家庭裁判所で行う相続関連業務

家庭裁判所で行う相続業務に関するQ&Aを記載させていただいております。

 

 

 

【◆ 業務に関するQ&A】

 

 

【◆ 相続放棄関係】

 

【Q1】

被相続人に多額の借金があるので相続したくありません。相続放棄をすれば、相続しなくても済むと聞きました。自分だけ相続放棄をすれば、問題を解決できますか?

 

【A1】

相続放棄をされた方は、最初から被相続人の相続人ではなかったとみなされます。そのため、相続放棄をされた方は、被相続人の相続財産に借金があっても、承継しないで済みます。

 

しかし、相続放棄をされると、相続順位に沿って被相続人の相続権が移っていきます。したがって、被相続人の借金を誰も相続されたくないのであれば、最終的に全順位の相続人の方が相続放棄をしていただかなければなりません。

 

→ 相続放棄が必要な相続人の範囲とその順位の詳細についてはこちら

 

【Q2】

父が多額の借金を残して亡くなったので、相続放棄をしようと考えています。しかし、私が相続放棄をすると、私の子どもが父の借金を相続することになるのではと不安です。このような状況で私が相続放棄した場合、私の子どもも相続放棄をしなければならないのでしょうか?


【A2】

あなたがお父様の相続放棄をされても、あなたのお子様はお父様の相続人(代襲相続人)にならないため、その必要もありません。

 

→ 相続放棄と代襲相続発生の関係性の詳細についてはこちら

 

【Q3】

商売をしている両親が亡くなった後、その後を継ぐ私の兄が財産を相続する形で話がまとまっています。今のうちに私は両親の相続権を放棄しようと考えています。このような形で相続放棄をすることができるのでしょうか?

 

【A3】

相続放棄ができるのは、相続発生後に限られます。生前の相続放棄は法律上認められていません。もし、被相続人の生前に相続放棄をする旨の約束をしても無効です。

 

ただ、生前の相続放棄に代わる手続き方法がいくつかあります。それらの手続きによって、相続させたくない相続人への財産承継を回避できたり、特定の相続人へ財産を承継させたりできる場合があります。

 

→ 生前の相続放棄の可否の詳細についてはこちら

 

【Q4】

父が亡くなり、私は父の相続権を放棄しようと考えています。父は私を受取人とする生命保険に加入していました。このような場合、私が相続放棄をすると、保険金を受け取ることもできなくなってしまうのでしょうか?

 

【A4】

保険金は相続財産ではなく、受取人の固有財産とされています。そのため、相続放棄をされても、お父様が加入されていた生命保険金を受け取ることができます。

 

ただ、税務上において、生命保険金は「みなし相続財産」と扱われるため、相続税の課税対象になるのが原則です。

 

→ 相続放棄が保険金に関する権利へ与える影響の詳細についてはこちら

 

【Q5】

先日亡くなった父に多額の借金があるため、相続放棄をしようと考えています。父の葬儀の際、その費用を父の遺産から支払いにあてました。相続財産に手をつけると相続放棄ができなくなると聞いたのでその点が不安です。このような場合、相続放棄をすることができるのでしょうか?

 

【A5】

相続財産から葬儀費用の支払いをしても、原則として相続放棄をすることが可能です。

 

ただ、通常葬儀で必要となる費用を明らかに超える金額を相続財産から支出した場合、相続放棄が認められなくなる可能性もあります。

 

→ 相続財産で葬儀費用の支払いをしても相続放棄ができるのかの詳細についてはこちら

 

【Q6】

一度手続きした相続放棄を取りやめたいと考えています。このようなことはできるのでしょうか?

 

【A6】

相続放棄の申述(申立)が家庭裁判所に受理された後は、撤回できません。一方、相続放棄の申述(申立)が家庭裁判所に受理される前であれば、取り下げることは可能です。

 

また、一定の事由がある場合、家庭裁判所で受理された相続放棄の取り消しを認めてもらえる可能性があります。

 

→ 相続放棄受理後の撤回や取り消しの詳細についてはこちら

 

【Q7】

先日亡くなった父の相続手続きを始めました。父は生前に複数の借金を負っていてその内容が明確ではありません。また保有財産の権利関係も複雑で、その内容の調査に時間がかかりそうです。

 

期限内に相続放棄の手続きしなければならないことは知っています。しかし、その期限内に父の負っていた借金や保有財産の内容を調査して明確にするのは難しそうです。

 

このような場合でも、相続財産の調査を途中でやめて、期限内に相続放棄の手続きをするしか方法はないのでしょうか?

