相続に関する不動産登記の手続きは、相続登記の他、「相続人による登記」があります。相続人による登記も相続登記と同様、亡くなった不動産の所有者の相続人が登記手続きに関与する点では共通していますが、登記手続きの内容自体は異なり、全く別の種類の登記手続きになります。

 

このサイトページでは、相続人による登記と相続登記の手続きの相違点、相続人による登記の具体的な手続き内容について解説していきます。

 

【ⅰ.相続人による登記の概要および相続登記の手続きとの違い】
 

相続人による登記とは、被相続人(亡くなった人)が生前に不動産の権利移転の生じる契約行為だけをしていて登記手続きをしていない状態である場合、その契約行為を原因とする登記手続きを亡くなった被相続人の相続人が契約の相手方と共同で行うというものです(不動産登記法62条)。

 

たとえば、AとBの間で不動産の贈与契約を締結して、当不動産の所有権がAからBへ移転したとします。この場合、本来であれば、贈与契約の当事者であるAとBが共同して贈与による所有権移転登記を行います。

→ 贈与による所有権移転登記についてはこちら

しかし、上記のケースにおいて、贈与契約を締結してから登記を行う前に贈与者のAが亡くなると、AとBが共同して登記の手続きができません。このような場合に、相続人による登記の方法で、BとAの相続人が共同で登記手続きを行って受贈者のB名義にします。

 

相続人による登記は、被相続人が生前にやり残した登記手続きを相続人が被相続人に代わって行うものになります。相続によって不動産の権利を取得した相続人自身の名義にするために行う相続登記とは、その手続き内容が異なります。

 

【相続人による登記と相続登記の比較】

  相続人による登記 相続登記
登記の手続き内容 被相続人の生前の処分行為を原因とする登記手続きを相続人が代わりに行うもの 相続によって不動産の権利を取得した相続人の名義にするため行う登記手続き
登記手続きによって名義人のなる者 被相続人(生前の契約によって被相続人が権利を取得した場合) 相続によって不動産の権利を取得した相続人
登記申請形態 共同申請 単独申請


 

【ⅱ.相続人による登記の具体的な手続き内容】

 

相続人による登記の方法で手続きをするケースとして、生前に権利移転の生じる契約行為をして被相続人が不動産の権利を取得した時と権利を失った時の二通りあります。たとえば、権利移転の生じる契約の種類が贈与であるとすると、被相続人が贈与者(財産をあげる側)の立場である場合と受贈者(財産をもらう側)の立場である場合です。

 

そこで、被相続人が生前に贈与契約を行った後に亡くなった場合において、被相続人が贈与者の立場である場合と受贈者の立場である場合の相続人による登記の具体的な手続き内容について、それぞれ解説します。

 

【被相続人が贈与者の立場である場合】

 

(事例)

被相続人Aが生前にBと不動産の贈与契約を締結し、契約対象不動産の権利がAからBに移転後、登記手続きを行う前にAが亡くなりました。(被相続人Aの法定相続人はCとDの2名)

 

上記事例のように被相続人が贈与者の立場であるケースでは、受贈者Bと贈与者Aの相続人C・Dが相続人による登記の方法で贈与を原因とする所有権移転登記の手続きを行います。権利を失う側の登記義務は、被相続人から相続人全員に不可分的に承継されるため、相続人全員が登記手続きに関与する必要があります。遺産分割協議等で1人の代表相続人を定めた上、その者と受贈者だけで登記手続きをすることができません。(Aの相続人C・Dのどちらか1人と受贈者Bだけで登記手続きを行うことは不可。)

 

また、当ケースにおける登記手続きでは、贈与の所有権移転登記の必要書類の他、相続登記の手続きを行う時と同様に被相続人の相続人全員を証明できる相続証明書(戸籍)の提出が必要となります。

→ 贈与の所有権移転登記の必要書類についてはこちら

→ 相続登記の手続きで必要となる戸籍についてはこちら

 

ただ、相続証明書については、法定相続情報証明制度の利用により、法務局から交付を受けた法定相続情報一覧図の写しを提出して手続きすることも可能です。

→ 法定相続情報証明制度についてはこちら

 

【被相続人が受贈者の立場である場合】

 

(事例)

被相続人Aが生前にBと贈与契約を締結し、当契約によってB所有の不動産の権利がAに移転後、登記手続きを行う前にAが亡くなりました。(被相続人Aの法定相続人はCとDの2名)

 

上記事例では被相続人が受贈者の立場ですが、この場合は、贈与者Bと受贈者の相続人のC・Dのどちらか1人が共同申請人となって、相続人による登記の方法で贈与を原因とする所有権移転登記の手続きができます。被相続人が贈与者の立場であるケースと異なり、相続人の1人の関与で手続きが可能なのは、亡くなった受贈者の名義にするための所有権移転登記が「共有物の保存行為」に該当するからです。

→ 保存行為による法定相続登記についてはこちら

 

ただ、被相続人が受贈者の立場である場合に、相続人による登記の方法で贈与を原因とする所有権移転登記の手続きを行う時は、被相続人名義にしなければならない点に注意が必要です。上記事例では、登記手続きによって、Bから亡A名義に変更しなければなりません。贈与契約による不動産の権利取得者ではない相続人C・Dへ直接名義変更することはできません。相続人C・Dの名義にするには、相続人による登記の方法で亡Aの名義にした後、相続登記の手続きを行う必要があります。

 

また、当ケースにおける登記手続きでも、贈与による所有権移転登記の必要書類の他、相続証明書(戸籍)の提出が求められます。しかし、相続証明書として提出する戸籍の内容は、被相続人が贈与者の立場である場合と異なります。被相続人が受贈者の立場の場合は、被相続人と登記申請に関与する相続人の相続関係を証明できる戸籍のみの提出で足ります。

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