相続が発生した際、被相続人が遺言書を残していない場合、相続人全員で遺産分割協議をして相続する財産を決めていくケースが多いです。ただ、相続人の中に未成年者がいる場合、通常と同じような形で遺産分割協議ができません。なぜなら、未成年者は自身で遺産分割協議に参加できないからです。
 

遺産分割協議は法律行為にあたります。人が法律行為をするには、意思能力や行為能力がなければならないのが原則です。18歳未満の未成年者は、法律上、行為能力はないとされています。そのため、法律行為である遺産分割協議に自ら参加できないのです。

 

そこで、相続人の中に未成年者がいるとき、どのような形で遺産分割協議を行えばよいのかについてみていきます。

 

【ⅰ.特別代理人を選任して遺産分割協議をする】

 

行為能力のない未成年者が法律行為をしようとする場合、法定代理人である未成年者の親が代わりに手続きするのが通常です。そのようなことから、未成年者の代わりにその親が法定代理人として遺産分割協議に参加して相続手続きを進めればよいのではとも考えられます。
 

しかし、親などの法定代理人が未成年者を代理して遺産分割協議に参加すると、好ましくない問題が生じます。父親が亡くなり、母親と未成年の子が相続人である事例で考えてみましょう。この場合、母親が未成年の子を代理して遺産分割協議をすることになるので、事実上、母親は自分1人で協議内容を決められてしまいます。それにより、未成年の子に不利な内容の遺産分割協議がされてしまい、その利益を害される可能性(利益相反の問題)が出てきてしまうのです。
 

遺産分割協議に参加する相続人に未成年の子とその親がいるとき、上記のような問題が生じないように、親の未成年の子に対する代理権は制限されます。そのため、原則として親は、未成年の子の法定代理人として遺産分割協議に参加できません。このような場合、家庭裁判所へ申立てをして、特別代理人を選任してもらいます。

→ 特別代理人選任申立の手続きについてはこちら

 

そして、選任された特別代理人が、未成年の子を代理して遺産分割協議をするのです。遺産分割協議書への署名捺印も、特別代理人が未成年の子に代わって行います。

 

一方、相続人が未成年の子とその親である場合でも、利益相反の問題が生じないときは、家庭裁判所で特別代理人を選任してもらう必要はありません。たとえば、親が相続放棄をして、相続人が未成年の子1人になるケースです。この場合は、親が未成年の子の法定代理人として相続手続きをすることができます。

 

【ⅱ.相続人に未成年の子が複数人いる場合】

 

母親と2人の未成年の子が相続人である場合、上記ⅰの事例と同じような形で手続きをすることができるのでしょうか。このケースにおいても、遺産分割協議をする際、母親と2人の未成年の子は利益相反の関係になります。そのため、遺産分割協議をするには、家庭裁判所で特別代理人を選任してもらう必要があります。ただ、原則として2人の未成年の子にそれぞれ1人ずつ特別代理人を選任しなければならない点が上記ⅰの事例と違う点です。

 

一方、母親が相続放棄をして2人の未成年の子だけが相続人になった場合、1人の特別代理人を選任すれば遺産分割協議が可能です。母親が相続放棄をすれば利益相反の問題がなくなります。それにより、未成年の子の法定代理人として遺産分割協議に参加できるようになるからです。母親は、2人の未成年の子のうちの1人の代理人になれます。そのため、特別代理人を1人だけ選任すれば、遺産分割協議をすることができるのです。

 

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