不動産登記関係業務

不動産登記業務に関するQ&A、当事務所で取り扱った事例などを記載させていただいております。

 

 

 

◆ 業務に関するQ&A

 

 

◆ 総則関係

 

Q1.

不動産の権利に関する登記手続きについて教えてください。

 

A1.

不動産の権利に関する登記は、対象不動産の所在地を管轄する法務局へ申請手続きしなければなりません。

 

また、登記権利者(登記手続きで権利を取得する人など)と登記義務者(登記手続きで権利を失う人など)が共同で登記申請しなければならないのが原則です。

 

それから、原則として、申請書(申請情報)と必要書類を法務局へ提出して登記手続きを行わなければなりません。

 

→ 不動産の権利に関する登記手続きの基本ルールの詳細についてはこちら

 

Q2.

不動産の権利に関する登記手続きをする場合、原則として「登記原因証明情報」を提出しなければならないと聞きました。登記原因証明情報とは、どのような書類ですか?

 

A2.

登記原因証明情報とは、申請する登記の原因となった事実または法律行為によって、その権利関係が変動したことを証明する書類になります。

 

→ 登記原因証明情報の詳細についてはこちら

 

Q3.

従来の権利証が「登記識別情報」に変わったと聞きました。登記識別情報について教えてください。

 

A3.

登記識別情報とは、不動産および登記名義人となった申請人ごとに定められる情報のことをいいます。12個のアラビア数字とアルファベットをランダムに組み合わせてできた符号が、登記識別情報として法務局から発行されます。

 

→ 登記識別情報の詳細についてはこちら

 

Q4.

自宅の権利証を紛失してしまいました。それによって権利関係や今後の手続きをするにおいて何か問題が生じますか?

 

A4.

権利証を紛失してしまった(登記識別情報を失念してしまった)場合でも、所有不動産の権利まで失うわけではないので、その点については心配ありません。

 

今後、自宅を処分する手続きを行う場合、原則として権利証(登記識別情報)が必要となります。しかし、権利証を紛失(登記識別情報を失念)してしまった場合、代替の方法での手続きが可能なので、この点についても問題ありません。

 

→ 権利証を紛失(登記識別情報を失念)した場合の問題や対応方法についてはこちら

 

Q5.

不動産の権利を移す際、権利証を紛失したときに行う代替の手続き方法について、具体的に教えてください。

 

A5.

事前通知制度および資格者代理人による本人確認情報制度を利用して手続きを行います。

 

事前通知制度とは、不動産の権利を移転する登記手続きをする際、権利証(登記識別情報)が提供されないで申請がなされた場合、その登記が登記名義人本人の意思に基づいてなされたのかを登記官側で確認したうえで登記手続きを実行する制度です。

 

資格者代理人による本人確認情報制度とは、登記手続きを代理で行う司法書士などの資格者代理人が、事前に登記名義人の本人確認を行い、その内容を記載した書類(本人確認情報)を提供して登記手続きを行う制度になります。

 

不動産売買による所有権移転の登記手続きを行う際、権利証を紛失している場合、資格者代理人による本人確認情報制度を利用するのが通常です。

 

→ 事前通知制度の詳細についてはこちら

 

→ 資格者代理人による本人確認情報制度の詳細についてはこちら

 

Q6.

不動産登記の手続きをする際、印鑑証明書の提出を求められることが多いですが、それはなぜですか?

 

A6.

印鑑証明書の提出義務を課すことによって、虚偽の登記申請がされるのを防止することができ、登記の真実性を担保することができるからです。

 

また、不動産の登記申請の際に提出された書類の真実性を担保する目的で、印鑑証明書の提出が求められるケースもあります。

 

→ 不動産登記の手続きに必要な印鑑証明書の詳細についてはこちら

 

Q7.

不動産登記の申請の際、申請書と一緒に提出する書類の原本は返却してもらえるのでしょうか?

 

A7.

原本還付の手続きをとることによって、登記申請の際に提出した書類の原本を返却してもらうことが可能です。

 

ただ、提出する書類によっては、原本還付ができないものもあります。

 

→ 原本還付の詳細についてはこちら

 

Q8.

不動産登記の申請をする際に税金はかかりますか?

 

A8.

不動産登記の申請をする際、登録免許税を納付しなければなりません。登録免許税とは、不動産や会社の登記手続きをするときなどに納付しなければならない国税です。

 

納付する登録免許税の金額や算出方法は、申請する登記の内容によって異なります。

 

→ 登録免許税の詳細についてはこちら

 

Q9.

司法書士へ登記を依頼して手続きをしてもらう場合、委任状への署名捺印は必要ですか?

 

A9.

司法書士が本人を代理して不動産登記の手続きを行う際、代理権限証明情報として本人からの委任状を提出する必要があります。そのため、登記手続きの前に、委任状へ署名捺印をしてもらうことになります。

 

→ 代理権限証明情報の詳細についてはこちら

 

Q10.

不動産を売却する際、必要となる権利証が不足している旨を指摘されました。不動産の登記手続きをする場合、権利証が複数必要となることがあるのでしょうか?

 

A10.

登記名義人が、複数回に分けて権利を取得した場合、その後に所有不動産の売却に基づく登記手続きをする際、複数の権利証が必要となります。

 

→ 複数回に分けて権利を取得した不動産を譲渡する際に必要となる登記識別情報(登記済証)の詳細についてはこちら

 

 

◆ 売買登記関係

 

Q1.

住宅を購入する際の不動産登記の手続きにおいて、登録免許税の減税を受けられると聞きました。どのような場合に登録免許税の減税を受けられるのでしょうか?

 

A1.

不動産登記の手続きの際、住宅用家屋証明書を一緒に提出すれば、登録免許税の減税を受けられます。

 

→ 住宅用家屋証明書の詳細についてはこちら

 

 

◆ 贈与登記関係

 

Q1.

所有している土地を自分の兄弟へ贈与しようと考えています。手続きの際、どのような点に注意すればよいのでしょうか?

 

A1.

土地の贈与をする場合、法律上の問題発生を回避する意味で契約書を作成しておいたほうがよいでしょう。また、贈与税、不動産取得税、登録免許税など税金面のことを考えて手続きする必要があります。

 

→ 贈与の登記をするにおいての注意事項の詳細についてはこちら

 

Q2.

自分が亡くなったときに他の人へ財産を承継させる方法に「死因贈与」があると聞きました。死因贈与とはどのようなものなのか教えてください。

 

A2.

死因贈与とは、贈与者(財産を譲り渡す人)が亡くなったときに法律的な効力が発生する贈与契約のことです。死因贈与の効力は遺贈に類似しているので、その性質に反しない限り、遺贈の規定が準用されています。

 

→ 死因贈与とその登記手続きの詳細についてはこちら

 

Q3.