 

【A7】

相続放棄の手続き期限内に相続財産の調査を終えるのが難しい場合、家庭裁判所へ申立することで、期間を伸長してもらえることがあります。

 

→ 相続放棄の期間伸長の詳細についてはこちら

相続放棄が必要な相続人の範囲とその順位

相続放棄をすると、はじめから被相続人の相続人ではなかったことになります。それにより、被相続人に借金があっても、相続放棄をすればその者は相続しないで済むのです。

 

しかし、相続放棄をしたからといって、被相続人の借金自体がなくなるわけではありません。ある相続人が相続放棄をして、被相続人の借金の相続を免れても、それによって、後順位の相続人が承継することになります。

 

そのため、相続放棄をする際、手続き後にどのような形で被相続人の相続権が移っていくのかについても考えなければなりません。

 

そこで、相続人が相続放棄をした後、被相続人の相続権を承継することになる後順位相続人とその範囲についてみていきましょう。また、相続放棄した旨を後順位相続人に伝えたほうがよいのか否かについても触れていきます。

 

 

 

【@.相続放棄をすると、相続順位に沿って被相続人の相続権が移っていく】

 

 

被相続人の借金を誰も承継したくない場合、最終的に全順位の相続人が相続放棄の手続きをする必要があります。なぜなら、同順位の相続人全員が被相続人の相続を放棄しても、その相続権は相続順位に沿って、後順位の相続人に移っていくからです。

 

→ 相続人の範囲と順位についてはこちら

 

そこで、相続放棄をすると、どのように被相続人の相続権が移っていくのか、具体例をあげてみていきましょう。

 

【事例】

 

Aは生前に高額な借金を残して亡くなりました。Aには配偶者Bと子Cがいます。(Cに子や孫はいないものとします。)また、Aの両親DとEは健在で、それより上の直系尊属(祖父母から上の親族)はAよりも先に亡くなっています。そして、Aには、兄弟のFとGがいて、2人とも生きています。(FとGに子はいないものとします。)

 

※  下記以降の説明においては、相続欠格や廃除について考えないものとします。

→ 相続欠格・廃除についてはこちら

 

 

 

【BとCの相続放棄のケース】

 

Aが亡くなって最初に相続人となるのは、配偶者のBと子のCです。BとCが相続放棄をする場合、Bのみが相続放棄をする場合、Cのみが相続放棄をする場合によって相続権の移り方が違います。

 

【BとCが相続放棄をした場合】

 

BとCが相続放棄をすると、Aの両親であるDとEが相続人になります。Cが相続放棄をした場合、Aの第1順位の相続人がいなかったことになります。そのため、第2順位の相続人であるDとEに相続権が移るのです。

 

上記の事例と異なり、Cの直系卑属(子や孫)がいるケースでも、その結論は変わりません。なぜなら、相続放棄は代襲相続の原因とならないからです。

 

→ 代襲相続についてはこちら

 

なお、子Cが未成年の場合、親のBが法定代理人として代わりに相続放棄の手続きをします。BとCが同時に相続放棄をすれば、利益相反の問題も生じません。

 

→ 利益相反行為(親と未成年の子のケース)についてはこちら

 

したがって、特別代理人を選任することなく、BはCの相続放棄の手続きをすることができるのです。

 

→ 特別代理人の選任についてはこちら

 

【Bが相続放棄をした場合】

 

Bのみが相続放棄をした場合、Cが単独でAを相続することになります。第1順位の相続人がまだ存在するため、第2順位の相続人であるDとEに相続権は移りません。

 

【Cが相続放棄をした場合】

 

Cのみが相続放棄をした場合、B、D、Eの3名が相続人になります。上記の事例と異なり、Cの直系卑属(子や孫)がいるケースでも結論は同じです。(理由は、BとCが相続放棄をした場合と同様です。)

 

Cが相続を放棄することで、第1順位の相続人がいなくなります。それにより、第2順位の相続人であるDとEに相続権が移るのです。また、相続放棄をしていないBが相続権を有するのは当然です。

 

このケースで、もしCが未成年である場合、Bは法定代理人として代わりに相続放棄の手続きができません。なぜなら、未成年の子だけが相続放棄をして、親が単独で相続人になることは利益相反にあたるからです。

 

したがって、Cが未成年の場合、特別代理人を選任して相続放棄の手続きをすることになります。

 

→ 特別代理人の選任についてはこちら

 

 

【DとEの相続放棄のケース】

 

上記の事例で、BとCが相続放棄をした場合、第2順位の相続人であるDとEに相続権が移ります。そこで、DまたはEの1人だけが相続放棄をした場合、DとEが相続放棄をした場合の相続権の移り方についてみていきましょう。

 

【DまたはEの1人だけが相続放棄をした場合】

 

D、Eのどちらか1人だけが相続放棄をした場合、もう1人が単独で相続人となります。たとえば、Dだけが相続放棄をしたときはEが、Eだけが相続放棄をしたときはDが単独で相続することになるのです。

 

もし、DとEの直系尊属(被相続人Aの祖父母より上の親族)が生存している場合でも、その結論は変わりません。なぜなら、親等(親族間の世数)の異なる直系尊属がいる場合、被相続人から近い親等の直系尊属が優先的に相続人となるからです。

 

【DとEが相続放棄をした場合】

 

DとEが相続放棄をすると、Aの第2順位の相続人がいなくなります。それにより、第3順位の相続人であるFとGに相続権が移ります。

 

一方、上記の事例とは異なり、DとEの直系尊属が健在であるときは、その者に相続権が移ります。したがって、この場合は、FとGに相続権は移りません。

 

