遺言執行者とは、遺言の内容を実現するための各種手続きを行う者のことです。

 

遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有しています(民1012条①)。そのため、遺言者(被相続人)の相続財産の目録を作成したうえで、不動産の相続登記、預貯金や有価証券の解約、名義変更などの各種相続手続きを行った後、相続人や受遺者へ財産を引き渡すといった一連の業務を担います。

 

また、2018年(平成30年)の相続法改正により、遺言執行者の任務開始の通知義務や相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)についての遺言執行者の権限などが定められています。

→ 遺言制度に関する見直し【2018年(平成30年)相続法改正】の詳細についてはこちら
 

遺言の執行は、遺言者の相続人によってもできるので、あらかじめ遺言執行者を定めておかなくてもかまいません。しかし、相続人のなかに遺言の内容に納得できないという者がいたり、相続人間の関係が悪かったりする場合、遺言の執行業務を円滑に進められない場合も出てきてしまいます。
 

そのようなときのために、あらかじめ遺言執行者を定めておいたほうが好ましいといえます。
 

遺言執行者の選任方法は、以下の2つの方法が規定されています(民1006条①、1010条)。

  • 【遺言書で指定する】

※  遺言執行者の選任を第三者(他の者)に委託することができる旨を遺言書で指定することも可能です。

 

  • 【利害関係人(相続人、受遺者、遺言者の債権者など)の請求により、家庭裁判所が遺言執行者を選任】

法律上(民法上)、未成年者と破産者は遺言執行者になれないとされています(民1009条)。しかし、それ以外の者であれば、誰でも遺言執行者になることが可能です。そのため、実務上では、遺言書によって権利を取得する相続人や受遺者を遺言執行者に選任するケースもめずらしくありません。

相続人、受遺者、遺言者の債権者などの利害関係人が、家庭裁判所へ遺言執行者選任の申立てができるのは、以下のとおりです。 

【ⅰ.遺言執行者がないとき 】 

遺言書で遺言執行者が指定されていないとき、遺言執行者として指定された者がその就任承諾を拒否したときなどです。  

 

【ⅱ.遺言執行者がなくなったとき 】 

遺言執行者に死亡、辞任、解任などの事由が生じ、遺言執行者として業務を行う者がいなくなったときです。


また、遺言の執行業務をする際、以下のようなとき、遺言執行者がいないと手続きができなかったり、手続きが難航したりしてしまいます。 

【ⅰ.遺言執行者がいないと手続きができない場合】  

遺言書による推定相続人の廃除、遺言による認知の手続きができるのは、遺言執行者のみです。そのため、遺言書にこれらの文言がある場合、遺言執行者がいなければ、遺言の執行手続きができません。 

 

【ⅱ.遺言執行者がいないと手続きが難航する場合】  

遺言書に相続人以外の者へ不動産を遺贈する旨の文言がある場合、遺言執行者がいないときは、遺言者の相続人全員の協力がなければ手続きできません。もし、遺言者の相続人のなかに協力してくれない者がいる場合、手続きが難航してしまいます。

 

遺言書に遺言執行者の指定がないときで上記のケースに該当する場合、家庭裁判所へ遺言執行者の選任申立をしたうえで手続きを進めていく必要があります。

 

また、上記ⅱのケースに該当する場合、裁判所へ登記請求訴訟を提訴し、判決をもらったうえで手続きを進める方法もありますが、かなりの費用と手間がかかります。そのため、家庭裁判所へ遺言執行者の選任申立をしたうえで手続きを進めていくほうが効率的です。

遺言執行者選任申立の手続きは、以下の流れで進めさせていただきます。

 

①  ご依頼

お電話またはメールにてご連絡お願い致します。なお、当事務所では予約制を取らせていただいておりますので、ご相談をご希望する日時を事前に決めていただき、ご予約をお願い致します。

→ ご相談から業務完了までの流れについてはこちら

 

②  事前相談

当事務所へご来所いただき、面談にてご相談をお受けさせていただきます。その際、お手続きの流れ、必要書類、費用などについてもご説明させていただきます。

 

ご事情によりご来所していただくことが難しい場合は、出張によりご対応させていただきます。その際、お客さまのご自宅またはご指定の場所で面談をさせていただきます。

 

③   必要書類等の準備および申立書へのご署名、ご捺印

遺言執行者選任申立の手続きに必要となる書類を準備していただきます。(職権で取得可能な書類につきましては、当事務所側で収集させていただきます。)

 

また、同時並行で、遺言執行者選任申立書へ、申立をされる方(相続人、受遺者、遺言者の債権者などの方)にご署名、ご捺印していただきます。(状況により、②のご相談の際に、ご署名、ご捺印いただく場合もございます。)

 

④   お手続き費用のお預かり

遺言執行者選任申立の手続きをさせていただく前に、お手続き費用をお預かりさせていただきます。(お手続き費用のお支払いは前払いを原則とさせていただいておりますが、遺言執行者選任申立後に行う各種相続手続きも当事務所側でご対応させていただく場合、遺言執行者選任申立手続き完了後のお支払いにもご対応させていただきます。)

 

⑤   遺言執行者選任申立の手続き

お手続き費用をお預かりさせていただいた後、家庭裁判所へ遺言執行者選任申立手の続きをさせていただきます。申立て先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所になります。

 

申立てをさせていただいた後、その旨のご連絡をさせていただきます。

 

 

【遺言執行者選任申立後について】
 

遺言執行者選任申立の手続きをさせていただいた後、家庭裁判所から申立人および遺言執行者候補者へ照会書が送付されます。申立人と遺言執行者候補者が照会事項に回答し、それを家庭裁判所へ返送することになります。

 

返送された照会書が家庭裁判所に到着後、内容を確認したうえで、遺言執行者選任の審判を出すことになります。

 

遺言執行者の選任審判が出された後、選任審判書が申立人と遺言執行者に送付されます。遺言執行者は、選任審判書を利用して、遺言の執行に関する各種手続きをすることになります。

遺言執行者選任申立の手続きをする際、申立書と一緒に以下の書類を提出する必要があります。

  • 遺言者がお亡くなりになられた旨の記載のある戸籍謄本など
  • 遺言執行者候補者の住民票または戸籍の附票
  • 遺言書の写しまたは遺言書の検認調書謄本の写し
  • 利害関係を証する資料(例:親族の場合は戸籍謄本など)

 

※  「遺言者がお亡くなりになられた旨の記載のある戸籍」、「遺言書の写しまたは遺言書の検認調書謄本の写し」は、申立先の家庭裁判所に遺言書検認の事件記録が保存されている場合(検認より5年間保存されます。)、提出不要です。

 

※  事情によって、上記の他、追加で書類の提出を求められるケースもあります。

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