家庭裁判所で行う相続業務に関するQ&Aを記載させていただいております。

 

【◆ 業務に関するQ&A】

 

【◆ 相続放棄関係】

 

【Q1】

被相続人に多額の借金があるので相続したくありません。相続放棄をすれば、相続しなくても済むと聞きました。自分だけ相続放棄をすれば、問題を解決できますか?

 

【A1】

相続放棄をされた方は、最初から被相続人の相続人ではなかったとみなされます。そのため、相続放棄をされた方は、被相続人の相続財産に借金があっても、承継しないで済みます。

しかし、相続放棄をされると、相続順位に沿って被相続人の相続権が移っていきます。したがって、被相続人の借金を誰も相続されたくないのであれば、最終的に全順位の相続人の方が相続放棄をしていただかなければなりません。

 

→ 相続放棄が必要な相続人の範囲とその順位の詳細についてはこちら

 

【Q2】

父が多額の借金を残して亡くなったので、相続放棄をしようと考えています。しかし、私が相続放棄をすると、私の子どもが父の借金を相続することになるのではと不安です。このような状況で私が相続放棄した場合、私の子どもも相続放棄をしなければならないのでしょうか?

 

【A2】

あなたがお父様の相続放棄をされても、あなたのお子様はお父様の相続人(代襲相続人)にならないため、その必要もありません。

 

→ 相続放棄と代襲相続発生の関係性の詳細についてはこちら

 

【Q3】

商売をしている両親が亡くなった後、その後を継ぐ私の兄が財産を相続する形で話がまとまっています。今のうちに私は両親の相続権を放棄しようと考えています。このような形で相続放棄をすることができるのでしょうか?

 

【A3】

相続放棄ができるのは、相続発生後に限られます。生前の相続放棄は法律上認められていません。もし、被相続人の生前に相続放棄をする旨の約束をしても無効です。

ただ、生前の相続放棄に代わる手続き方法がいくつかあります。それらの手続きによって、相続させたくない相続人への財産承継を回避できたり、特定の相続人へ財産を承継させたりできる場合があります。

 

→ 生前の相続放棄の可否の詳細についてはこちら

 

【Q4】

父が亡くなり、私は父の相続権を放棄しようと考えています。父は私を受取人とする生命保険に加入していました。このような場合、私が相続放棄をすると、保険金を受け取ることもできなくなってしまうのでしょうか?

 

【A4】

保険金は相続財産ではなく、受取人の固有財産とされています。そのため、相続放棄をされても、お父様が加入されていた生命保険金を受け取ることができます。

ただ、税務上において、生命保険金は「みなし相続財産」と扱われるため、相続税の課税対象になるのが原則です。

 

→ 相続放棄が保険金に関する権利へ与える影響の詳細についてはこちら

 

【Q5】

先日亡くなった父に多額の借金があるため、相続放棄をしようと考えています。父の葬儀の際、その費用を父の遺産から支払いにあてました。相続財産に手をつけると相続放棄ができなくなると聞いたのでその点が不安です。このような場合、相続放棄をすることができるのでしょうか?

 

【A5】

相続財産から葬儀費用の支払いをしても、原則として相続放棄をすることが可能です。

ただ、通常葬儀で必要となる費用を明らかに超える金額を相続財産から支出した場合、相続放棄が認められなくなる可能性もあります。

 

→ 相続財産で葬儀費用の支払いをしても相続放棄ができるのかの詳細についてはこちら

 

【Q6】

一度手続きした相続放棄を取りやめたいと考えています。このようなことはできるのでしょうか?

 

【A6】

相続放棄の申述(申立)が家庭裁判所に受理された後は、撤回できません。一方、相続放棄の申述(申立)が家庭裁判所に受理される前であれば、取り下げることは可能です。

また、一定の事由がある場合、家庭裁判所で受理された相続放棄の取り消しを認めてもらえる可能性があります。

 

→ 相続放棄受理後の撤回や取り消しの詳細についてはこちら

 

【Q7】

先日亡くなった父の相続手続きを始めました。父は生前に複数の借金を負っていてその内容が明確ではありません。また保有財産の権利関係も複雑で、その内容の調査に時間がかかりそうです。

期限内に相続放棄の手続きしなければならないことは知っています。しかし、その期限内に父の負っていた借金や保有財産の内容を調査して明確にするのは難しそうです。

このような場合でも、相続財産の調査を途中でやめて、期限内に相続放棄の手続きをするしか方法はないのでしょうか?

 

【A7】

相続放棄の手続き期限内に相続財産の調査を終えるのが難しい場合、家庭裁判所へ申立することで、期間を伸長してもらえることがあります。

 

→ 相続放棄の期間伸長の詳細についてはこちら

 

【Q8】

私は、今後相続放棄をしようと考えていますが、その対象の被相続人名義の自動車を管理しています。被相続人名義の自動車への対応方法で何か注意点はありますか?

 

【A8】

被相続人名義の自動車への対応方法によっては、法定単純承認に該当する行為をしたとみなされて、相続放棄ができなくなる可能性があるため、注意が必要です。

 

→ 相続放棄をする場合の被相続人名義の自動車への対応方法の詳細についてはこちら

 

【Q9】

相続財産の中には、資産価値が低くて売却困難な不動産しかないため、私は相続放棄をしようと考えています。私が相続放棄をした場合、相続財産である不動産の権利は誰が承継するのでしょうか?

また、相続放棄をすれば、私は相続財産である不動産の管理義務も負わなくてよいと思いますが、その点についても詳しく知りたいです。 

 

【A9】

相続放棄をした場合、次順位以降の相続人の方がいらっしゃれば、その方が相続財産である不動産の権利を承継します。もし、相続人の方全員が相続放棄をして相続人不存在になった場合、相続財産清算人が選任されれば、一定の手続きを経て、最終的に国へ引き継がれることになります。

また、相続放棄をした場合でも、状況によっては相続財産である不動産の管理義務を負わなければなりません。

 

→ 相続放棄後の不動産の権利関係と管理義務の詳細についてはこちら

 

【Q10】

祖父は生前に借金を残して亡くなりました。祖父の相続人となった父は、相続放棄をする予定でしたが、その手続きをする前に亡くなりました。

この場合、父の子である私が祖父の借金を背負うことになると思いますので、祖父の相続だけ放棄して、父の遺産は相続したいと考えていますが可能でしょうか?