 

【FとGの相続放棄のケース】

 

上記の事例で、B、C、D、Eが順番に相続放棄をして、FとGがAの相続人になったとします。その後、FとGが相続放棄をすると、Aを相続する者はいなくなります。上記の事例と異なり、FとGに子(Aの甥、姪)がいる場合でも、その結論は変わりません。(理由は、BとCが相続放棄をした場合と同様です。)

 

また、FとGのどちらか1人が相続放棄をした場合、もう1人が単独で相続人となります。(Fのみが相続放棄した場合はGが、Gのみが相続放棄をした場合はFがそれぞれ単独相続人となります。)

 

 

【Aを相続する者がいなくなった後】

 

上記の事例で、B、C、D、E、F、Gが順番に相続放棄をして、Aを相続する者がいなくなったとします。このようなケースで、Aの相続財産を管理する必要性が生じた場合、申立により相続財産管理人が選任されます。

 

その後、選任された相続財産管理人が、被相続人の相続財産を管理したり、借金の返済をしたりするなどの清算業務を行うのです。

 

また、相続放棄をした相続人にも、被相続人の相続財産の管理責任がある点に注意しなければなりません。(民940条)そのため、選任された相続財産管理人が管理できるようになるまで、相続放棄をした相続人が、相続財産を管理し続けなければならないのです。

 

 

 

【A.相続放棄した旨を後順位相続人に伝えるのが好ましい】

 

 

先順位相続人が相続放棄をしても、家庭裁判所側から後順位相続人に対してその旨は伝えられません。それによって、後順位相続人が知らない間に被相続人の借金の支払い義務を承継してしまうケースも考えられます。

 

相続放棄をした相続人は、その旨を後順位相続人に伝える義務はありません。しかし、後順位相続人に対して、相続放棄した旨を伝えたほうが好ましでしょう。

 

ただ、相続放棄をした相続人と後順位相続人が疎遠になっていることもあります。このような場合、相続放棄した旨を伝える方法がないケースも少なくありません。

 

上記のような事情があり、相続人が相続放棄した旨を後順位相続人に伝えられない場合でも特に問題ありません。なぜなら、後順位相続人が相続で借金の承継を知った後、相続放棄をすればよいからです。

 

相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内」であれば手続きできます。後順位相続人が被相続人の債権者から通知を受けて、はじめて相続人になった旨を知ったとします。このような場合、そのときから3カ月以内であれば、相続放棄が可能なのです。

 

→ 相続放棄の申述期限についてはこちら

 

したがって、後順位相続人と疎遠状態で相続放棄をした旨を伝えられない場合でも心配ありません。

相続放棄と代襲相続発生の関係性

亡くなった人の相続権を放棄する際、代襲相続との関係において、以下の2つの点で問題になることがあります。

 

  1. 子が亡くなった親の相続権を放棄した場合、孫が代襲相続人となるのか?
  2. 最初に子が父の相続放棄をした後に祖父が亡くなった場合、子は祖父の代襲相続人になれるのか?

 

相続放棄がなされた場合、相続関係の状況によって代襲相続が発生するケースと発生しないケースがあります。そこで、相続放棄と代襲相続の関係性について、いくつか事例をあげながら解説していきましょう。

 

→ 相続放棄についてはこちら

 

→ 代襲相続についてはこちら

 

 

 

【@.相続放棄は代襲相続の発生原因ではない】

 

 

相続放棄をした場合、その者は被相続人の相続に関してはじめから相続人ではなかった者とみなされます。(民939条)それにより、相続放棄をした者は、被相続人の相続発生のときより、相続人から除かれることになるのです。

 

その際、相続放棄をした相続人に子がいる場合、その者が代襲相続することになるのではとも考えられます。この点において、冒頭であげた1の問題が生じるのです。

 

冒頭であげた1の問題において、結論から述べると孫は親の代襲相続人にはなりません。なぜなら、相続放棄は代襲相続の発生原因ではないからです。

 

被相続人の相続発生前に相続人が死亡したこと、相続人が相続欠格に該当したり、廃除されたりして相続権を失ったことが、代襲相続の発生原因として法律上定められています。(民887条A)

 

→ 相続欠格についてはこちら

 

→ 相続人の廃除についてはこちら

 

そのようなことから、子が亡くなった親の相続権を放棄しても代襲相続は発生しないため、孫は代襲相続人とならないのです。

 

冒頭であげた1の問題において、仮に亡くなった親に多額の借金があった場合でも、孫は相続放棄をする必要はありません。(そもそも相続人ではないため、相続放棄ができません。)

 

また、被相続人の兄弟姉妹が相続人になるケースも上記の結論と同様です。相続放棄をした兄弟姉妹に子がいたとします。この場合、代襲相続は発生しないため、兄弟姉妹の子は代襲相続人になりません。

 

 

 

【A.被相続人の孫であれば原則として代襲相続人になれる】

 

 

冒頭であげた2の問題において、通常であれば子は祖父の代襲相続人となります。なぜなら、祖父より先に父が亡くなっているからです。

 