長年連れ添った私の妻へ感謝の意味を込めて自宅の権利を譲り渡したいと考えています。ただ、不動産を贈与すると贈与税がかかるのではと思い、手続きをすることに躊躇しています。何かよい方法はありませんか?

 

A3.

夫婦間で居住用の不動産を贈与する場合、一定の条件を満たすことで贈与税の配偶者控除の適用を受けられる場合があります。

 

→ 贈与税の配偶者控除の詳細についてはこちら

 

Q4.

親子間で不動産を贈与する際に、贈与税の負担なしで手続きする方法はあるのでしょうか?

 

A4.

親子間で不動産を贈与する場合、相続時精算課税制度を活用することで、贈与税の負担を回避できる場合があります。

 

ただ、将来的に相続税の申告の必要があると考えられる場合、この制度を活用すると逆に納税額が多くなる可能性もあります。そのため、この点も考慮して、相続時精算課税制度を活用するか否かを決めたほうがよいでしょう。

 

→ 不動産の親子間贈与と相続時精算課税制度の詳細についてはこちら

 

 

◆ 抹消登記関係

 

Q1.

抵当権抹消登記の申請方法を教えてください

 

A1.

抵当権抹消登記は、抵当権設定者(不動産の所有名義人)と抵当権者の共同で申請手続きを行うのが原則です。

 

ただ、抵当権設定者が共有である場合や抹消登記の手続き前に亡くなっている場合、例外的な方法で申請手続きを行うことができます。

 

→ 抵当権抹消登記の申請人や申請方法の詳細についてはこちら

 

Q2.

抵当権抹消登記に必要な書類を紛失してしまいました。このようなときでも抵当権抹消登記の手続きをすることができるのでしょうか?

 

A2.

必要書類を紛失してしまった場合でも、抵当権抹消登記の手続きをすることは可能です。ただ、通常の抵当権抹消登記をするときよりも少し手続きに手間がかかります。

 

→ 手続きに必要な書類を紛失してしまった場合の抵当権抹消登記の詳細についてはこちら

 

Q3.

親から相続した土地に昭和初期に設定された「農工銀行」名義の抵当権が設定されています。この抵当権を外したいのですが、どのように手続きを進めればよいのでしょうか?

 

A3.

農工銀行は明治から昭和初期にかけて存在した金融機関で、その後みずほ銀行へ権利義務が承継されています。そのため、みずほ銀行と一緒に抵当権抹消登記の手続きを進めていくことになります。

 

→ 農工銀行の抵当権抹消登記の詳細についてはこちら

 

 

◆ 名変・更正登記関係

 

Q1.

贈与税の課税を回避するため、住宅購入の際に登記した共有持分を訂正したいと考えています。どのように手続きをすればよいでしょうか?

 

A1.

所有権の更正登記の手続きを行うことで、登記した共有持分の訂正をすることができます。

 

→ 登記持分の訂正の手続きの詳細についてはこちら

 

 

◆ その他の登記関係

 

Q1.

現在住んでいる自宅の建物が未登記となっています。このような場合、建物の登記をしておいたほうがよいのでしょうか?

 

A1.

登記をしていないと、他の人に自分の所有権を主張できなくなります。そのため、可能である限り、登記をしておいたほうが好ましいでしょう。

 

→ 未登記の建物の登記の詳細についてはこちら

 

Q2.

登記名義人が本来の所有者と異なる場合、「真正な登記名義の回復」による登記手続きで名義の訂正ができると聞きました。真正な登記名義の回復とはどのような登記手続きなのでしょうか?

 

A2.

真正な登記名義の回復とは、本来の所有者と異なる人の名義で登記がされている場合、登記名義人から本来の所有者へ直接移転する登記手続きのことをいいます。

 

→ 真正な登記名義の回復の詳細についてはこちら

 

Q3.

親の自宅をリフォームして増築する際、子である私がその資金を出しました。それにより、親が贈与税の課税対象になるという話を聞きました。親に贈与税がかからないようにするため、何か方法はありますか?

 

A3.

親名義の自宅の評価額に対する増築工事資金額の割合の所有権持分を親から子へ移転させることで贈与税の課税を回避することができます。

 

→ 増築による償金請求債務の代物弁済とその登記手続きの詳細についてはこちら

 

Q4.

相続人のなかにまだ出生していない胎児がいます。このようなときでも相続登記をすることができますか?

 

A4.

法定相続による相続登記を行い、胎児を含めた相続人全員の共有名義にすることが可能です。この場合、胎児の登記名義の表記は、「亡被相続人名妻何某胎児」となります。

 

→ 胎児を名義人とする登記手続きの詳細についてはこちら

 

Q5.

親が未成年の子と有償の取引行為をする際、どのような手続きが必要になるのでしょうか?

 

A5.

親と未成年の子との間で有償の取引行為を行う場合、利益相反となります。そのため、家庭裁判所へ申立をして特別代理人を選任してもらったうえ、その特別代理人が未成年の子を代理して親と取引行為をする必要があります。

 

→ 利益相反行為(親と未成年の子のケース)の詳細についてはこちら

 

Q6.

自身が代表取締役である会社の所有する不動産を買い取りしたいと考えています。会社と代表取締役である私が売買契約をする必要があるかと思いますが、その他、何か手続きが必要ですか?

 

A6.

会社と取締役による直接取引は利益相反行為に当たります。そのため、原則として、株主総会(取締役会を設置している会社は取締役会)の承認決議を得なければなりません。

 

→ 利益相反行為(会社と取締役のケース)の詳細についてはこちら

 

Q7.

共有不動産の解消方法の1つに持分を放棄する方法があると聞きました。具体的に教えてください。

 

A7.

不動産の共有名義人の1人がその持分を放棄すると、他の共有者へその持分の権利が帰属します。2人で不動産を共有している場合、そのうちの1人が持分の放棄をすることで、共有関係を解消することができます。

 

→ 共有者間の持分放棄の詳細についてはこちら

 

 

◆ 当事務所で取り扱った事例

 

※1.

数十年前に設定された抵当権の抹消登記手続き

 

→ 数十年前に設定された抵当権の抹消登記手続きの詳細についてはこちら

 

※2.