 

【A10】

あなたは再転相続人として、ご祖父様とお父様の二つの相続について、それぞれ承認または放棄の選択ができます。ご祖父様の相続を放棄して、お父様の相続を承認することも可能です。

 

→ 再転相続が発生した場合の相続放棄の詳細についてはこちら

相続放棄をすると、はじめから被相続人の相続人ではなかったことになります。それにより、被相続人に借金があっても、相続放棄をすればその者は相続しないで済むのです。

 

しかし、相続放棄をしたからといって、被相続人の借金自体がなくなるわけではありません。ある相続人が相続放棄をして、被相続人の借金の相続を免れても、それによって、後順位の相続人が承継することになります。そのため、相続放棄をする際、手続き後にどのような形で被相続人の相続権が移っていくのかについても考えなければなりません。

 

そこで、相続人が相続放棄をした後、被相続人の相続権を承継することになる後順位相続人とその範囲についてみていきましょう。また、相続放棄した旨を後順位相続人に伝えたほうがよいのか否かについても触れていきます。

 

【ⅰ.相続放棄をすると、相続順位に沿って被相続人の相続権が移っていく】

 

被相続人の借金を誰も承継したくない場合、最終的に全順位の相続人が相続放棄の手続きをする必要があります。なぜなら、同順位の相続人全員が被相続人の相続を放棄しても、その相続権は相続順位に沿って、後順位の相続人に移っていくからです。

 

→ 相続人の範囲と順位についてはこちら

 

そこで、相続放棄をすると、どのように被相続人の相続権が移っていくのか、具体例をあげてみていきましょう。

【事例】

Aは生前に高額な借金を残して亡くなりました。Aには配偶者Bと子Cがいます。(Cに子や孫はいないものとします。)また、Aの両親DとEは健在で、それより上の直系尊属(祖父母から上の親族)はAよりも先に亡くなっています。そして、Aには、兄弟のFとGがいて、2人とも生きています。(FとGに子はいないものとします。)

 

※  下記以降の説明においては、相続欠格や廃除について考えないものとします。

 

→ 相続欠格・廃除についてはこちら

 

【BとCの相続放棄のケース】

 

Aが亡くなって最初に相続人となるのは、配偶者のBと子のCです。BとCが相続放棄をする場合、Bのみが相続放棄をする場合、Cのみが相続放棄をする場合によって相続権の移り方が違います。

 

【BとCが相続放棄をした場合】

 

BとCが相続放棄をすると、Aの両親であるDとEが相続人になります。Cが相続放棄をした場合、Aの第1順位の相続人がいなかったことになります。そのため、第2順位の相続人であるDとEに相続権が移るのです。上記の事例と異なり、Cの直系卑属(子や孫)がいるケースでも、その結論は変わりません。なぜなら、相続放棄は代襲相続の原因とならないからです。

 

→ 代襲相続についてはこちら

 

なお、子Cが未成年の場合、親のBが法定代理人として代わりに相続放棄の手続きをします。BとCが同時に相続放棄をすれば、利益相反の問題も生じません。

 

→ 利益相反行為(親と未成年の子のケース)についてはこちら

 

したがって、特別代理人を選任することなく、BはCの相続放棄の手続きをすることができるのです。

 

→ 特別代理人の選任についてはこちら

 

【Bが相続放棄をした場合】

 

Bのみが相続放棄をした場合、Cが単独でAを相続することになります。第1順位の相続人がまだ存在するため、第2順位の相続人であるDとEに相続権は移りません。

 

【Cが相続放棄をした場合】

 

Cのみが相続放棄をした場合、B、D、Eの3名が相続人になります。上記の事例と異なり、Cの直系卑属(子や孫)がいるケースでも結論は同じです。(理由は、BとCが相続放棄をした場合と同様です。)Cが相続を放棄することで、第1順位の相続人がいなくなります。それにより、第2順位の相続人であるDとEに相続権が移るのです。また、相続放棄をしていないBが相続権を有するのは当然です。

 

このケースで、もしCが未成年である場合、Bは法定代理人として代わりに相続放棄の手続きができません。なぜなら、未成年の子だけが相続放棄をして、親が単独で相続人になることは利益相反にあたるからです。

 

したがって、Cが未成年の場合、特別代理人を選任して相続放棄の手続きをすることになります。

 

→ 特別代理人の選任についてはこちら

 

【DとEの相続放棄のケース】

 

上記の事例で、BとCが相続放棄をした場合、第2順位の相続人であるDとEに相続権が移ります。そこで、DまたはEの1人だけが相続放棄をした場合、DとEが相続放棄をした場合の相続権の移り方についてみていきましょう。

 

【DまたはEの1人だけが相続放棄をした場合】

 

D、Eのどちらか1人だけが相続放棄をした場合、もう1人が単独で相続人となります。たとえば、Dだけが相続放棄をしたときはEが、Eだけが相続放棄をしたときはDが単独で相続することになるのです。

 

もし、DとEの直系尊属(被相続人Aの祖父母より上の親族)が生存している場合でも、その結論は変わりません。なぜなら、親等(親族間の世数)の異なる直系尊属がいる場合、被相続人から近い親等の直系尊属が優先的に相続人となるからです。

 

【DとEが相続放棄をした場合】

 

DとEが相続放棄をすると、Aの第2順位の相続人がいなくなります。それにより、第3順位の相続人であるFとGに相続権が移ります。

 

一方、上記の事例とは異なり、DとEの直系尊属が健在であるときは、その者に相続権が移ります。したがって、この場合は、FとGに相続権は移りません。

 

【FとGの相続放棄のケース】

 

上記の事例で、B、C、D、Eが順番に相続放棄をして、FとGがAの相続人になったとします。その後、FとGが相続放棄をすると、Aを相続する者はいなくなります。上記の事例と異なり、FとGに子(Aの甥、姪)がいる場合でも、その結論は変わりません。(理由は、BとCが相続放棄をした場合と同様です。)

 

また、FとGのどちらか1人が相続放棄をした場合、もう1人が単独で相続人となります。(Fのみが相続放棄した場合はGが、Gのみが相続放棄をした場合はFがそれぞれ単独相続人となります。)

 

【Aを相続する者がいなくなった後】

 

上記の事例で、B、C、D、E、F、Gが順番に相続放棄をして、Aを相続する者がいなくなったとします。このようなケースで、Aの相続財産を管理する必要性が生じた場合、申立により相続財産管理人が選任されます。その後、選任された相続財産管理人が、被相続人の相続財産を管理したり、借金の返済をしたりするなどの清算業務を行うのです。

 

また、相続放棄をした相続人にも、被相続人の相続財産の管理責任がある点に注意しなければなりません。(民940条)そのため、選任された相続財産管理人が管理できるようになるまで、相続放棄をした相続人が、相続財産を管理し続けなければならないのです。

 

この点につき、2021年民法改正(2023年4月1日施行予定)で相続放棄をした相続人が相続財産の管理責任を負うのは、その者が現に占有していた場合だけになります。また、管理責任を負う期間も相続人または相続財産管理人に対して相続財産を引き渡すまでに変更となっています。

 

→ 相続放棄者の相続財産の管理責任についてはこちら

 

【ⅱ.相続放棄した旨を後順位相続人に伝えるのが好ましい】

 

先順位相続人が相続放棄をしても、家庭裁判所側から後順位相続人に対してその旨は伝えられません。それによって、後順位相続人が知らない間に被相続人の借金の支払い義務を承継してしまうケースも考えられます。

 

相続放棄をした相続人は、その旨を後順位相続人に伝える義務はありません。しかし、後順位相続人に対して、相続放棄した旨を伝えたほうが好ましでしょう。

 

ただ、相続放棄をした相続人と後順位相続人が疎遠になっていることもあります。このような場合、相続放棄した旨を伝える方法がないケースも少なくありません。

 

上記のような事情があり、相続人が相続放棄した旨を後順位相続人に伝えられない場合でも特に問題ありません。なぜなら、後順位相続人が相続で借金の承継を知った後、相続放棄をすればよいからです。

 

相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内」であれば手続きできます。後順位相続人が被相続人の債権者から通知を受けて、はじめて相続人になった旨を知ったとします。このような場合、そのときから3カ月以内であれば、相続放棄が可能なのです。

 

→ 相続放棄の申述期限についてはこちら

 

したがって、後順位相続人と疎遠状態で相続放棄をした旨を伝えられない場合でも心配ありません。

亡くなった人の相続権を放棄する際、代襲相続との関係において、以下の2つの点で問題になることがあります。

  1. 子が亡くなった親の相続権を放棄した場合、孫が代襲相続人となるのか?
  2. 最初に子が父の相続放棄をした後に祖父が亡くなった場合、子は祖父の代襲相続人になれるのか?