しかし、父が亡くなったとき、子は相続放棄をしているため、最初から父の相続人ではなかったことになります。そのようなことから、父の相続人ではないため、祖父の代襲相続人にもならないのではないかとも考えられます。

 

しかし、冒頭であげた2の問題のケースにおいて、子は祖父の代襲相続人となるというのが結論です。代襲相続の発生原因が生じた場合、被相続人の子の子(孫)であれば、原則として代襲相続人となる旨の規定があるからです。(民887条A本文)そのため、子が父の相続権を放棄しても、祖父の代襲相続権まで失うわけではありません。

 

また、相続放棄は、対象の被相続人の相続に関するものだけに対してその効力が生じます。たとえば、子が父の相続権を放棄した場合、父の相続に関してだけ最初から相続人とならなかったとみなされるのです。(民939条)。

 

したがって、父の相続権を放棄した場合、その効力が祖父の相続に関してまで及ぶことはありません。

 

これに対して、冒頭であげた2の問題の事例と異なり、祖父が最初に亡くなり、その後に父が亡くなった場合は、子が祖父の相続権を有するか否かの結論が異なります。このようなケースで、子が父の相続権を放棄すると、祖父の相続を承認する権利を失うため注意が必要です。

 

 

 

【B.もともと代襲相続人の地位にある場合は相続放棄が必要】

 

 

冒頭であげた1の問題の事例と異なり、もともと代襲相続人の地位にある者が相続権を承継したくない場合、相続放棄をしなければなりません。

 

たとえば、相続発生後、被相続人の第1順位と第2順位の相続人が相続放棄をして、相続権が第3順位の相続人に回ってきたとします。このようなケースで、第3順位の相続人となるはずの兄弟姉妹が、被相続人より前に亡くなっていたとしましょう。上記の場合、兄弟姉妹に子(被相続人の甥または姪)がいれば、その者が代襲相続人となります。

 

もし、代襲相続人の地位にある兄弟姉妹の子が、被相続人の相続権を承継したくないのであれば、相続放棄をする必要があります。

相続放棄は生前にもできるのか

特定の相続人に財産を相続させるため、あらかじめ他の相続人に相続放棄をしてもらいたいと考える方もいます。また、相続発生後に起こりうる相続人間のトラブルを回避する目的で、被相続人の生存中に相続放棄をしておきたいという方もいるでしょう。上記の目的を実現するため、被相続人の生前に相続放棄をすることができるか否かが気になるところです。

 

そこで、生前の相続放棄について解説していきます。

 

 

 

【@.生前に相続放棄をする旨の約束をしても無効】

 

 

推定相続人が、被相続人の生前に相続放棄をする旨の約束をしてもその効力は生じません。

 

相続放棄は、「相続人が自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内にしなければならない」旨が、民法上で規定されています。(民915条@)

 

→ 相続放棄の申述(申立)期限についてはこちら

 

相続放棄ができるのは、被相続人の相続発生後に限られます。被相続人の生前に相続放棄ができる旨の法律上の規定はありません。裁判所の判例(東京高裁昭和54年1月24日決定)でも、生前の相続放棄は法律上の規定がないため無効である旨の見解が示されています。

 

また、生前に被相続人の相続放棄ができるとすると、相続人自身の意思を無視した形で手続きがなされる可能性もあります。たとえば、特定の相続人が他の相続人や被相続人から強要されて相続放棄をしてしまう場合も考えられます。

 

相続放棄は、相続人間の平等性が保たれている中で、相続人の意思にもとに行われるべき手続きです。そのようなことから、被相続人の生前に相続放棄をすることはできないのです。

 

もし、被相続人の生前に相続人が契約書や念書上に「相続を放棄する」旨を記載しても無効になります。また、被相続人の生前に相続放棄の申述手続きを行なっても、家庭裁判所側で受け付けてくれません。

 

 

 

【A.生前の相続放棄の代わりに行える手続き方法】

 

 

相続人は被相続人の生前に相続放棄の手続きをすることはできません。しかし、生前の相続放棄の代わりに行える手続き方法はいくつかあります。それらの手続きによって、相続させたくない相続人への財産承継を回避できたり、特定の相続人へ財産を承継させたりすることが可能です。

 

 

【遺言書の作成および遺留分の放棄】

 

生前に遺言書を作成しておくことで、特定の相続人だけに財産を承継させることが可能です。

 

たとえば、被相続人Aには、B、C、Dの3名の法定相続人がいたとしましょう。この場合、Aが生前に「Bに財産全部を相続させる」旨の内容の遺言書を作成しておけば、相続発生の際、BがAの財産全部を承継するのが原則です。それにより、C、Dへの相続財産の承継を回避することもできます。

 

→ 相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)についてはこちら

 

ただ、遺言書を作成するのみでは、特定の相続人だけに財産を承継させられないケースもあります。なぜなら、遺留分という制度が法律上(民法上)で定められているからです。遺留分とは、相続人に対して法律上認められている最低限の相続分のことです。

 

→ 遺留分についてはこちら

 