混同による仮登記の抹消

 

→ 混同による仮登記の抹消手続きの詳細についてはこちら

不動産登記手続きについて

不動産の登記手続きは、土地や建物などの不動産の物理的現況や権利関係が変動したりしたときなどに行います。

 

→ 不動産登記についてはこちら

 

登記手続きをすることで、その不動産の物理的現況の表示や権利関係が登記情報へ正確に反映されます。それにより、人々は登記情報から不動産に関する正確な情報を得られるようになり、安全な形で不動産取引に関する手続きができるようになるのです。

 

不動産の登記手続きにはいくつかのルールが定められていますが、それは具体的にどのようなものなのでしょうか。司法書士が取扱うことになる不動産の権利に関する登記手続きのルールについてみていくことにします。

 

 

 

@ 不動産登記の管轄

 

 

不動産登記は、登記の対象となる不動産の所在地を管轄する法務局へ申請手続きをしなければなりません。たとえば、埼玉県狭山市にある不動産の登記をする場合、さいたま地方法務局の所沢支局へ申請手続きをすることになります。

 

登記対象となる不動産が自宅から遠方にある場合、管轄の法務局の場所も遠方になるので、申請手続きをするのが難しくなるのではないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。ですが、不動産登記はオンラインや郵送の方法でも申請手続きをすることが可能です。

 

そのため、対象の不動産や管轄の法務局が自宅から遠方にある場合でも、申請手続きをする際にはとくに問題が生じることはありません。

 

→ 遠方の不動産の相続登記についてはこちら

 

 

 

A 不動産の権利に関する登記の申請形態

 

 

不動産の権利に関する登記は、登記権利者(名義人になるなど登記手続きをすることによって利益を受ける人)と登記義務者(権利を失うなど登記手続きをすることで不利益を受ける人)が共同で申請手続きをしなければならないのが原則です

 

なぜ、不動産の権利に関する登記手続きは共同申請主義が取られているのでしょうか。それは、原則として登記官には形式的な審査権しか認められていないからです。形式的審査権とは、登記申請の際に提出された申請書や添付書類などの内容のみを基準に審査できる権限のことをいいます。そのため、登記官が登記の審査をする際、通常は登記原因となる実体的な権利が現実に発生しているか否かまで調査しません。

 

このような形で登記の審査が行われると、実体的な権利関係とは異なった不真正な登記がされてしまう可能性が出てきます。しかし、登記によって利益を受ける人だけではなく、不利益を受ける人も手続きに関与させることで、不真正な登記の受理を防ぐことが可能となります。

 

不動産の権利に関する登記は、登記の真正を保つために原則として共同申請主義が取られているのです。

 

ただ、不動産の権利に関する登記のなかにも共同申請主義の例外として、単独で申請できる登記の種類も存在します。具体的には、相続登記、所有権保存登記、名変登記などがあげられます。

 

→ 相続登記についてはこちら

 

→ 所有権保存登記についてはこちら

 

→ 名変登記についてはこちら

 

 

 

B 不動産登記申請の提出書類 

 

 

不動産の権利に関する登記は、管轄の法務局へ書類を提出して申請手続きをしなければならないのが原則です。登記の申請手続きの際に提出する書類は、登記申請書とその登記手続きで求められる添付書面になります。

 

登記申請書には、登記の目的、登記の原因、申請人、手続き対象となる不動産の表示などが記載されます。また、不動産の権利に関する登記の申請手続きの際に提出する代表的な添付書面として、権利証(登記識別情報)、登記原因証明情報、印鑑証明書、住民票などがあげられます。

 

→ 登記識別情報についてはこちら

 

→ 登記原因証明情報についてはこちら

 

→ 印鑑証明書についてはこちら

登記原因証明情報とは

不動産の権利に関する登記の申請手続きを行う際、原則として登記原因証明情報を申請書と一緒に提出しなければならないと定められています。

 

そこで、登記原因証明情報とは、どのような書類なのかについてみていきます。

 

 

 

@ 登記原因証明情報とはどのような書類か

 

 

登記原因証明情報とは、申請手続きをする登記の原因となった事実または法律行為によって、その権利関係が変動したことを証明する書類です。2005年の不動産登記法改正によって、この制度が設けられました。

 

上記改正により、なぜ不動産の権利に関する登記の申請手続きを行う際、原則として登記原因証明情報を申請書と一緒に提出しなければならないとされたのでしょうか。それは、申請される登記の真正を担保するためです。

 

登記官は申請された登記の審査をする際、原則として提出された書類の内容だけをみて形式的に行います。そのため、たとえ申請された登記の内容が真実と反していても、書類上で問題がなければ、そのまま受理されてしまう可能性も出てきてしまうのです。それによって、真実に反する内容の登記がされてしまい、不動産の登記情報にも不正確な情報が記録されてしまうので好ましくありません。

 

そこで、申請される登記の正確性を確保するため、登記申請の当事者から申請する登記の原因となった事実や法律行為に関する情報を提供させることとしたのです。登記申請と一緒に提出された登記原因証明情報は、一定期間法務局に保管されて、利害関係人も閲覧可能な状態におかれます。そのため、不動産取引の安全性を確保する役割も果たしてくれます。

 

 

 

A 提出する登記原因証明情報の具体的内容

 

 

不動産の権利に関する登記を申請する際、登記原因証明情報として具体的にどのような書類を提出すればよいのでしょうか。登記を共同で申請する場合と単独で申請する場合でその内容が少し異なります。

 

 

@ 共同申請の場合

 

共同申請の場合、登記申請の当事者が作成した報告形式の登記原因証明情報を提出するのが原則です。また、不動産の売買や担保権設定などの契約をする際に作成される契約書を、登記原因証明情報として提出することもできます。

 

 

A 単独申請の場合

 

不動産の権利に関する登記を単独で申請する場合、登記原因となる事実や法律行為を証明できる公的な書類を登記原因証明情報として提出する必要があります。共同申請の場合と異なり、報告形式の書面など私署証書を登記原因証明情報として提出することはできません。

 

単独申請の場合は、共同申請とは違い、登記の申請手続きをする際に登記義務者が関与しません。そのため、登記の申請形態によってその真正を担保することができないのです。そのようなことから、公的な書類を登記原因証明情報として提出することで、申請される登記の真正担保をはかろうとしているのです。

 

→ 相続登記の登記原因証明情報についてはこちら

 

→ 遺言書による相続登記の登記原因証明情報についてはこちら

 

 

 

B 登記原因証明情報の提出が不要な場合

 

 

不動産の権利に関する登記の申請をする際、不動産登記法61条の法令に別段の定めがあるときに該当する場合は、登記原因証明情報を提出が不要となります。

 

たとえば、不動産登記法74条1項の所有権保存登記(戸建ての所有権保存登記)は、上記の法令の別段の定めに該当します。そのため、この登記の申請手続きをする場合、登記原因証明情報を提出する必要はありません。

 

また、上記の法令の別段の定めに該当するわけではありませんが、混同による権利の抹消登記を申請する場合、混同により権利関係が消滅したことが登記記録上明らかであるときは、登記原因証明情報の提供は不要です。