 

相続放棄がなされた場合、相続関係の状況によって代襲相続が発生するケースと発生しないケースがあります。そこで、相続放棄と代襲相続の関係性について、いくつか事例をあげながら解説していきましょう。

 

→ 相続放棄についてはこちら

 

→ 代襲相続についてはこちら

 

【ⅰ.相続放棄は代襲相続の発生原因ではない】

 

相続放棄をした場合、その者は被相続人の相続に関してはじめから相続人ではなかった者とみなされます。(民939条)それにより、相続放棄をした者は、被相続人の相続発生のときより、相続人から除かれることになるのです。その際、相続放棄をした相続人に子がいる場合、その者が代襲相続することになるのではとも考えられます。この点において、冒頭であげた1の問題が生じるのです。

 

冒頭であげた1の問題において、結論から述べると孫は親の代襲相続人にはなりません。なぜなら、相続放棄は代襲相続の発生原因ではないからです。被相続人の相続発生前に相続人が死亡したこと、相続人が相続欠格に該当したり、廃除されたりして相続権を失ったことが、代襲相続の発生原因として法律上定められています。(民887条②)

 

→ 相続欠格についてはこちら

 

→ 相続人の廃除についてはこちら

 

そのようなことから、子が亡くなった親の相続権を放棄しても代襲相続は発生しないため、孫は代襲相続人とならないのです。

 

冒頭であげた1の問題において、仮に亡くなった親に多額の借金があった場合でも、孫は相続放棄をする必要はありません。(そもそも相続人ではないため、相続放棄ができません。)また、被相続人の兄弟姉妹が相続人になるケースも上記の結論と同様です。相続放棄をした兄弟姉妹に子がいたとします。この場合、代襲相続は発生しないため、兄弟姉妹の子は代襲相続人になりません。

 

【ⅱ.被相続人の孫であれば原則として代襲相続人になれる】

 

冒頭であげた2の問題において、通常であれば子は祖父の代襲相続人となります。なぜなら、祖父より先に父が亡くなっているからです。しかし、父が亡くなったとき、子は相続放棄をしているため、最初から父の相続人ではなかったことになります。そのようなことから、父の相続人ではないため、祖父の代襲相続人にもならないのではないかとも考えられます。

 

冒頭であげた2の問題のケースにおいて、子は祖父の代襲相続人となるというのが結論です。代襲相続の発生原因が生じた場合、被相続人の子の子(孫)であれば、原則として代襲相続人となる旨の規定があるからです。(民887条②本文)そのため、子が父の相続権を放棄しても、祖父の代襲相続権まで失うわけではありません。

 

また、相続放棄は、対象の被相続人の相続に関するものだけに対してその効力が生じます。たとえば、子が父の相続権を放棄した場合、父の相続に関してだけ最初から相続人とならなかったとみなされるのです。(民939条)。

 

したがって、父の相続権を放棄した場合、その効力が祖父の相続に関してまで及ぶことはありません。

 

これに対して、冒頭であげた2の問題の事例と異なり、祖父が最初に亡くなり、その後に父が亡くなった場合は、子が祖父の相続権を有するか否かの結論が異なります。このようなケースで、子が父の相続権を放棄すると、祖父の相続を承認する権利を失うため注意が必要です。

 

→ 再転相続が発生した場合の相続放棄についてはこちら

 

【ⅲ.もともと代襲相続人の地位にある場合は相続放棄が必要】

 

冒頭であげた1の問題の事例と異なり、もともと代襲相続人の地位にある者が相続権を承継したくない場合、相続放棄をしなければなりません。

 

たとえば、相続発生後、被相続人の第1順位と第2順位の相続人が相続放棄をして、相続権が第3順位の相続人に回ってきたとします。このようなケースで、第3順位の相続人となるはずの兄弟姉妹が、被相続人より前に亡くなっていたとしましょう。上記の場合、兄弟姉妹に子(被相続人の甥または姪)がいれば、その者が代襲相続人となります。

 

もし、代襲相続人の地位にある兄弟姉妹の子が、被相続人の相続権を承継したくないのであれば、相続放棄をする必要があります。

特定の相続人に財産を相続させるため、あらかじめ他の相続人に相続放棄をしてもらいたいと考える方もいます。また、相続発生後に起こりうる相続人間のトラブルを回避する目的で、被相続人の生存中に相続放棄をしておきたいという方もいるでしょう。上記の目的を実現するため、被相続人の生前に相続放棄をすることができるか否かが気になるところです。

 

そこで、生前の相続放棄について解説していきます。

 

【ⅰ.生前に相続放棄をする旨の約束をしても無効】

 

推定相続人が、被相続人の生前に相続放棄をする旨の約束をしてもその効力は生じません。相続放棄は、「相続人が自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内にしなければならない」旨が、民法上で規定されています。(民915条①)

 

→ 相続放棄の申述(申立)期限についてはこちら

 

相続放棄ができるのは、被相続人の相続発生後に限られます。被相続人の生前に相続放棄ができる旨の法律上の規定はありません。裁判所の判例(東京高裁昭和54年1月24日決定)でも、生前の相続放棄は法律上の規定がないため無効である旨の見解が示されています。

 

また、生前に被相続人の相続放棄ができるとすると、相続人自身の意思を無視した形で手続きがなされる可能性もあります。たとえば、特定の相続人が他の相続人や被相続人から強要されて相続放棄をしてしまう場合も考えられます。

 

相続放棄は、相続人間の平等性が保たれている中で、相続人の意思にもとに行われるべき手続きです。そのようなことから、被相続人の生前に相続放棄をすることはできないのです。もし、被相続人の生前に相続人が契約書や念書上に「相続を放棄する」旨を記載しても無効になります。また、被相続人の生前に相続放棄の申述手続きを行なっても、家庭裁判所側で受け付けてくれません。

 

【ⅱ.生前の相続放棄の代わりに行える手続き方法】

 

相続人は被相続人の生前に相続放棄の手続きをすることはできません。しかし、生前の相続放棄の代わりに行える手続き方法はいくつかあります。それらの手続きによって、相続させたくない相続人への財産承継を回避できたり、特定の相続人へ財産を承継させたりすることが可能です。

