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贈与とは、ある人が他の人へ無償で財産を与えるという契約のことで、原則として贈与契約が成立した日にその効力が生じます。しかし、契約当事者間で贈与者が死亡した時にその効力が成立する内容の贈与契約を締結することも可能です。このような贈与契約のことを死因贈与と言います。
【ⅰ.死因贈与の特徴】
死因贈与は、贈与者が死亡した時に贈与の効力が生じるので、その法的効果は遺贈と似ている部分があります。そのため、死因贈与は、その性質に反しない限り、遺贈の規定が準用されています(民法554条)。
たとえば、遺言で財産を承継させようとする場合、遺言執行者を定めることができますが、死因贈与の契約を締結する際にも、執行者を定めることが可能です。
相続発生後に遺留分を侵害された相続人は、受遺者または他の相続人に対して遺留分侵害額請求をすることができますが、死因贈与と遺贈はどちらもその対象になります。
また、財産をあげる人(遺贈者・贈与者)が死亡するよりも前に財産をもらう人(受贈者)が死亡している場合は、死因贈与と遺贈のどちらも原則としてその効力が失われます(民法554条、994条)。
→ 遺言者が死亡する前に受贈者が死亡している場合の遺言書の効力についてはこちら
その他、法の規定の準用ではありませんが、財産をもらう人(受贈者)が相続税の対象になる点も、死因贈与と遺贈は共通しています。
これに対して、死因贈与は当事者間の合意によって行うものであるのに対し、遺贈は財産を承継させる人の一方的な意思表示によって行うものである等、その性質が相違する点も少なくありません。
その他、「法律行為ができる年齢」や「方式」の点において、死因贈与と遺贈には、以下のような相違点があります。
【法律行為ができる年齢】
法律(民法)上では、15歳になると遺言をすることができると定められています(民法961条)。そのため、遺言能力があれば、成年(18歳)に達しなくても遺言をすることが可能です。
しかし、死因贈与は遺言能力に関する規定は準用されていないため、成年(18歳)に達しなければ、自分1人で契約を締結することができません(民法4条、5条1項本文)。
【方式】
遺言は、法律(民法)上の規定にしたがって遺言書を作成しなければ、無効となってしまいます(民法960条)。
一方、死因贈与の場合、遺言の方式に関する規定は準用されていないため、自由な方式で死因贈与契約書を作成した上で、契約を成立させることが可能です。また、契約書を作成しないで、当事者間の口約束による合意だけでも、死因贈与契約は成立します。
【※死因贈与契約の撤回について】
一度有効に成立した死因贈与契約の撤回(キャンセル)については、方式に関する部分を除いて、遺言の撤回を規定する1022条が準用されます。そのようなことから、贈与者は、原則としていつでも無方式による死因贈与契約の撤回をすることが可能です。
ただ、例外として、死因贈与契約の内容が負担付死因贈与(例:私が死亡するまで介護してくれたら、自宅を贈与する。)である場合、贈与者の生前に受贈者側が契約で定める負担の全部または大半を履行をしている時は、やむを得ないと認められる特段の事情があるケースを除いて、贈与者は死因贈与契約の撤回をすることができなくなります。
一方、受贈者については、契約書等の書面によって死因贈与契約契約が締結されている限り、受贈者が贈与者に対して、一方的に死因贈与契約の撤回をすることはできません。
【ⅱ.死因贈与による不動産の登記手続き方法】
不動産を死因贈与契約の対象とした場合、贈与者が死亡して契約の効力が生じると、贈与者から受贈者へ不動産の権利が移転します。この場合、死因贈与契約の対象不動産の名義を贈与者から受贈者へ変更する登記手続きをしなければなりません。
死因贈与による不動産の登記手続きは、契約の効力が発生した時に贈与者から受贈者へ所有権移転登記をする方法により行います。また、契約の際に受贈者名義の仮登記をした後、死因贈与の効力が発生した時に本登記をする形で登記手続きを行うことも可能です。
【効力発生後に所有権移転登記する方法】
通常の贈与の所有権移転登記は、権利を取得する側(登記権利者)の受贈者と権利を失う側(登記義務者)の贈与者が共同で申請手続きをします。
しかし、死因贈与の場合、契約の効力発生時点において、贈与者はすでに死亡しているため、登記手続きに関与できません。そのため、死因贈与による所有権移転登記は、原則として受贈者と贈与者の相続人全員の共同で申請手続きを行います。
一方、死因贈与契約書に死因贈与執行者の指定がある場合、執行者が贈与者の代わりに登記の申請手続きに関与します。
執行者を指定して死因贈与による所有権移転登記の申請手続きを行う場合、契約書を公正証書にしておくことが大切です。執行者を指定して死因贈与による所有権移転登記を申請する際、基本的に以下の書類を提出することになります。
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そして、執行者の指定されている契約書が私署証書(私人が作成して署名捺印した文書)である場合、死因贈与による所有権移転登記の申請をする際、上記の書類の他、以下のいずれかの書類も併せて提出しなければなりません(登記研究566・131)。
※印鑑証明書については発行期限の定めなし。 |
私署証書である契約書を提出して死因贈与による所有権移転登記の申請手続きを行う際、贈与者が契約書に捺印した実印についての印鑑証明書を用意できない場合、贈与者の相続人全員から承諾書へ実印で捺印してもらった上で、贈与者の相続人全員の印鑑証明書を用意してもらわなければなりません。
もし、贈与者の相続人の中に非協力的な人がいる場合、承諾書への捺印および印鑑証明書の準備作業が滞ってしまい、登記手続きを進めるのに支障が出てしまう可能性もあります。
そのようなことから、死因贈与による所有権移転登記の申請手続きをスムーズに進めるために、契約書は公正証書にしておいたほうが好ましいと言えます。
【契約の時に仮登記をした後、効力発生した時に本登記をする方法】
死因贈与の契約を締結後、その効力が発生する前に、贈与者の死亡を始期とする所有権移転仮登記の申請手続きをすることが可能です。上記仮登記は、原則として死因贈与契約の贈与者と受贈者の共同で登記の申請手続きを行います。共同申請の方法で上記仮登記の申請手続きをする際、以下の書類を提出する必要があります。
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上記原則の例外として、贈与者の承諾があれば、受贈者が単独で仮登記の申請手続きをすることが可能です。受贈者が単独で仮登記の申請手続きをする際に提出する書類は、以下のとおりです。
※死因贈与契約書を公正証書で作成し、その契約書の中に「贈与者は受贈者に対し、死因贈与に基づく所有権移転仮登記をする旨を承諾した」旨の文言をいれておけば、死因贈与契約公正証書を贈与者の承諾書とすることができ、贈与者の印鑑証明書の提出は不要となります。 |
贈与者が死亡して、死因贈与の効力が発生した後は、受贈者と贈与者の相続人全員または執行者が共同で仮登記の本登記の申請手続きを行います。当本登記の申請手続きで提出する書類は、契約の効力発生後に死因贈与による所有権移転登記の申請手続きをする場合と基本的に同じです。
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