上記の例で、CとDが遺留分を有している場合、その権利の侵害部分をBに対して金銭請求できます。もし、Bが遺留分侵害額請求を受けた場合、承継した相続財産の金銭の一部をCとDに渡さなければならないケースも出てきます。

 

遺留分の問題を回避するには、遺言書の作成に加えて、財産を承継しない相続人に遺留分を放棄してもらう必要があります。相続放棄とは異なり、被相続人の生前に遺留分を放棄することは可能です。相続開始前の遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可が必要なので、その審判申立をして手続きを行います。

 

遺留分の放棄の許可審判を受けるためには、申立者の放棄の意思および放棄することに対する合理的な理由の存在が必要です。申立者が生前に被相続人から多額の金銭的援助を受けているケースが合理的な理由の代表的な例です。

 

 

【生前贈与】

 

生前に贈与を行うことで、その財産を相続財産の対象から外すことができます。それにより、特定の相続人へ集中的に財産を承継させることが可能です。

 

→ 生前贈与の不動産登記手続きについてはこちら

 

→ 生前贈与の不動産登記手続きに関する注意事項についてはこちら

 

生前贈与をする場合、贈与税の課税に注意しなければなりませんが、非課税枠の範囲内の額で生前贈与を行えば税負担を回避できます。また、贈与税の配偶者控除や相続時精算課税制度を活用すれば、税負担を抑えながら生前贈与をすることが可能です。

 

→ 贈与税の配偶者控除についてはこちら

 

→ 相続時精算課税制度についてはこちら

 

 

【推定相続人の廃除】

 

被相続人の生前に自身へ不正な行為をした推定相続人がいたとしましょう。この場合、廃除の手続きによって、その推定相続人の相続権を剥奪できる場合があります。

 

→ 推定相続人の廃除についてはこちら

 

廃除によって推定相続人の相続権が剥奪されれば、その者への財産承継を回避できます。

 

ただ、推定相続人を廃除しても、財産承継の回避を実現できないケースもあります。相続人の廃除は、代襲相続発生原因の一つにあげられています。(民887条AB)もし、廃除された推定相続人に子や孫がいる場合、その者が代襲相続することになります。

 

→ 代襲相続についてはこちら

 

代襲相続人となった子や孫を経由して、廃除された推定相続人に被相続人の財産が渡ってしまう可能性もゼロではありません。

 

廃除された推定相続人への財産承継を回避できるのは、その者(廃除された推定相続人)に直系卑属(子や孫)がいない場合だけです。この点を把握した上で推定相続人の廃除の手続きをするか否かを決めることが大切です。

相続放棄が保険金に関する権利へ与える影響

相続放棄をすると、被相続人の財産を相続できなくなります。そのため、被相続人が加入している生命保険の受取人に指定されている場合であっても、相続放棄をすると保険金をもらえなくなるのではと心配される方も多いです。

 

相続放棄をした場合でも、原則として保険金を受領できる一方、保険金に関する権利を承継できなくなるケースもあります。

 

そこで、相続放棄が保険金に関する権利へどのような影響を与えるのか、詳しくみていきましょう。

 

 

 

【@.相続財産に該当しない保険金は相続放棄をしても受領可能】

 

 

生命保険金の受取人が「相続人」となっている場合、その相続人が相続放棄をした後でも、保険金を受領することが可能です。なぜなら、このケースでは保険金が相続財産に該当しないからです。

 

相続放棄をすると、手続き対象の被相続人の相続に関して、最初から相続人ではなかったものとみなされます。(民939条)相続人ではない者は、被相続人の財産を相続する権利はありません。もし、保険金が被相続人の相続財産に含まれる場合、相続放棄をすると保険金を受領できなくなります。

 

しかし、受取人が「相続人」となっている場合、その保険金は、受取人である相続人の固有財産とされます。保険契約は、保険契約者と保険者の間で締結されます。保険契約者とは、保険契約上の権利を有し、保険料の支払い義務を負う者のことです。一方、保険者とは、保険金の給付義務を負う者のことで、保険会社がこれに当たります。

 

保険契約の際には、保険の対象となる「被保険者」と保険金の給付を受ける「受取人」を定めます。たとえば、「被保険者が被相続人A、受取人が相続人B」と定めて、被相続人Aが保険会社Cと保険契約を締結したとしましょう。この場合、保険契約によって、被相続人Aが亡くなったとき、相続人Bは保険会社Cに対して保険金の給付を請求できるようになります。被相続人Aの相続によって、保険金の給付を請求できるようになったわけではありません。したがって、仮に相続人Bが被相続人Aの相続を放棄した場合でも、上記保険契約に基づいて、相続人Bは保険金を受領できるのです。

 

 

 

【A.保険金に関する権利のうち相続財産に該当するものは相続放棄をすると承継不可】

 

 

状況によっては、保険金に関する権利が、被相続人の相続財産に該当するケースもあります。このような場合、相続放棄をした者は、保険金に関する権利を承継できなくなります。

 