 

【遺言書の作成および遺留分の放棄】

 

生前に遺言書を作成しておくことで、特定の相続人だけに財産を承継させることが可能です。

 

たとえば、被相続人Aには、B、C、Dの3名の法定相続人がいたとしましょう。この場合、Aが生前に「Bに財産全部を相続させる」旨の内容の遺言書を作成しておけば、相続発生の際、BがAの財産全部を承継するのが原則です。それにより、C、Dへの相続財産の承継を回避することもできます。

 

→ 相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)についてはこちら

 

ただ、遺言書を作成するのみでは、特定の相続人だけに財産を承継させられないケースもあります。なぜなら、遺留分という制度が法律上(民法上)で定められているからです。遺留分とは、相続人に対して法律上認められている最低限の相続分のことです。

 

→ 遺留分についてはこちら

 

上記の例で、CとDが遺留分を有している場合、その権利の侵害部分をBに対して金銭請求できます。もし、Bが遺留分侵害額請求を受けた場合、承継した相続財産の金銭の一部をCとDに渡さなければならないケースも出てきます。

 

遺留分の問題を回避するには、遺言書の作成に加えて、財産を承継しない相続人に遺留分を放棄してもらう必要があります。相続放棄とは異なり、被相続人の生前に遺留分を放棄することは可能です。相続開始前の遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可が必要なので、その審判申立をして手続きを行います。

 

遺留分の放棄の許可審判を受けるためには、申立者の放棄の意思および放棄することに対する合理的な理由の存在が必要です。申立者が生前に被相続人から多額の金銭的援助を受けているケースが合理的な理由の代表的な例です。

 

【生前贈与】

 

生前に贈与を行うことで、その財産を相続財産の対象から外すことができます。それにより、特定の相続人へ集中的に財産を承継させることが可能です。

 

→ 生前贈与の不動産登記手続きについてはこちら

 

→ 生前贈与の不動産登記手続きに関する注意事項についてはこちら

 

生前贈与をする場合、贈与税の課税に注意しなければなりませんが、非課税枠の範囲内の額で生前贈与を行えば税負担を回避できます。また、贈与税の配偶者控除や相続時精算課税制度を活用すれば、税負担を抑えながら生前贈与をすることが可能です。

 

→ 贈与税の配偶者控除についてはこちら

 

→ 相続時精算課税制度についてはこちら

 

【推定相続人の廃除】

 

被相続人の生前に自身へ不正な行為をした推定相続人がいたとしましょう。この場合、廃除の手続きによって、その推定相続人の相続権を剥奪できる場合があります。

 

→ 推定相続人の廃除についてはこちら

 

廃除によって推定相続人の相続権が剥奪されれば、その者への財産承継を回避できます。

 

ただ、推定相続人を廃除しても、財産承継の回避を実現できないケースもあります。相続人の廃除は、代襲相続発生原因の一つにあげられています。(民887条②③)もし、廃除された推定相続人に子や孫がいる場合、その者が代襲相続することになります。

 

→ 代襲相続についてはこちら

 

代襲相続人となった子や孫を経由して、廃除された推定相続人に被相続人の財産が渡ってしまう可能性もゼロではありません。

 

廃除された推定相続人への財産承継を回避できるのは、その者(廃除された推定相続人)に直系卑属(子や孫)がいない場合だけです。この点を把握した上で推定相続人の廃除の手続きをするか否かを決めることが大切です。

相続放棄をすると、被相続人の財産を相続できなくなります。そのため、被相続人が加入している生命保険の受取人に指定されている場合であっても、相続放棄をすると保険金をもらえなくなるのではと心配される方も多いです。

 

相続放棄をした場合でも、原則として保険金を受領できる一方、保険金に関する権利を承継できなくなるケースもあります。

 

そこで、相続放棄が保険金に関する権利へどのような影響を与えるのか、詳しくみていきましょう。

 

【ⅰ.相続財産に該当しない保険金は相続放棄をしても受領可能】

 

生命保険金の受取人が「相続人」となっている場合、その相続人が相続放棄をした後でも、保険金を受領することが可能です。なぜなら、このケースでは保険金が相続財産に該当しないからです。

 

相続放棄をすると、手続き対象の被相続人の相続に関して、最初から相続人ではなかったものとみなされます。(民939条)相続人ではない者は、被相続人の財産を相続する権利はありません。もし、保険金が被相続人の相続財産に含まれる場合、相続放棄をすると保険金を受領できなくなります。

 

しかし、受取人が「相続人」となっている場合、その保険金は、受取人である相続人の固有財産とされます。保険契約は、保険契約者と保険者の間で締結されます。保険契約者とは、保険契約上の権利を有し、保険料の支払い義務を負う者のことです。一方、保険者とは、保険金の給付義務を負う者のことで、保険会社がこれに当たります。

 

保険契約の際には、保険の対象となる「被保険者」と保険金の給付を受ける「受取人」を定めます。たとえば、「被保険者が被相続人A、受取人が相続人B」と定めて、被相続人Aが保険会社Cと保険契約を締結したとしましょう。この場合、保険契約によって、被相続人Aが亡くなったとき、相続人Bは保険会社Cに対して保険金の給付を請求できるようになります。被相続人Aの相続によって、保険金の給付を請求できるようになったわけではありません。したがって、仮に相続人Bが被相続人Aの相続を放棄した場合でも、上記保険契約に基づいて、相続人Bは保険金を受領できるのです。

 

【ⅱ.保険金に関する権利のうち相続財産に該当するものは相続放棄をすると承継不可】

 

状況によっては、保険金に関する権利が、被相続人の相続財産に該当するケースもあります。このような場合、相続放棄をした者は、保険金に関する権利を承継できなくなります。

 

たとえば、被相続人が生前に「自身の配偶者を被保険者」と定めて保険契約を締結していたとしましょう。その後、契約者である被相続人が亡くなっても、被保険者が生存中であれば、保険契約は継続します。被相続人が有していた保険契約者の地位は、相続財産となるため、相続人がその権利を承継することになります。しかし、被相続人の相続を放棄すれば、その者は上記の保険契約者の地位を相続する権利を失います。

 

また、被相続人が保険契約の解約手続きを完了させた後、解約返戻金を受領する前に亡くなったとしましょう。解約返戻金とは、保険契約の解約の際、契約者に払い戻されるお金のことです。この場合、被相続人に支払われる解約返戻金は、相続財産に該当します。したがって、相続放棄をした場合、その相続人は解約返戻金を相続できなくなります。

 

【ⅲ.生命保険金と相続税】

 

「被保険者が被相続人A、受取人が相続人B」と定めて、被相続人Aが保険会社Cと保険契約を締結した事例で、被相続人Aの死亡後に相続人Bが保険金を受領したとします。この場合、法律上、相続人Bの固有の権利により保険金を受領したことになります。しかし、税務上において、保険金は「みなし相続財産」と扱われるため、相続税の課税対象となる点に注意しなければなりません。

 