 

→ 混同による仮登記の抹消についてはこちら

登記識別情報について

不動産の権利に関する登記申請を行うと、その手続きによって名義人になったり、権利を得たりした人に対して登記識別情報通知書が発行されます。登記識別情報通知書に記載されている登記識別情報は、不動産の権利に関する登記において、一番重要な登記関係の情報だといっても過言ではありません。

 

そこで、登記識別情報とはどのようなものなのか、その具体的内容、管理方法や使用方法などについてみていくことにします。

 

 

 

@ 登記識別情報とは

 

 

登記識別情報とは、不動産および登記名義人となった申請人ごとに定められるアラビア数字とアルファベットが組み合わさった12桁の符号のことです。この情報の存在により、登記名義人を識別することができるようになります。それにより、登記申請がされたとき、登記名義人自身が手続きを行っているか否かを確認することが可能となるのです。

 

登記識別情報の制度は、登記原因証明情報と同様、2005年の不動産登記法改正によって設けられました。上記改正以前は、登記によって権利を取得した人に対して登記済証(権利証)が発行されていました。しかし、上記改正以降は、登記済証に代わって登記識別情報が通知されています。

 

→ 登記原因証明情報についてはこちら

 

 

 

A 登記識別情報はどのように通知されるのか

 

 

登記識別情報は、不動産および登記名義人となった申請人ごとに定められます。そのため、この情報が記載されている登記識別情報通知書は、不動産ごとに1通ずつ、登記名義人となった申請人ごとに1通ずつ発行されます。

 

たとえば、夫婦が業者から土地1筆と建物1戸を購入して、土地と建物それぞれ共有名義で登記手続きを行ったとしましょう。このような場合、夫に対して土地と建物の登記識別情報通知書が各1通ずつ発行され、妻に対しても土地と建物の登記識別情報通知書が各1通ずつ発行されます。つまり、合計4通の登記識別情報通知書が発行されるのです。

 

 

 

B 登記識別情報の管理について

 

 

発行される登記識別情報通知書そのものではなく、その書類に記載されている情報に価値があるという点が登記識別情報の大きな特徴になります。たとえ、登記識別情報通知書が本人の手元にあっても、その情報が他の人に知られてしまった場合、登記識別情報が盗まれた状態となってしまうのです。そのようなことから、登記識別情報を管理する際、登記識別情報通知書に記載されている情報が漏えいしないようにしなければなりません。

 

登記識別情報は、登記識別情報通知書の下側の部分に記載されていて、その場所には、折り込み式のカバーがつけられています。このカバーを剥がしてしまうと登記識別情報が露出した状態になってしまうので、この情報を提供しなければならないとき以外は、カバーを剥がさないで保管しておく必要があります。

 

もし、登記識別情報通知書の下側のカバーを剥がしてしまい、他の人に登記識別情報をみられ、その内容を覚えられてしまったときはどのようにすればよいのでしょうか。このような場合は、法務局に申出をして登記識別情報を失効させることで対応できます。

 

 

 

C 登記の際に提供する登記識別情報について

 

 

不動産の権利を取得した登記名義人が、他の人へ転売したり、担保権を設定したりする際、それらの登記手続きを行う場合、権利を取得したときに通知された登記識別情報を提供するのが原則です。対象の登記識別情報が提供されることで、その人が登記名義人本人であることを確認することができるからです。

 

不動産の権利取得の際に登記識別情報が通知されている場合は、その情報を提供すればよいのですが、2005年の不動産登記法改正前に不動産の権利を取得していて、登記済証が発行されているときはどのようにすればよいのでしょうか。この場合は、発行されている登記済証を提出することになります。上記改正前、権利取得の際に発行された登記済証は効力が維持されており、登記手続きの際にも使用することが可能です。

 

一方、発行された登記識別情報通知書をなくしてしまい、登記識別情報を失念してしまったり、法務局へ申出をして登記識別情報を失効させたりした場合、登記の際に登記識別情報を提供できません。このようなときは、代替手段によって手続きを行います。

 

→ 登記済証や登記識別情報をなくした場合の手続き方法についてはこちら

登記識別情報を失念した(登記済証をなくした)場合はどうするか

不動産の権利を取得した場合、登記名義人となる申請人に登記識別情報が通知されます。また、2005年の不動産登記法改正前に不動産の権利を取得した場合、その人に対して登記済証(権利証)が発行されています。

 

→ 登記識別情報についてはこちら

 

名義人となった不動産の売買や担保設定に関する登記申請において、登記義務者として手続きをする場合には、登記識別情報を提供(登記済証を提出)しなければならないのが原則です。しかし、登記識別情報を失念した(登記済証をなくした)場合には、提供または提出することができません。

 

そこで、このような場合、どのような形で手続きをすればよいのかについてみていきます。

 

 

 

@ 登記識別情報の再通知(登記済証の再発行)は可能か

 

 

不動産の権利を取得した際に通知された登記識別情報を失念した(発行された登記済証をなくした)場合、法務局から登記識別情報を再通知(登記済証を再発行)してもらうことを考える方もいらっしゃるでしょう。

 

しかし、法務局側で登記識別情報の再通知(登記済証の再発行)をすることはできません。そのため、所有する不動産の売却や担保設定に関する登記手続きに登記義務者として関与する場合、登記識別情報の提供(登記済証の提出)できないときの代替の方法を利用する必要があります。

 

 

 

A 登記識別情報を提供できない(登記済証を提出できない)ときの代替の手続き方法

 

 

不動産の所有者が、売却や担保設定に関する登記をする際に登記識別情報を提供(登記済証を提出)できない場合、以下の2つの方法を利用して手続きを行います。

 

 

@ 事前通知制度

 

事前通知制度とは、不動産登記をするにおいて、正当な理由によって登記識別情報を提供(登記済証を提出)できない場合、登記審査を行う登記官が登記義務者の本人確認をしたうえで登記手続きをすすめる制度です。

 

→ 事前通知制度についてはこちら

 

 

A 資格者代理人(司法書士など)による本人確認情報制度

 

登記識別情報を提供(登記済証を提出)できない場合、登記手続きを代理する資格者(司法書士など)が事前に登記義務者の本人確認を行い、その内容を記載した書類(本人確認情報)を提出して登記手続きを行う制度です。

 

→ 資格者代理人(司法書士など)による本人確認情報制度についてはこちら

 

 

 

B 登記識別情報の失念(登記済証の紛失)と不動産の実体的な権利への影響

 

 

登記識別情報を失念(登記済証を紛失)したことによって、所有不動産の実体的な権利に影響があるのかも気になるところです

 