たとえば、被相続人が生前に「自身の配偶者を被保険者」と定めて保険契約を締結していたとしましょう。その後、契約者である被相続人が亡くなっても、被保険者が生存中であれば、保険契約は継続します。被相続人が有していた保険契約者の地位は、相続財産となるため、相続人がその権利を承継することになります。しかし、被相続人の相続を放棄すれば、その者は上記の保険契約者の地位を相続する権利を失います。

 

また、被相続人が保険契約の解約手続きを完了させた後、解約返戻金を受領する前に亡くなったとしましょう。解約返戻金とは、保険契約の解約の際、契約者に払い戻されるお金のことです。この場合、被相続人に支払われる解約返戻金は、相続財産に該当します。したがって、相続放棄をした場合、その相続人は解約返戻金を相続できなくなります。

 

 

 

【B.生命保険金と相続税】

 

 

「被保険者が被相続人A、受取人が相続人B」と定めて、被相続人Aが保険会社Cと保険契約を締結した事例で、被相続人Aの死亡後に相続人Bが保険金を受領したとします。この場合、法律上、相続人Bの固有の権利により保険金を受領したことになります。しかし、税務上において、保険金は「みなし相続財産」と扱われるため、相続税の課税対象となる点に注意しなければなりません。

 

生命保険金には、相続税の非課税限度額(500万円×法定相続人の数)が設けられています。相続人が保険金を受領した場合、上記の非課税限度額を超える部分が相続税の課税対象になります。しかし、相続人以外の者が保険金を受領した場合、非課税限度額の適用対象外です。相続放棄をすると相続人ではなくなります。そのため、保険金を受領した者が相続放棄をした者である場合、非課税限度額の控除がないため、その分相続税の課税額が高くなってしまいます。

相続財産で葬儀費用の支払いをしても相続放棄ができるのか

被相続人が亡くなった直後、葬儀を執り行って故人を弔います。その際に発生する葬儀費用を相続財産から支払いするケースもめずらしくありません。

 

被相続人の相続財産から葬儀費用の支払いをすると、相続放棄ができなくなるのではと心配される方も多いです。

 

そこで、被相続人の相続財産から葬儀費用の支払いをしても、相続放棄ができるのか否かについて解説します。

 

 

 

【@.葬儀費用の支払いが相続放棄の可否について問題となる理由】

 

 

相続財産の中から葬儀費用の支払いをすると、なぜ相続放棄ができなくなるという問題が生じるのでしょうか。それは、上記の行為によって、相続の単純承認をしたものと考えられるからです。

 

民法には、「法定単純承認」という規定が設けられています。(民921条)法定単純承認とは、相続人が相続の単純承認をしたものとみなす旨の規定です。

 

→ 法定単純承認事由についてはこちら

 

法定単純承認事由の一つに、「相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき」があります。相続人が相続財産の中から葬儀費用の支払いをする行為は、「相続財産を処分したとき」に当たるとも考えられます。

 

法定単純承認事由に該当する行為をした相続人は、相続の単純承認をしたものとみなされるため、相続放棄ができません。もし、相続財産の中から葬儀費用の支払いをした行為が法定単純承認事由に該当するのであれば、その行為をした相続人は、相続放棄をすることができなくなります。

 

そのようなことから、葬儀費用の支払いが相続放棄の可否について問題となるのです。

 

 

 

【A.相続財産からの葬儀費用の支払いが通常の範囲内の金額であれば相続放棄は可能】

 

 

相続財産による葬儀費用の支払いは、法定単純承認事由として定められている「相続財産を処分したとき」に当たらないとされています。大阪高等裁判所の2002年7月3日決定において、相続財産による葬儀費用の支払いは、以下の理由により、法定単純承認事由として定められている「相続財産を処分したとき」に当たらない旨の見解が示されています。

 

  • 葬儀は、人生最後の社会的儀式として執り行う必要性が高いもの
  • 葬儀を執り行うには、必ず相当額の支出がともなう
  • 葬儀を執り行う時期を予測するのは困難
  • 相続財産を葬儀費用の支払いに充てても、社会的見地から不当なものとはいえない
  • 相続財産がある場合で、相続人に資力がないために葬儀を執り行えないのは、非常識な結果と言わざるを得ない

 

したがって、相続財産から葬儀費用の支払いをしても、その金額が通常の範囲内であれば、相続放棄をすることが可能です。

 

ただ、相続財産からの支出額が、通常の葬儀費用の範囲を明らかに超える場合、葬儀費用以外のために支払いをしたと判断される可能性もあります。それにより、「相続人が相続財産を処分したとき」に当たると判断されて、相続放棄が認められなくなる可能性もあるため注意が必要です。

 

 

 

【B.葬儀費用の内容】

 

 

上記判例において、相続財産による葬儀費用の支払いは、法定単純承認事由である「相続財産の処分」に当たらない旨の見解が出されています。しかし、葬儀費用と一口にいっても、具体的にどのような費用が含まれるのかも気になるところです。

 

相続税法基本通達13-4で、相続税を計算するにあたって、相続財産などから控除できる葬式費用の内容が定められています。

 

→ 相続税法基本通達13条(国税庁HP)