生命保険金には、相続税の非課税限度額(500万円×法定相続人の数)が設けられています。相続人が保険金を受領した場合、上記の非課税限度額を超える部分が相続税の課税対象になります。しかし、相続人以外の者が保険金を受領した場合、非課税限度額の適用対象外です。相続放棄をすると相続人ではなくなります。そのため、保険金を受領した者が相続放棄をした者である場合、非課税限度額の控除がないため、その分相続税の課税額が高くなってしまいます。

被相続人が亡くなった直後、葬儀を執り行って故人を弔います。その際に発生する葬儀費用を相続財産から支払いするケースもめずらしくありません。被相続人の相続財産から葬儀費用の支払いをすると、相続放棄ができなくなるのではと心配される方も多いです。

 

そこで、被相続人の相続財産から葬儀費用の支払いをしても、相続放棄ができるのか否かについて解説します。

 

【ⅰ.葬儀費用の支払いが相続放棄の可否について問題となる理由】

 

相続財産の中から葬儀費用の支払いをすると、なぜ相続放棄ができなくなるという問題が生じるのでしょうか。それは、上記の行為によって、相続の単純承認をしたものと考えられるからです。

 

民法には、「法定単純承認」という規定が設けられています。(民921条)法定単純承認とは、相続人が相続の単純承認をしたものとみなす旨の規定です。

 

→ 法定単純承認事由についてはこちら

 

法定単純承認事由の一つに、「相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき」があります。相続人が相続財産の中から葬儀費用の支払いをする行為は、「相続財産を処分したとき」に当たるとも考えられます。

 

法定単純承認事由に該当する行為をした相続人は、相続の単純承認をしたものとみなされるため、相続放棄ができません。もし、相続財産の中から葬儀費用の支払いをした行為が法定単純承認事由に該当するのであれば、その行為をした相続人は、相続放棄をすることができなくなります。

 

そのようなことから、葬儀費用の支払いが相続放棄の可否について問題となるのです。

 

【ⅱ.相続財産からの葬儀費用の支払いが通常の範囲内の金額であれば相続放棄は可能】

 

相続財産による葬儀費用の支払いは、法定単純承認事由として定められている「相続財産を処分したとき」に当たらないとされています。大阪高等裁判所の2002年7月3日決定において、相続財産による葬儀費用の支払いは、以下の理由により、法定単純承認事由として定められている「相続財産を処分したとき」に当たらない旨の見解が示されています。

  • 葬儀は、人生最後の社会的儀式として執り行う必要性が高いもの
  • 葬儀を執り行うには、必ず相当額の支出がともなう
  • 葬儀を執り行う時期を予測するのは困難
  • 相続財産を葬儀費用の支払いに充てても、社会的見地から不当なものとはいえない
  • 相続財産がある場合で、相続人に資力がないために葬儀を執り行えないのは、非常識な結果と言わざるを得ない

 

したがって、相続財産から葬儀費用の支払いをしても、その金額が通常の範囲内であれば、相続放棄をすることが可能です。

 

ただ、相続財産からの支出額が、通常の葬儀費用の範囲を明らかに超える場合、葬儀費用以外のために支払いをしたと判断される可能性もあります。それにより、「相続人が相続財産を処分したとき」に当たると判断されて、相続放棄が認められなくなる可能性もあるため注意が必要です。

 

【ⅲ.葬儀費用の内容】

 

上記判例において、相続財産による葬儀費用の支払いは、法定単純承認事由である「相続財産の処分」に当たらない旨の見解が出されています。しかし、葬儀費用と一口にいっても、具体的にどのような費用が含まれるのかも気になるところです。

 

相続税法基本通達13-4で、相続税を計算するにあたって、相続財産などから控除できる葬式費用の内容が定められています。

 

→ 相続税法基本通達13条(国税庁HP)

 

相続税法基本通達で規定する葬儀費用の内容と上記判例の葬儀費用の内容が、必ずしもイコールというわけではありません。ですが、相続税法基本通達の規定で葬儀費用とされているものであれば、相続財産から支出しても法定単純承認事由である「相続財産の処分」に当たらない可能性が高いと考えられます。

 

また、相続税法基本通達で葬儀費用に含まれない費用であっても、法定単純承認事由である「相続財産の処分」に当たらないと判断されるケースもあります。相続税法基本通達において、仏壇や墓石の購入費用は、葬儀費用として取り扱わないものとされています。しかし、大阪高等裁判所の2002年7月3日決定の中では、葬儀費用の支払いとは趣を異にするとした上で、仏壇や墓石の購入費用の一部を相続財産から支出した行為が、法定単純承認事由である「相続財産の処分」に当たるとは断定できない旨の見解が示されています。

 

もし、仏壇や墓石の購入費用を相続財産から支出した行為が、「相続財産の処分」に該当しないと判断される事情が存在する場合、相続放棄が認められる可能性もあるということです。

相続財産の内容や他の相続人の状況から、一度手続きをした相続放棄を取りやめたいと考えてしまうことがあるかもしれません。このような場合、相続放棄を取りやめて、被相続人の遺産を相続人として相続できるようになるのか気になるところです。

 

そこで、相続放棄をした後、その撤回や取り消しができるのか否かについて見ていきましょう。

 

【ⅰ.相続放棄の撤回は認められない】

 

一度正式に手続きして効力が生じた相続放棄を、その後ある時点からなかったことにすることを撤回と言います。相続放棄の申述が家庭裁判所で受理された後、撤回することは認められません(民919条①)。民法919条1項において、相続放棄は民法915条1項の期間内でも、その撤回はできない旨を規定しています。そのため、相続放棄の申述が家庭裁判所で受理されれば、たとえ申述期限内であっても撤回することができないのです。

 

→ 相続放棄の申述期限についてはこちら

 

相続放棄の撤回が認められないのは、他の相続人の相続上の権利に利害が生じるからです。たとえば、相続人が、被相続人Aの子であるB、C、Dの3名だったとします。この場合、通常であれば法定相続分は各3分の1ずつになります。しかし、相続人の1人であるBが相続放棄をした場合、Bは最初からAの相続人ではなかったとみなされます。

 

→ 相続放棄の効果についてはこちら

 

それにより、CとDの法定相続分は各2分の1になります。

 

もし、Bのした相続放棄の撤回が認められると、BもAの相続人ということなり、法定相続分は当初の各3分の1ずつに変更となります。その結果、CとDの相続できる割合が減って利害が生じてしまうのです。

 

上記のような形で相続放棄をした者以外の相続人に利害が生じるのは好ましくありません。そのようなことから、相続放棄の撤回は認められていないのです。

 

一方、家庭裁判所が相続放棄の申述を受理する前であれば、取り下げることができます(家事事件手続法82条1項)。相続放棄の撤回が認められないのは、その申述が家庭裁判所で受理された後の話です。相続放棄の申述をした後、照会および回答を経て、家庭裁判所が受理するという流れで手続きが進んでいきます。

 

→ 相続放棄の申述後の手続きについてはこちら

 

上記の手続きの間であれば、取り下げすることによって、相続放棄をやめることができるのです。

 