まず、登記識別情報を失念(登記済証を紛失)した場合、それと同時に所有不動産の権利まで失ってしまうわけではないので、その点については心配する必要はありません。

 

それから、売買や贈与などによって不動産の権利を移転させる登記手続きをするためには、その不動産の権利を取得したときに通知された登記識別情報(発行された登記済証)だけではなく、登記名義人の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)も必要となります。

 

したがって、仮に登記識別情報(登記済証)が他の人に盗まれてしまった場合でも、直ちに不正な権利移転の登記をされてしまうことはないでしょう。

 

ただ、それでも不正な権利移転の登記がされてしまう可能性もゼロではありません。そのようなことを事前に予防したいのであれば、法務局へ不正登記防止申出の手続きをして対策をすることができます。また、登記識別情報の場合は、失効制度を利用して対策をすることも可能です。

事前通知制度

不動産の権利に関する登記申請をするにおいて、登記名義人が登記識別情報を提供できない(登記済証を提出できない)場合、その代替となる手続き方法の1つが事前通知制度です。

 

そこで、事前通知制度とはどのような手続きなのか、その制度の内容、手続き方法などについてみていくことにします。

 

 

 

@ 事前通知制度とは

 

 

事前通知制度とは、登記識別情報の提供(登記済証の提出)が必要となる登記において、これらの書類が提供(提出)されないで申請手続きがなされたとき、その登記が登記名義人本人の意思に基づいて申請されたのかを登記官側で確認したうえで登記手続きを実行するための制度です。

 

具体的には、登記識別情報が提供されない(登記済証が提出されない)で登記申請がなされた場合、登記官から申請人である登記名義人に対して「登記申請があった旨」および「その登記申請の内容が真実であると考えるのであれば、一定期間内にその旨の申出をすること」を通知します。

 

その後、申請人である登記名義人より、上記通知から一定期間内に申出がなされた場合、申請された登記が処理されることになります。

 

不動産の権利に関する登記において、登記識別情報の提供(登記済証の提出)は、申請人である登記名義人の本人確認としての機能があります。しかし、これらの書類が提出されないで登記申請がなされた場合、登記名義人の本人確認ができません。それにより、不実の登記がなされてしまう可能性がでてきてしまいます。

 

そのようなことから、事前通知制度を設けることにより、登記官側で申請人である登記名義人の本人確認を行って不実の登記がなされないようにしているのです。

 

 

 

A 登記名義人への事前通知方法

 

 

事前通知の方法によって登記手続きを進める場合、登記官は登記名義人に対して書面を送付する方法により通知します。具体的には、事前通知の方法で登記申請を行った件数ごとに事前通知書を登記名義人宛に送付します。

 

不動産の権利に関する登記の申請方法は、書面申請とオンライン申請がありますが、どちらの方法で登記の申請手続きを行った場合でも、上記の方法で事前通知がなされることになります。

 

また、事前通知書の送付先や送付方法については、登記名義人が個人であるか法人であるかによって異なります。具体的には、以下のとおりです。

 

 

@ 登記名義人が個人の場合

 

登記名義人が個人である場合、その人の住所宛に本人限定受取郵便またはそれに準ずる方法によって送付します。

 

 

A 登記名義人が法人の場合

 

登記名義人が法人である場合、原則としてその法人の主たる事務所へ書留郵便などの方法で送付します。

 

ただ、登記名義人が法人の場合で事前通知の方法によって登記手続きを行う際、その法人の代表者の住所へ事前通知書を送付する旨の希望を申出することが可能です。

 

このようなときは、法人の代表者の住所に本人限定受取郵便またはそれに準ずる方法によって送付することになります。

 

 

 

B 事前通知による登記手続きの流れ

 

 

事前通知制度を利用しての登記は、以下の流れで手続きが進んでいきます。

 

 

@ 登記識別情報(登記済証)なしで登記申請

 

事前通知制度を利用して登記をする場合、登記識別情報を提供しないで(登記済証を提出しないで)申請手続きを行います。申請書には、登記識別情報を提供できない(登記済証を提出できない)理由を記載して申請先の法務局へ提出します。

 

 

A 登記官からの事前通知書の発送

 

上記@の登記手続きを法務局で受け付けた後、登記官から登記名義人に対して事前通知書が発送されます。発送先や発送方法についてはAのとおりです。

 

 

B 登記名義人の申出

 

登記官より事前通知書が発送されてから一定期間内に、登記名義人は申請された登記の内容が真実である旨の申出をしなければなりません。申出期間は、登記官より事前通知書が発送されてから原則として2週間以内です。ただ、登記名義人の住所が外国にある場合は、4週間以内となります。

 

申出の方法は、登記の申請を書面で行ったかオンラインで行ったかによって異なります。書面申請の方法で手続きをした場合、事前通知書の下側にある申出書の回答欄に、登記名義人の名前を記載して、その横に申請書または委任状に押印した印鑑と同じ印鑑で捺印をします。その後、署名捺印をした申出書(事前通知書)を登記申請先の法務局へ返送する方法で申出を行います。

 

オンライン申請によって手続きをした場合、法務大臣の定めるところにより、登記名義人が事前通知の書面の内容を通知番号などにより特定し、申請された登記の内容が真実である旨に電子署名を行ったうえで、オンラインによってその情報を送信するという形で申出を行います。

 

 

C 申出書の受領および登記の処理、実行

 

登記名義人より返送された申出書が、登記申請先の法務局側が受領した後、登記の処理の作業を行って登記が実行されます。

 

 

 

C 前住所地への通知

 

 

登記識別情報を提供できない(登記済証を提出できない)ため、事前通知制度を利用して登記申請をする際、その登記が所有権に関するものであり、なおかつ登記義務者(登記名義人)の住所の変更登記がされている場合、原則として、その登記義務者の登記記録上の前住所への通知も行われます。

 

ただ、以下のケースに該当するときは、前住所への通知はされません。

 

@ 住所変更(更正)の登記の登記原因が行政区画若しくはその名称又は字若しくはその名称についての変更又は錯誤若しくは遺漏である場合

 

A  事前通知によって登記申請をした日が最後の住所変更(更正)登記の申請の受付年月日から3ヶ月を経過している場合

 

B 登記義務者(登記名義人)が法人である場合

 

C 資格者代理人(司法書士など)により本人確認情報の提供があり、その内容により申請人が登記義務者(登記名義人)であることが確実であると認められる場合

 

→ 資格者代理人による本人確認情報制度についてはこちら

 

 

 

D 事前通知がなされない場合

 

 

以下のケースのいずれかに該当する場合、登記識別情報を提供しない(登記済証を提出しない)で登記申請を行ったときでも、登記官より事前通知はなされません。

 