 

相続税法基本通達で規定する葬儀費用の内容と上記判例の葬儀費用の内容が、必ずしもイコールというわけではありません。ですが、相続税法基本通達の規定で葬儀費用とされているものであれば、相続財産から支出しても法定単純承認事由である「相続財産の処分」に当たらない可能性が高いと考えられます。

 

また、相続税法基本通達で葬儀費用に含まれない費用であっても、法定単純承認事由である「相続財産の処分」に当たらないと判断されるケースもあります。相続税法基本通達において、仏壇や墓石の購入費用は、葬儀費用として取り扱わないものとされています。しかし、大阪高等裁判所の2002年7月3日決定の中では、葬儀費用の支払いとは趣を異にするとした上で、仏壇や墓石の購入費用の一部を相続財産から支出した行為が、法定単純承認事由である「相続財産の処分」に当たるとは断定できない旨の見解が示されています。

 

もし、仏壇や墓石の購入費用を相続財産から支出した行為が、「相続財産の処分」に該当しないと判断される事情が存在する場合、相続放棄が認められる可能性もあるということです。

相続放棄受理後の撤回や取り消し

相続財産の内容や他の相続人の状況から、一度手続きをした相続放棄を取りやめたいと考えてしまうことがあるかもしれません。このような場合、相続放棄を取りやめて、被相続人の遺産を相続人として相続できるようになるのか気になるところです。

 

そこで、相続放棄をした後、その撤回や取り消しができるのか否かについて見ていきましょう。

 

 

 

【@.相続放棄の撤回は認められない】

 

 

一度正式に手続きして効力が生じた相続放棄を、その後ある時点からなかったことにすることを撤回と言います。相続放棄の申述が家庭裁判所で受理された後、撤回することは認められません(民919条@)。民法919条1項において、相続放棄は民法915条1項の期間内でも、その撤回はできない旨を規定しています。そのため、相続放棄の申述が家庭裁判所で受理されれば、たとえ申述期限内であっても撤回することができないのです。

 

→ 相続放棄の申述期限についてはこちら

 

相続放棄の撤回が認められないのは、他の相続人の相続上の権利に利害が生じるからです。たとえば、相続人が、被相続人Aの子であるB、C、Dの3名だったとします。この場合、通常であれば法定相続分は各3分の1ずつになります。しかし、相続人の1人であるBが相続放棄をした場合、Bは最初からAの相続人ではなかったとみなされます。

 

→ 相続放棄の効果についてはこちら

 

それにより、CとDの法定相続分は各2分の1になります。

 

もし、Bのした相続放棄の撤回が認められると、BもAの相続人ということなり、法定相続分は当初の各3分の1ずつに変更となります。その結果、CとDの相続できる割合が減って利害が生じてしまうのです。

 

上記のような形で相続放棄をした者以外の相続人に利害が生じるのは好ましくありません。そのようなことから、相続放棄の撤回は認められていないのです。

 

一方、家庭裁判所が相続放棄の申述を受理する前であれば、取り下げることができます(家事事件手続法82条1項)。相続放棄の撤回が認められないのは、その申述が家庭裁判所で受理された後の話です。相続放棄の申述をした後、照会および回答を経て、家庭裁判所が受理するという流れで手続きが進んでいきます。

 

→ 相続放棄の申述後の手続きについてはこちら

 

上記の手続きの間であれば、取り下げすることによって、相続放棄をやめることができるのです。

 

相続放棄の申述が受理される前の取り下げ手続きは、家庭裁判所に取り下げ書を提出して行ないます。家庭裁判所に提出する取り下げ書の書式は特に決まっていません。家庭裁判所側で提供している書式を使用して作成しても、自身で任意に作成しても、どちらでもかまいません。取り下げ書を家庭裁判所に提出すると、相続放棄の取り下げが認められます。

 

 

 

【A.相続放棄の取り消しは認められる可能性もある】

 

 

相続放棄の撤回と似て非なるものに相続放棄の取り消しがあります。相続放棄の取り消しとは、撤回と異なり、最初から相続放棄をしなかったことにすることです。

 

相続放棄の撤回不可の規定(民919条@)は、民法の総則および親族の規定により、相続放棄の取り消しをすることを妨げないとしています(民919条A)。そのため、主に以下のようなケースで、相続放棄の取り消しを認めてもらえる可能性があります。

 

  • 未成年者が法定代理人の同意を得ないで相続放棄をした場合(民5条@A)
  • 成年被後見人自身で相続放棄をした場合(民9条本文)
  • 被保佐人が保佐人の同意または前記同意に代わる家庭裁判所の許可を得ないで相続放棄をした場合(民13条@6号、C)
  • 補助人の同意を要する被補助人が前記同意またはそれに代わる家庭裁判所の許可を得ないで相続放棄をした場合(民17@C)
  • 詐欺または強迫を受けたり、錯誤状態になったりした中で相続放棄をした場合(民95条、96条)

 

相続放棄の取り消しができる者は、本人、法定代理人、同意権のある者です。相続放棄の取り消しの申述手続きは、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所にします。