相続放棄の申述が受理される前の取り下げ手続きは、家庭裁判所に取り下げ書を提出して行ないます。家庭裁判所に提出する取り下げ書の書式は特に決まっていません。家庭裁判所側で提供している書式を使用して作成しても、自身で任意に作成しても、どちらでもかまいません。取り下げ書を家庭裁判所に提出すると、相続放棄の取り下げが認められます。

 

【ⅱ.相続放棄の取り消しは認められる可能性もある】

 

相続放棄の撤回と似て非なるものに相続放棄の取り消しがあります。相続放棄の取り消しとは、撤回と異なり、最初から相続放棄をしなかったことにすることです。

 

相続放棄の撤回不可の規定(民919条①)は、民法の総則および親族の規定により、相続放棄の取り消しをすることを妨げないとしています(民919条②)。そのため、主に以下のようなケースで、相続放棄の取り消しを認めてもらえる可能性があります。

  • 未成年者が法定代理人の同意を得ないで相続放棄をした場合(民5条①②)
  • 成年被後見人自身で相続放棄をした場合(民9条本文)
  • 被保佐人が保佐人の同意または前記同意に代わる家庭裁判所の許可を得ないで相続放棄をした場合(民13条①6号、④)
  • 補助人の同意を要する被補助人が前記同意またはそれに代わる家庭裁判所の許可を得ないで相続放棄をした場合(民17①④)
  • 詐欺または強迫を受けたり、錯誤状態になったりした中で相続放棄をした場合(民95条、96条)

 

相続放棄の取り消しができる者は、本人、法定代理人、同意権のある者です。相続放棄の取り消しの申述手続きは、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所にします。

 

また、相続放棄の取り消しの申述期間も定められています。具体的には、追認できるときから6カ月以内、または相続放棄のときから10年以内に取り消ししなければなりません。上記期間内に相続放棄の取り消しの申述をしなければ、その権利が時効で消滅してしまいます(民919条②)。

 

【ⅲ.実際に相続放棄の取り消しを認めてもらうのは難しい】

 

法律上、一定事由に該当する場合、相続放棄の取り消しができるとされています。裁判所の判決や決定の中には、詐欺を理由に相続放棄の取り消しを認めたものが存在します。(東京高裁1952年7月22日決定)また、相続放棄にも錯誤の適用がある旨を認めた裁判例もあります。(最高裁1965年5月27日)

 

しかし、相続放棄の取り消しをするには、その原因を示す証拠を提出して家庭裁判所側に認めてもらわなければなりません。相続放棄の取り消しの原因を示す証拠を用意できないケースも多いです。

 

また、相続放棄が錯誤に当たるとされるには、その動機の勘違いが手続きの際に表示され、内容も重大なものであり、なおかつ相続放棄者にも重大な落ち度がないことが必要になります。相続財産の内容を誤って認識していたというだけでは、基本的に錯誤を原因とする相続放棄の取り消しは認められません。

 

そのようなことから、実際に相続放棄の取り消しを認めてもらうのは難しいです。

相続放棄は、原則として期間内に申述(申立)の手続きをしなければなりません。

 

→ 相続放棄の申述(申立)期限についてはこちら

 

しかし、状況によっては、期間内に相続放棄の手続きをすることが難しいときも出てきます。そのような場合、相続放棄の期間を伸長する方法で対処できるケースもあります。

 

相続放棄の期間伸長とはどのようなものなのか、その制度や手続きについて詳しく見ていきます。

 

【ⅰ.相続放棄の期間伸長とは】

 

相続放棄の期間伸長とは、本来の申述(申立)期限を長くしてもらう手続きのことです。相続発生後、相続人は被相続人の相続財産の内容を調査した上で、相続を承認するか放棄するかを決定します。しかし、状況により、相続財産の調査に長期間要するケースもあります。

 

たとえば、被相続人が生前に多数の財産を保有していたり、複数の借金を負っていたりしていた場合、その内容の調査に長期間要することも少なくありません。また、被相続人が国内の各地だけではなく、国外にも財産を保有している場合も、その内容の調査に長い期間を要するでしょう。

 

もし、上記のような状況にある被相続人の相続放棄を本来の期間内にしなければならないとしましょう。このような場合、相続財産の内容を正確に把握できない状況で手続きせざるを得なくなるケースも出てきます。それにより、適切ではない形で相続放棄をしてしまうことも考えられ、相続人にとって酷な結果となってしまいます。

 

したがって、相続財産の調査に長期間要する場合でも、相続人にとって適切な形で相続放棄ができるように、期間の伸長制度が設けられているのです。

 

【ⅱ.認められる伸長期間は通常3カ月以内】

 

相続放棄の伸長期間は、家庭裁判所の判断によって決定されます。家庭裁判所は、相続財産の所在する場所、内容、権利関係の複雑性、相続人の居住場所の遠隔性などを考慮して伸長期間を決定します。

 

申立によって認められる伸長期間は、通常3カ月以内です。それほど多くの期間伸長は必要ないと判断された場合、1カ月程度になることもあります。一方、通常より多くの期間伸長が必要と裁判所が判断した場合、3カ月以上になる可能性もゼロではありません。

 

ただ、家庭裁判所は3カ月以上の期間伸長の決定については、厳格です。そのため、相応の理由がなければ、3カ月以上の期間伸長を認めてもらえません。また、再度の期間伸長についても同様です。

 

【ⅲ.相続放棄の期間伸長申立の手続き方法と必要書類等】

 

相続放棄の期間伸長は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して申立の手続きをします。申立手続きができるのは、利害関係人、検察官です。利害関係人とは、ある法律上の行為について、当事者ではないものの法律上利害関係のある者を指し、相続人もこれに含まれます。

 

相続放棄の期間伸長の申立は、相続人ごとに認められます。また、相続放棄の期間伸長の申立は、相続放棄の申述(申立)期限内に手続きしなければなりません。

 

相続放棄の期間伸長の申立手続きをする際に必要となる書類等は、以下のとおりです。

【必要書類】

 

  • 申立書
  • 被相続人の除票または戸籍の附票
  • 被相続人の死亡の記載がある除籍謄本等
  • 申立する相続人の戸籍謄本
  • 申立人が利害関係人である場合はその旨を証明する書類

 

※  申立する相続人が、被相続人の父母や兄弟姉妹など第2、3順位の相続人である場合、先順位の相続人がいない旨を証明する戸籍謄本等の提出も必要です。

 

【申立費用】

 

  • 相続人1人につき800円(収入印紙で納付)
  • 連絡用の郵便切手(数百円程度)

相続放棄をする際、被相続人名義の自動車がある場合、その対応方法に注意が必要です。対応方法によっては、相続放棄が認められなくなってしまうケースもあります。なぜなら、被相続人名義の自動車を処分すると、状況によっては、法定単純承認事由である「相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき」に当たる行為をしたとみなされてしまう可能性があるからです。

 

→ 法定単純承認事由についてはこちら

 

相続放棄をする際、被相続人名義の自動車への対応をどのように行えばよいのか、ケース別に見ていくことにします。

 