@ 資格者代理人(司法書士など)により本人確認情報が提供され、その内容を登記官が相当であると認めた場合

 

  → 資格者代理人による本人確認情報制度についてはこちら

 

A 申請情報または委任状につき、公証人から登記義務者(登記名義人)である旨を確認するために必要な認証がなされ、その内容を登記官が相当であると認めた場合

資格者代理人による本人確認情報制度

登記申請をする際、登記識別情報を提供(登記済証を提出)しなければならないときで、これらの書類を提供または提出できない場合、事前通知制度を利用して登記の申請手続きをすることが可能です。

 

→ 事前通知制度についてはこちら

 

しかし、資格者代理人による本人確認情報制度を利用すれば、事前通知制度を省略して登記の申請手続きができます。

 

資格者代理人による本人確認情報制度とはどのような制度なのか、その詳細について説明していきます。

 

 

 

@ 本人確認情報とは

 

 

登記申請をする際、登記識別情報を提供できない(登記済証を提出できない)ときに資格者代理人(司法書士など)によって提供される本人確認情報とは、申請人が登記申請権限のある登記名義人であることを確認できる事項が記載されている情報(書面)のことをいいます。

 

登記申請を代理する資格者代理人は、まず、申請人となる登記名義人と直接面談し、登記名義人であることを確認できる事項を聴取しながら本人確認を行います。その後、聴取した上記事項の内容を書面上に記載して本人確認情報を作成していくのです。

 

本人確認情報制度も、申請人となる登記名義人の本人確認を行ったうえで登記の申請手続きがなされる点では事前通知制度と共通しています。しかし、事前通知制度の場合は、登記官側で本人確認が行われるのに対し、本人確認情報制度の場合は、資格者代理人側で行われる点が異なります。

 

 

 

A 本人確認情報に記載してその情報を明らかにすべき事項

 

 

本人確認情報を提出して資格者代理人が登記申請をするには、申請人が登記申請権限のある登記名義人であることを確認できる情報を提供し、その内容を登記官から相当と認めてもらう必要があります。

 

そこで、本人確認情報制度によって資格者代理人が登記申請を行う際、以下の内容を明らかにしたうえで、本人確認情報に記載して提供しなければなりません。

 

@ 資格者代理人が申請人と面談した日時、場所、その状況

 

A 資格者代理人が申請人の氏名を知っており、なおかつ面識があるときは、その旨およびその面識が生じた経緯

 

※  申請人の氏名を知り、面識があるときとは、以下の場合を指します。

 

・資格者代理人が、本人確認情報制度を利用して登記申請するときより3ヶ月以上前に、その申請人について資格者代理人として本人確認情報を提供して登記の申請をした場合

 

・資格者代理人が本人確認情報制度によって行う登記申請の依頼を受ける以前から、当該申請人の氏名および住所を知っていて、なおかつ、その申請人と親族関係または1年以上にわたる取引関係その他安定した継続的な関係の存在がある場合

 

B 資格者代理人が申請人の氏名を知らなかったり、面識がなかったりする場合、その申請人が申請権限を有する登記名義人であることを確認するために提示を受けた本人確認書類の内容及び申請人が申請権限を有する登記名義人であることを認めた理由

 

 

 

B 本人確認の書類

 

 

資格者代理人が本人確認情報を作成して登記申請を行う際において、申請人と面識がない場合、面談のときに申請人が申請権限のある登記名義人であることを確認できるための書類の提示を受けて本人確認を行います。

 

資格者代理人が申請人と面談する際、提示を受けて確認しなければならない書類の種類は以下のとおりです。

 

@ 1種類の書類の提示を受けて確認可能な場合

 

運転免許証、個人番号カード、住民基本台帳カード、パスポートなどの顔写真付きの書類の場合、1種類の書類の提示を受ければ申請人の本人確認が可能です。

 

 

A 2種類以上の書類の提示を受けることで確認できる場合

 

国民健康保険や健康保険の被保険者証、後期高齢者医療の被保険者証、年金手帳などの各種保険証や手帳などのなかから2種類以上の書類の提示を受ければ、申請人の本人確認が可能となります。

 

この場合、提示された書類に申請人の氏名、住所、生年月日の記載がなければなりません。

 

 

B 官公庁またはそれに準ずる機関からの発行書類と組み合わせて確認できる場合

 

Aに該当する書類1通と官公庁またはそれに準ずる機関から発行される書類1通の計2通以上の書類の提示を受けることによって、申請人の本人確認ができます。

 

この場合もAと同様、提示書類に申請人の氏名、住所、生年月日の記載がなければなりません。

 

 

なお、資格者代理人が本人確認情報を作成して登記申請を行う際、本人確認情報と上記の本人確認の書類のコピーを一緒に提出して手続きするのが通常です。

不動産登記の手続きに必要な印鑑証明書

不動産の登記申請を行う際、印鑑証明書の提出が必要になるケースがあります。

 

そこで、不動産の登記申請を行う際、なぜ印鑑証明書を提出しなければならないのか、提出が必要となる場合と合わせてみていくことにします。

 

 

 

@ 不動産登記手続きに印鑑証明書の提出が必要となる理由

 

 

不動産の登記申請をする際に印鑑証明書の提出を求められるのは、虚偽の登記申請がされるのを防止して、登記の真正を担保するためです。

 

実印や印鑑証明書は、基本的に本人以外の人が自由に使用したり、取得したりすることはできません。そのため、登記書類に申請人の実印が捺印されていて、印鑑証明書が提出されていれば、申請人本人が自分の意思で手続きに関与している可能性が高いといえます。また、登記の審査を行う登記官側も、そのことを提出された書類上から形式的に確認することが可能です。それにより、申請された登記の真正も担保されます。

 

以上のようなことから、不動産の登記申請を行う際、印鑑証明書の提出を求められる場合があるのです。

 

 

 

A 不動産の登記手続きで印鑑証明書の提出が求められる場合

 

 

不動産の登記申請をする際、すべての状況で印鑑証明書の提出が求められるわけではありません。以下の場合の不動産の登記申請を行う際に提出する必要があります。

 

 

@ 所有権に関する登記をする場合

 

所有権に関する登記申請を行う際、原則として登記義務者(登記手続きで不利益を受ける人)の印鑑証明書を提出する必要があります。

 

たとえば、不動産の売買や贈与を原因とする所有権移転登記を申請する際、権利を失う売主や贈与者の印鑑証明書を提出しなければなりません。

 

  → 売買、贈与の所有権移転登記についてはこちら

 

 

A 所有権以外の権利に関する登記をする場合

 

