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配偶者の居住権を保護するための制度(配偶者居住権)は、2018年相続法改正によって創設されています。この制度によって、相続発生後も残された配偶者の被相続人所有の建物に居住する権利が保護されることとなりました。
もし、残された被相続人の配偶者が、配偶者居住権を取得した場合、速やかに登記をしたほうがいいでしょう。なぜなら、当事者以外の人に配偶者居住権の権利を主張するには登記が必要だからです。
たとえば、残された被相続人の配偶者が配偶者居住権を取得し、他の相続人が被相続人所有の対象建物の所有権を取得したとします。その後、建物の所有権を取得した相続人が、他の人に権利を譲渡したとしましょう。このような場合、残された被相続人の配偶者は、建物の所有権を取得した他の相続人に対しては、登記をしなくても配偶者居住権の権利を主張できます。残された被相続人の配偶者と建物の所有権を取得した他の相続人は、配偶者居住権の権利について当事者関係だからです。
しかし、建物の所有権の権利譲渡を受けた者は、当事者以外の人に該当します。そのため、登記をしなければこの者に対して、配偶者居住権の権利を主張できません。もし、登記をしていないと、建物の所有権の権利譲渡を受けた者から、退去させられてしまうリスクもあります。
そのようなことから、配偶者居住権を取得した後、当事者以外の者にも権利主張ができるようするため、登記をしておくことが大切です。
登記手続きの対象となるのは、原則配偶者の終身を目的とする配偶者居住権のみです。配偶者短期居住権は、登記手続きの対象に含まれません。
また、配偶者居住権の登記手続きには、以下の種類があります。
【ⅰ.配偶者居住権の設定登記】
配偶者は、相続発生後、遺産分割、遺贈、死因贈与によって配偶者居住権を取得することになります。このようなとき、「遺産分割」、「遺贈」、「死因贈与」を登記原因として、配偶者居住権の設定登記を行います。
配偶者居住権の設定登記は、配偶者と建物所有者の共同で申請手続きをするのが原則です。しかし、遺産分割の審判で配偶者が配偶者居住権を取得することが定められ、建物所有者に対してその旨の設定登記手続きをすることが命じられている場合、配偶者側が単独で登記手続きできます。
また、配偶者居住権の設定登記をする際、前提として「相続」や「遺贈」を原因とする所有権移転登記がされていなければなりません。
【ⅱ.配偶者居住権の登記の抹消】
配偶者居住権を設定する際、権利の存続期間を定めることが可能です。もし、存続期間が定められている場合、その期間が満了すると、配偶者居住権は消滅します。
また、配偶者居住権は、配偶者の一身専属権にあたります。そのため、権利者である配偶者が亡くなった場合、その時点で配偶者居住権が消滅するのです。
その他、配偶者と建物所有者の合意があったり、用法順守義務違反や無断増改築などで権利の消滅請求がなされたりした場合も、配偶者居住権が消滅します。
上記の原因で配偶者居住権が消滅した場合、登記を抹消する手続きをしなければなりません。
配偶者居住権の抹消登記は、原則配偶者と建物所有者の共同で申請手続きを行います。ただ、配偶者が亡くなって配偶者居住権が消滅したときは、不動産登記法69条の規定に基づいて、建物所有者が単独で抹消登記の手続きをすることが可能です。(令和2年3月30日法務省民二324号)
配偶者居住権の登記手続きには、原則として以下の書類が必要になります。
【配偶者居住権の設定登記】
【配偶者居住権の登記の抹消】
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