 

また、相続放棄の取り消しの申述期間も定められています。具体的には、追認できるときから6カ月以内、または相続放棄のときから10年以内に取り消ししなければなりません。上記期間内に相続放棄の取り消しの申述をしなければ、その権利が時効で消滅してしまいます(民919条A)。

 

 

 

【B.実際に相続放棄の取り消しを認めてもらうのは難しい】

 

 

法律上、一定事由に該当する場合、相続放棄の取り消しができるとされています。裁判所の判決や決定の中には、詐欺を理由に相続放棄の取り消しを認めたものが存在します。(東京高裁1952年7月22日決定)また、相続放棄にも錯誤の適用がある旨を認めた裁判例もあります。(最高裁1965年5月27日)

 

しかし、相続放棄の取り消しをするには、その原因を示す証拠を提出して家庭裁判所側に認めてもらわなければなりません。相続放棄の取り消しの原因を示す証拠を用意できないケースも多いです。

 

また、相続放棄が錯誤に当たるとされるには、その動機の勘違いが手続きの際に表示され、内容も重大なものであり、なおかつ相続放棄者にも重大な落ち度がないことが必要になります。相続財産の内容を誤って認識していたというだけでは、基本的に錯誤を原因とする相続放棄の取り消しは認められません。

 

そのようなことから、実際に相続放棄の取り消しを認めてもらうのは難しいです。

相続放棄の期間伸長

相続放棄は、原則として期間内に申述(申立)の手続きをしなければなりません。

 

→ 相続放棄の申述(申立)期限についてはこちら

 

しかし、状況によっては、期間内に相続放棄の手続きをすることが難しいときも出てきます。そのような場合、相続放棄の期間を伸長する方法で対処できるケースもあります。

 

相続放棄の期間伸長とはどのようなものなのか、その制度や手続きについて詳しく見ていきます。

 

 

 

【@.相続放棄の期間伸長とは】

 

 

相続放棄の期間伸長とは、本来の申述(申立)期限を長くしてもらう手続きのことです。相続発生後、相続人は被相続人の相続財産の内容を調査した上で、相続を承認するか放棄するかを決定します。しかし、状況により、相続財産の調査に長期間要するケースもあります。

 

たとえば、被相続人が生前に多数の財産を保有していたり、複数の借金を負っていたりしていた場合、その内容の調査に長期間要することも少なくありません。また、被相続人が国内の各地だけではなく、国外にも財産を保有している場合も、その内容の調査に長い期間を要するでしょう。

 

もし、上記のような状況にある被相続人の相続放棄を本来の期間内にしなければならないとしましょう。このような場合、相続財産の内容を正確に把握できない状況で手続きせざるを得なくなるケースも出てきます。それにより、適切ではない形で相続放棄をしてしまうことも考えられ、相続人にとって酷な結果となってしまいます。

 

したがって、相続財産の調査に長期間要する場合でも、相続人にとって適切な形で相続放棄ができるように、期間の伸長制度が設けられているのです。

 

 

 

【A.認められる伸長期間は通常3カ月以内】

 

 

相続放棄の伸長期間は、家庭裁判所の判断によって決定されます。家庭裁判所は、相続財産の所在する場所、内容、権利関係の複雑性、相続人の居住場所の遠隔性などを考慮して伸長期間を決定します。

 

申立によって認められる伸長期間は、通常3カ月以内です。それほど多くの期間伸長は必要ないと判断された場合、1カ月程度になることもあります。一方、通常より多くの期間伸長が必要と裁判所が判断した場合、3カ月以上になる可能性もゼロではありません。

 

ただ、家庭裁判所は3カ月以上の期間伸長の決定については、厳格です。そのため、相応の理由がなければ、3カ月以上の期間伸長を認めてもらえません。また、再度の期間伸長についても同様です。

 

 

 

【B.相続放棄の期間伸長申立の手続き方法と必要書類等】

 

 

相続放棄の期間伸長は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して申立の手続きをします。申立手続きができるのは、利害関係人、検察官です。利害関係人とは、ある法律上の行為について、当事者ではないものの法律上利害関係のある者を指し、相続人もこれに含まれます。

 

相続放棄の期間伸長の申立は、相続人ごとに認められます。また、相続放棄の期間伸長の申立は、相続放棄の申述(申立)期限内に手続きしなければなりません。

 

相続放棄の期間伸長の申立手続きをする際に必要となる書類等は、以下のとおりです。

 

【必要書類】

 

  • 申立書
  • 被相続人の除票または戸籍の附票
  • 被相続人の死亡の記載がある除籍謄本等
  • 申立する相続人の戸籍謄本
  • 申立人が利害関係人である場合はその旨を証明する書類

 

※  申立する相続人が、被相続人の父母や兄弟姉妹など第2、3順位の相続人である場合、先順位の相続人がいない旨を証明する戸籍謄本等の提出も必要です。

 

 

【申立費用】

 

  • 相続人1人につき800円(収入印紙で納付)
  • 連絡用の郵便切手(数百円程度)
▲このページのトップに戻る