所有権以外の権利に関する登記を申請する場合、登記識別情報を提供(登記済証を提出)できない場合、その代替の方法で手続きをする際に登記義務者(登記手続きで不利益を受ける人)の印鑑証明書の提出が必要です。

 

たとえば、抵当権抹消の登記手続きをする場合、本来であれば登記義務者となる担保権者(抵当権の名義人)の印鑑証明書の提出は必要ありません。

 

→ 抵当権抹消登記についてはこちら

 

しかし、事前通知制度を利用して抵当権抹消の登記手続きをする場合、担保権者の印鑑証明書の提出が必要となります。

 

→ 事前通知制度についてはこちら

 

また、資格者代理人による本人確認制度を利用して抵当権抹消の登記手続きをしたときも、事前通知制度を利用した場合とその結論は同じです。

 

→ 資格者代理人による本人確認情報制度についてはこちら

 

 

上記@、Aの場合で提出する印鑑証明書は、発行から3ヶ月以内ものでなければなりません。

 

 

 

B 書類の真正を担保する目的でも印鑑証明書の提出が求められる

 

 

不動産の登記申請の際に印鑑証明書の提出が求められるのは、申請人の本人確認と登記申請意思の確認をして、虚偽の登記がされるのを防止するためだけではありません。不動産の登記申請のときに提出された書類の真正を担保する趣旨で、印鑑証明書の提出が要求される場合もあります。

 

その代表例が、相続登記の際に遺産分割協議書と一緒に提出する相続人の印鑑証明書です。ただ、このときに提出する印鑑証明書は、Aの場合に提出する印鑑証明書とは異なり、発行期限の定めはありません。

 

→ 相続登記の印鑑証明書についてはこちら

登記手続きにおいて提出する書類の原本還付

不動産の登記手続きをする際、申請する登記で必要となる書類を申請書と一緒に提出しなければなりません。そのとき、申請人は原本還付の手続きをとることが可能です。

 

そこで、原本還付とはどのような手続きなのかについてみていきます。

 

 

 

@ 原本還付とその利用するメリット

 

 

原本還付とは、不動産の登記申請をするときに、提出した書類の原本を手続き終了後に返却してもらう手続きのことです。

 

不動産の登記申請をする際、必要となる書類の原本を提出しなければならないのが原則です。しかし、原本をそのまま提出してしまうと、その書類は手続き終了後も法務局で保管され、登記の申請人に対して返却されません。そのため、原則どおり原本を提出して手続きをすると、提出する書類を登記以外にも使用する予定がある場合に不都合が生じてしまいます。

 

そのようなときに原本還付の手続きを利用して手続きすれば、上記の不都合を回避できます。不動産の登記申請をする際、提出書類を原本還付してもらうことで、登記手続き終了後、その書類を他のことに使用することができます。そのため、登記の申請人は、再度同じ書類を取得するための手間や費用をかけなくて済むのです。

 

 

 

A 原本還付手続きの方法

 

 

不動産の登記申請を行うときに原本還付の手続きをとるには、まず、対象となる書類の原本を1通コピーします。

 

そして、原本のコピーに「原本に相違ない」旨と申請人の氏名を記載して、申請書または委任状への捺印に使用した印鑑と同じ印鑑で捺印をします。

 

最後に原本およびそのコピーを申請書と一緒に提出すれば、原本還付の手続きによる不動産の登記申請ができます。

 

 

 

B 原本還付ができない書類もある

 

 

不動産の登記申請を行う際、すべての提出書類を原本還付することができるわけではありません。提出書類のなかには、原本還付の手続きをとることができないものもあります。

 

不動産の登記申請をするときに提出する以下の書類は、原本還付の手続きをとることができません。

 

 

@ 申請書または委任状に捺印した申請人などの印鑑証明書

 

不動産の売買や贈与の登記申請を行う際に、売主または贈与者が提出する印鑑証明書がこれにあたります。

 

→ 売買、贈与の不動産登記についてはこちら

 

→ 不動産登記の手続きに必要な印鑑証明書についてはこちら

 

 

A 第三者の同意または承諾を証する情報(書面)に捺印した人の印鑑証明書

 

会社と役員が利益相反となる不動産取引をする際、その承認を受けたことを証する株主総会議事録(取締役会議事録)へ捺印した役員の印鑑証明書がこれにあたります。

 

→ 会社と役員の利益相反取引についてはこちら

 

 

B 登記申請のためだけに作成された委任状

 

→ 代理権限証書についてはこちら

 

登記申請以外の事項も委任内容となっている委任状は、原本還付の手続きが可能です。

 

 

C 登記申請当事者が作成した報告形式の登記原因証明情報

 

→ 登記原因証明情報についてはこちら

 

契約書などの既存の書類を登記原因証明情報として提出する場合は、原本還付の手続きが可能です。

 

 

D 資格者代理人による本人確認情報

 

→ 資格者代理人による本人確認情報についてはこちら

 

 

E 登記用に請求した固定資産評価証明書

 

不動産の所有者またはその者から委任を受けて取得した固定資産評価証明書は、原本還付の手続きが可能です。

 

 

 

C 相続登記関連の原本還付の手続き

 

 

遺産分割協議を行って相続登記の手続きをする場合、遺産分割協議書と相続人の印鑑証明書を登記原因証明情報の一部として提出しなければなりません。

 

→ 相続登記の登記原因証明情報についてはこちら

 

その際、遺産分割協議書だけではなく、相続人の印鑑証明書も原本還付の手続きをとることが可能です。この点、申請書または委任状に捺印した申請人の印鑑証明書、第三者の同意または承諾を証する情報(書面)に捺印した人の印鑑証明書の場合と取扱いが異なります。

 

また、相続登記の登記原因証明情報の一部として提出する被相続人と相続人の相続関係を証明する戸籍も、相続関係説明図を提出すれば原本を返却してもらうことが可能です。こちらは原本還付の手続きではありませんが、原本を返却してもらえる点は変わりません。

登録免許税について

不動産の権利に関する登記や会社の登記の手続きを司法書士などの専門家へ依頼する場合、報酬以外にも費用が発生することを把握しておく必要があります。なぜなら、上記の登記手続きをする際、原則として登録免許税という税金を納付しなければならないからです。

 

そこで、登録免許税とはどのような税金なのでしょうか。登記手続きの際に納付しなければならない登録免許税額の計算方法と合わせてみていくことにします。

 

 

 

@ 登録免許税とは

 

 

登録免許税とは、不動産や会社の登記手続きをするときなどに納付しなければならない国税です。

 

不動産の権利に関する登記手続きをする場合、登録免許税を納付しなければならないのが原則です。しかし、国や公共法人が不動産の権利を取得して登記名義人となるときなど一定の場合は非課税となります。