【ⅰ.一部に相続しようとしている相続人がいる場合】

 

相続放棄をする予定の方の他、被相続人に複数の相続人の方がいたとしましょう。被相続人の相続人全員の中で、相続しようとしている相続人の方がいる場合、その方が、他の相続財産と一緒に自動車も相続します。

 

つまり、このケースでは、相続予定の相続人の方が相続する旨を承認した後、その方へ管理していた被相続人名義の自動車を引き渡せばよいことになります。

 

【ⅱ.相続人全員が相続放棄をする予定の場合】

 

相続人全員が相続放棄をする予定である場合、その手続き後、被相続人名義の自動車を相続によって取得する者がいなくなるため、どのようにすればよいのか気になるところです。この場合、被相続人名義の自動車を管理していた相続人の方は、相続放棄後もその管理を継続しなければなりません。なぜなら、相続放棄をした相続人の相続財産管理義務の規定があるからです。(民法940条①)

 

→ 相続放棄後の相続財産の管理責任についてはこちら

 

ただ、被相続人名義の自動車の管理を継続し続ければ、その分税金や駐車場代などの維持費がかかります。自身が使用しない被相続人名義の自動車を、費用をかけながら長期間管理し続けるのは非効率的です。そのため、法定単純承認事由に当たる行為をしたとみなされないように、被相続人名義の自動車を手放す形で対応することが考えられます。

 

被相続人名義の自動車に財産価値があるか否かで、その対応方法も異なります。

 

【自動車に財産価値がある場合】

 

被相続人名義の自動車に財産価値がある場合、売却による処分後、その代金を取得したり、使用したりする行為は「相続財産の処分」に当たります。そのような行為をすると、単純承認したとみなされて、相続放棄ができなくなる可能性も高くなります。

 

一方、自動車の資産価値の減少および維持費負担の増加を避ける目的で、やむを得ず、自動車を売却してその代金を保管する行為は、「相続財産の処分」に当たらないと考えられます。なぜなら、上記行為は、自動車の資産価値を維持する目的で行われているため、「相続財産の保存行為」に当たるからです。

 

相続財産の保存行為をしても、法定単純承認事由には当たりません(民921条①但書)。したがって、このような形で被相続人名義の自動車を手放せば、単純承認したことを理由に相続放棄が認められなくなることを防げる可能性も高くなります。ただ、被相続人の債権者に対してそのような事情を説明できるように、自動車を売却した際の資料などをしっかり保管しておいたほうがよいでしょう。

 

【自動車に財産価値がない場合】

 

法定単純承認事由である「相続財産の処分」とは、一般的に財産的価値のある相続財産の処分を指すとされています。そのため、被相続人名義の自動車に財産価値がない場合、廃車等の方法で処分しても「相続財産の処分」には当たらないと考えられます。

 

もし、廃車等の方法で処分する場合、事前に業者で査定してもらい、被相続人名義の自動車に財産的価値がなかった旨を証明できるようにしておいたほうがよいでしょう。

 

【ⅲ.被相続人がローンを利用して自動車を購入していた場合】

 

被相続人がローンを利用して自動車を購入しているケースもあります。この場合、ローンの種類や利用方法によって、その対応方法が異なります。

 

【販売会社経由でローンを利用していた場合】

 

販売会社経由でローンを利用していた場合、ローン完済時まで自動車の名義は販売会社となっているのが通常です。販売会社名義である限り、自動車の所有者も被相続人ではないことになります。そのため、自動車は被相続人の相続財産には含まれないため、法定単純承認事由である「相続財産の処分」に当たる行為をしたか否かが問題になることもありません。

 

自動車ローンが残っている状態で被相続人が亡くなった場合、販売会社が自動車を引き上げていきます。相続放棄を予定する相続人側としては、それに応じればよいことになります。

 

【金融機関のマイカーローンを利用していた場合】

 

被相続人が生前、金融機関のマイカーローンを利用して自動車を購入していた場合、その名義は被相続人となっています。自動車の名義が被相続人であるということは、その所有者も被相続人ということになります。

 

したがって、自動車は被相続人の相続財産に該当することになるため、その対応方法に注意を要します。

  • なお、本記事の内容は、法律の規定を下に当事務所側の見解を述べさせていただいたもので、個々のすべての事例において当てはまることを約束するものではございません。実際に上記のような状況に遭遇された場合、個別にご確認していただいた上で慎重にご対応お願い致します。

資産価値が低くて売却困難な不動産を相続すると、管理責任や固定資産税の支払い義務などを負担するだけとなって、経済的デメリットが生じるケースも少なくありません。そのため、相続財産の中に資産価値が低くて売却困難な不動産しかない場合、相続人側としては、相続放棄も選択肢の一つになります。

 

そこで、相続放棄後の相続財産である不動産の権利関係や管理義務はどのようになるのか見ていきます。

 

【ⅰ.相続放棄後の不動産の権利関係について】

 

相続人が相続放棄をすると、次順位以降の相続人が存在する場合、相続する権利はその者へ移ります。

 

たとえば、被相続人A(相続財産は不動産のみ)には、配偶者Bと子Cの他、両親のDとE(その他には被相続人Aの直系尊属はいない)、兄弟F(子はいない)がいたとします。この場合、第1順位の相続人であるBとCが相続放棄をした場合、不動産を相続する権利は、第2順位の相続人であるDとEへ移ります。さらに、DとEも相続放棄をすると、今度は第3順位の相続人であるFが不動産の相続権を得ることになります。

 

Fも被相続人Aの相続権を放棄すると、不動産の相続権を有する者が存在しなくなります。このような場合、Aの相続財産である不動産は、法人として扱われます。(民951条)法人として扱われる相続財産のことを、法律的には相続財産法人と言います。相続人が不存在となれば、特別な手続きを要することなく、相続財産法人となります。

 

相続財産が法人化された場合、その財産管理や清算手続きを担う相続財産清算人が選任されるケースもあります。被相続人に対して法律上の権利や利害関係を有している者などの申立てにより、家庭裁判所は相続財産清算人を選任します。(民952条①)選任された相続財産清算人は、清算業務を進める過程において、相続人探索を行った上で、相続財産である不動産を管理したり、換価処分後に債権者へ配当したりするなどの業務を行います。

 

また、相続人探索の公告期間の満了後、特別縁故者が財産分与の申立を行い、その者が相続財産である不動産を取得するケースもあります。(民958条の3)相続財産清算人が清算業務を行う過程で残った不動産または換価処分後の現金は、最終的に国へ引き継がれることになります。(民959条)

 

【ⅱ.相続放棄をしても不動産の管理義務を負わなければならない場合もある】

 

相続放棄をした場合、初めから相続人とならなかったものとみなされるため、不動産を相続しなくて済みます。

 

→ 相続放棄の効果についてはこちら

 

相続によって不動産の所有者にもならないため、固定資産税の支払い負担も回避できます。しかし、相続放棄をしても、不動産の管理義務を負わなければならない場合もあります。

 

