、他の共有者AとCの持分割合(1対1)に応じて、各6分の1の割合でAとCに帰属します。その結果、AとCの二人が各6分の3(3分の1+6分の1)の割合で持分を共有することになります。 |
C(Bの後に持分放棄) | Cの放棄した持分6分の3は、他の共有者であるAに帰属し、Aの単独所有となります。 |
※上記のケースは、最初にBが持分放棄をして、その後にCが持分放棄をする手順となっていますが、最初にCが持分放棄をして、その後にBが持分放棄をする手順で行うことも可能です。
【ⅱ.共有者間の持分放棄の登記手続き方法】
共有者間の持分放棄をした場合、その後の権利関係を登記上に反映させるため、名義変更の手続きをしなければなりません。
持分放棄の登記手続きは、持分を放棄する共有者とその持分権を取得する他の共有者が共同でするのが原則です。具体的には、「持分放棄」と登記原因として、放棄された持分権を取得する他の共有者が登記権利者、持分放棄をする共有者が登記義務者となって行います。
また、共有者の一人が持分放棄をして複数の共有者にその権利が帰属する場合、権利を取得した共有者の一人分だけの登記手続きをすることも可能です。たとえば、共有者がA、B、Cの三名で、Aが持分放棄をしたとしましょう。この場合、BとCにそれぞれAの放棄した持分が帰属します。その際、持分放棄による登記手続きをBの権利取得分だけ行うことができるのです。
一方、持分放棄によって登記名義を移転できるのは共有名義人に限られます。そのため、「持分放棄」を原因として、共有名義人以外の人へ権利を移転する登記手続きはできません。
【ⅲ.共有者間の持分放棄の登記と名変登記】
所有権の権利を移転する際、登記義務者(所有権の権利を失う人)の現在の住所氏名と登記上の住所氏名が違う場合、所有権の移転登記をする前に名変登記(住所や氏名の変更登記)をしなければならないのが原則です。
そのため、共有者の持分放棄の登記手続きをするとき、持分を放棄する共有者の登記上の住所や氏名が現在のものと相違する場合、名変登記をしてから持分放棄による登記手続きを行います。
また、持分放棄により権利を取得する他の共有者の登記上の住所や氏名が、現在のものと相違するときも名変登記が必要になります。
【ⅳ.利益相反の問題や農地法の許可の有無】
親と未成年の子が共有で登記名義人となっている場合、未成年の子が持分放棄をすると、その持分権は親へ移転します。それにより、親が利益を得るのと同時に未成年の子が不利益を被る状況となるため、利益相反の問題が生じるのではとも考えられます。
上記のケースにおいて、子の持分放棄をする場合、特別代理人の選任は要しない旨の登記先例があります(昭和35・12・23民甲3239)。また、同先例では、特別代理人を選任した場合で、その特別代理人による未成年者の持分放棄も有効である旨の見解も示しています。
また、農地の共有者の一人が持分放棄をする際、農地法の許可が必要なのか否かも問題になります。この場合、農地法の許可を得なくても共有者は持分放棄をすることが可能です。持分放棄は人の意思表示によって権利が移転するものではなく、法律の規定によって権利が移転するものなので、農地法の許可の対象外となっているからです。
【ⅴ.亡くなった共有者の一人に相続人がいない場合の権利帰属】
不動産の共有者の一人が亡くなったとき、その人に相続人がいない場合も他の共有者に権利が移転する旨が民法で規定されています(民255条)。
しかし、この場合、共有者が意思表示によって持分放棄をしたときと異なり、当然に他の共有者へ亡くなった共有者の持分権が帰属するわけではありません。
平成元年11月24日の最高裁判例により、特別縁故者への財産分与(民958条の3)の対象とならなかったときに、はじめて他の共有者へ持分権が移転するとされています。
【ⅵ.共有者間の持分放棄と贈与税】
共有者の一人が持分放棄をした場合、結果的に他の共有者が放棄された持分を無償で取得することになります。そのため、持分放棄により持分権を取得した他の共有者は、贈与を受けたと扱われて贈与税の課税対象になるのではとも考えられます。
相続税法基本通達では、このような場合、贈与により取得したものとして取り扱うとしています。したがって、共有者の一人が持分放棄をして、他の共有者がその持分権を取得した場合、贈与税の課税対象になるので注意が必要です。
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