2021年4月21日に民法等の一部を改正する法律案が可決成立し、改正後の法令が2023年4月1日に施行されました。上記法改正により、相続放棄をした者による相続財産の管理を規定する民法940条の内容も変更となっています。

 

改正前の民法940条は、以下のように規定されていました。

(相続の放棄をした者による管理)

改正前民法940条

  1. 相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
  2. 省略

 

法改正前においては、相続放棄によって相続人となった者(次順位相続人)が、相続財産の管理を始めることができるまで、相続放棄をした者は相続財産の管理義務を負わなければなりませんでした。

 

しかし、法改正によって、民法940条の規定は以下のとおり変更となり、相続放棄をした者の相続財産の管理義務の内容も変更されています。

(相続の放棄をした者による管理)

改正後第940条

  1. 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
  2. 省略

 

改正後の民法940条の規定では、相続放棄をした者が負うのは「管理義務」から「保存義務」に変更されています。(管理義務と保存義務の内容は、実質的な違いはないと考えられます。)また、相続放棄をした者が保存義務を負うのは、相続放棄時に相続財産を現に占有していた場合だけとされています。

 

改正前の民法940条では、相続放棄をした者が、相続財産を占有しているか否かに関わらず、管理義務を負わなければならない旨の規定になっています。しかし、相続財産を占有していない場合でも相続放棄をした者に管理義務を負わせるのは不適切です。そのため、相続放棄をした際に相続財産を占有しているときのみ、その者に保存義務を負わせる旨の内容に改正されました。

 

また、保存義務を負う期間も、「相続人または相続財産清算人に対して相続財産を引き渡すまで」に変更となっています。改正前の民法940条では、相続放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始められるまで管理義務を負う旨が規定されています。しかし、相続人全員が相続放棄をして、相続人になる者が不存在になった場合の管理義務を負う期間が不明確です。そこで、相続人全員が相続放棄をして相続人になる者が不存在となった場合、家庭裁判所で選任された相続財産清算人に相続財産を引き渡すまで保存義務を負う旨が規定されて、その期間が明確になりました。

 

民法940条の規定により、相続放棄をした者が相続財産の保存義務を負う場合、「自己の財産におけるのと同一の注意」をもって保存を行わなければなりません。「自己の財産におけるのと同一の注意」とは、自分の財産を管理する際に要する注意の程度を言います。

 

もし、相続放棄後の相続財産の保存義務を怠り、それが原因で事故が発生したり、近隣の方に被害を与えてしまったりした場合、保存義務を負う者は、被害者から損害賠償請求を受ける可能性もあるので注意が必要です。

相続発生後、相続人の方が相続の承認または放棄をする前に亡くなり、相続の権利関係が複数世代にまたがるケースも存在します。相続の権利関係が、複数世代にまたがる要因の一つに再転相続があります。

 

そこで、再転相続の詳細とその状況下における相続放棄について見ていくことにします。

 

【ⅰ.再転相続とは】

 

再転相続とは、相続発生後に相続人が相続を承認または放棄をする前に亡くなり、その者の相続人が被相続人の相続権を承継することを言います。

 

たとえば、被相続人Aの法定相続人に、配偶者Bと子Cの二名いたとします。また、Cには、配偶者Dと子Eがいたとします。Aの相続発生後、CがAの相続を承認または放棄をする前に亡くなると、DとEがCの相続人になり、Cが有していたAを相続する権利も承継します。そして、このような相続の権利承継が再転相続になります。

 

数次相続も再転相続と同様に、相続の権利関係が複数世代にまたがるケースになりますが、この二つは似て非なるものです。被相続人の相続人が相続を承認後、遺産分割協議を行う前に亡くなり、その者の相続人に相続権が承継されるのが数次相続になります。上記の例では、CがAの相続を承認後、Bと遺産分割協議を行う前に亡くなり、DとEがCを相続したケースがこれに該当します。

 

一方、CがAの相続を承認または放棄する前に亡くなるケースが再転相続にあたるため、この点が数次相続と異なります。

 

→ 数次相続の場合の相続登記についてはこちら

 

【ⅱ.再転相続が発生じた場合の相続放棄の可否】

 

再転相続が発生した場合、再転相続人は、最初の相続と二次相続の二つの相続について、承認または放棄の選択をすることになります。ⅰであげた具体例を上記に当てはめてみると、再転相続人のDとEは、AとCの二つの相続権について、承認または放棄の選択をする必要があります。

 

ただ、DとEは、AとCの相続権を無条件に承認または放棄ができるわけではありません。相続の承認または放棄の選択方法によっては、それが認められない場合もあります。

 

以下の表は、再転相続人の相続の承認または放棄の選択可否についてまとめたものになります。(ⅰであげた具体例と同様、被相続人A、相続人兼第二被相続人C、再転相続人D、Eとさせていただきます。)

Aの相続 Cの相続 D、Eの相続の承認・放棄の可否
承認 承認
放棄 放棄
放棄 承認
承認 放棄

不可

 

再転相続人のDとEは、AとCの二つの相続権を両方とも承認、放棄することが可能です。また、Aの相続権は放棄して、Cの相続権は承認するという選択もできます。

 

一方、Aの相続権を承認して、Cの相続権を放棄するという選択はできません。Aの相続の選択権は、元々Cが有していたものであり、DとEがCを相続することによって承継するものになります。もし、DとEがCの相続権を放棄した場合、Cの有していたAの相続の選択権も放棄したことになってしまいます。そのようなことから、Aの相続権を承認して、Cの相続権を放棄することは認められないのです。

 

【ⅲ.再転相続が発生した場合の相続放棄の熟慮期間】

 

相続放棄の手続きは、熟慮期間内に行わなければなりません。熟慮期間とは、相続放棄の手続きができる期間のことを言います。相続放棄は、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内」にしなければならないのが原則です。(民915条①本文)

 

→ 相続放棄の熟慮期間(申述期限)についてはこちら

 

再転相続が発生した場合でも、熟慮期間内に相続放棄の手続きをしなければならないという結論は変わりません。再転相続時における相続放棄の熟慮期間について、以下のとおり、その起算点が法律上で規定されています。

民法第916条

相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第1項(第915条第1項)の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

 

上記の規定により、「再転相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」から3カ月以内が、再転相続時の相続放棄の熟慮期間になります。「再転相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」の文言を素直に読むと、被相続人の相続人が亡くなって、再転相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月間が熟慮期間になります。

 

ⅰであげた具体例に当てはめてみると、CがAの相続を承認または放棄する前に亡くなり、それによってDとEがCの相続人になったことを知った時から3カ月間が上記に該当します。

 

ただ、この点については、2019年8月の最高裁の判例で見解が示されています。民法916条の「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、亡くなった被相続人の相続人からの相続によって、被相続人の相続を承認または放棄できる地位を、再転相続人自身が承継した事実を知った時であるという判断がなされました。

 

上記判例の見解をⅰであげた具体例に当てはめてみると、相続放棄の熟慮期間は、Cが亡くなった後、DとEが再転相続人として、Aの相続人としての地位を自身が承継した事実を知ってから3カ月以内になります。

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