 

不動産の表示に関する登記の場合、原則登録免許税は非課税です。しかし、分筆や合筆の登記をする場合は登録免許税が課税されます。

 

登記手続きに関する登録免許税は、不動産の権利の登記の場合、原則としてその登記を受ける人が納付しなければなりません。会社の登記は、登記の申請人である会社が納付義務を負うことになります。

 

登録免許税の納付方法には、現金納付と印紙納付の2つの方法が定められていますが、登記手続きの際には、印紙納付の方法で登録免許税を納付するのが通常です。

 

 

 

A 課税標準とは

 

 

登記手続きの際に納付する登録免許税額は、課税標準をもとに算出します。課税標準とは、税額計算する際の課税対象のことです。

 

そのため、申請する登記で納付しなければならない登録免許税額を計算するためには、まず課税標準を把握する必要があります。

 

 

登録免許税算出のための課税標準は、以下のとおりです。

 

@ 不動産登記

 

相続、売買、贈与などの所有権移転登記の場合 、原則として不動産の固定資産評価額が課税標準になります。しかし、新築建物など固定資産評価額が出ていない不動産の場合、法務局で定められた認定価格をもとに課税標準を算出します。

 

→ 相続登記についてはこちら

 

→ 売買、贈与の不動産登記についてはこちら

 

抵当権や根抵当権などの担保権の設定登記の場合、債権額(根抵当権の場合は極度額)が課税標準になります。

 

各種権利の抹消登記の場合、不動産の個数が課税標準となります。

 

→ 抹消登記についてはこちら

 

 

A 会社・法人登記

 

会社の設立登記の場合、株式会社と合同会社の設立は資本金の額、合名会社と合資会社の場合は申請件数が課税標準になります。

 

→ 会社設立についてはこちら

 

役員変更、商号変更、目的変更などの各種変更登記の場合、申請件数が課税標準になります。ただ、本店移転の場合は本店の数が課税標準です。

 

→ 会社各種変更登記についてはこちら

 

 

 

B 登録免許税の計算方法

 

 

相続、売買、贈与による所有権移転登記の場合、課税標準に一定の税率をかけて計算しなければなりません。その際、課税標準に1,000円未満の端数が出たとき、その部分を切り捨てて計算します。

 

また、登録免許税を算出する際、100円未満の端数が出たときも、その部分は切り捨てて計算します。算出した登録免許税が1,000円未満になった場合は、1,000円となります。

 

 

具体例をあげて説明することにしましょう。

 

1筆の土地の相続登記をする場合(土地の固定資産評価額は765万4,300円)である場合、まず、課税標準が765万4,000円となります。

 

相続登記の登録免許税の税率は原則1000分の4です。そのため、以下の計算式で登録免許税を算出します。

 

765万4,000(課税標準)×1,000分の4(税率)=3万616円

 

そして、算出された額である3万616円の100円未満の端数を切り捨てると3万600円となり、この額が上記事例の登録免許税額となります。

住宅用家屋証明書について

不動産の権利に関する登記を申請する場合、原則として登録免許税を納付しなければなりません。

 

→ 登録免許税についてはこちら

 

申請する不動産の登記の種類によっては、納付額が高額になってしまうこともあります。しかし、登記申請の際に住宅用家屋証明書の適用が受けることができれば、その納付額の負担を軽減することが可能です。

 

そこで、住宅用家屋証明書とはどのような書類なのか、適用される登記の種類と適用要件と合わせて説明します。

 

 

 

@ 住宅用家屋証明書とは

 

 

個人住宅を新築または購入した後、その住宅を個人の居住用にしたとき、一定の要件を満たすことで、その所有権や抵当権に関する登記手続きを行う際、登録免許税の軽減を受けられます。

 

上記の登記手続きをする際、登録免許税の軽減を受けるための書類を提出しなければなりませんが、その書類が住宅用家屋証明書です。

 

住宅用家屋証明書は、新築または取得した居住用建物の所在地にある市区町村役場で取得することが可能です。申請書と必要書類を提出したうえで手数料(1,300円)を支払うことにより、住宅用家屋証明書を発行してもらえます。

 

 

 

A 適用される登記とその軽減額

 

住宅用家屋証明書によって登録免許税を軽減できる登記は、@の場合の所有権保存登記、所有権移転登記と住宅取得資金の貸付等の抵当権設定登記です。

 

具体的な軽減額は、以下のとおりです。

 

 

@ 所有権保存登記

 

固定資産評価額×1000分の4 → 固定資産評価額×1000分の1.5

 

※  新築の場合で評価額がない場合は、法務局が定めた認定価格によります。

※  長期優良住宅の場合は1000分の1になります。

 

 

A 所有権移転登記

 

固定資産評価額×1000分の20 → 固定資産評価額×1000分の3

 

※  長期優良住宅の場合は1000分の1になります。

※ 個人が宅建業者から特定の増改築などが行われた中古住宅を取得した場合は1000分の

  1になります。

 

 

B 抵当権設定登記

 

債権額×1000分の4 → 債権額×1000分の1

 

 

 

B 住宅用家屋証明書の主な適用要件

 

 

住宅用家屋証明書を取得するには一定の要件を満たす必要がありますが、主な適用要件は以下のとおりです。

 

@  個人が自己の居住の用に供する家屋であること

 

A 家屋の床面積が50u以上であること

 

B  個人が新築または取得(売買または競落)してから原則1年以内に登記を受けること

 

C 区分建物の場合は、耐火建築物、準耐火建築物(新築の場合は国土交通大臣が耐火性能を有するものと定めた低層の集合住宅も含みます)であること

 

D 中古建物の場合は、取得の日以前20年(鉄骨造、鉄筋コンクリート造などは25年)以内に建築された家屋または耐震基準に適合する証明を受けた家屋であること

未登記の建物の登記

建物の権利を取得したとき、登記名義を自分のものにするために登記手続きを行います。しかし、建物の権利を取得したにもかかわらず、登記がされていないケースもめずらしくありません。金融機関からの融資を受けないで建物を新築したり、建物の新築後、車庫や物置をあらたに建築したりしたときなど、その傾向がよくみられます。

 

そこで、建物が未登記の状態になっている場合、登記をしたほうがよいのかについてみていくことにします。

 

 

 

@ 登記をしておいたほうが好ましい

 

 

未登記の建物がある場合、登記をしておいたほうが好ましいです。建物の登記がされていない場合でも、その所有者が所有する権利までなくなってしまうわけではありません。しかし、登記をしておかないと、「この未登記建物は自分の所有者である」ということを他の人に主張できないというデメリットがあります。

 

また、不動産の権利に関する登記は、所有者に申請義務はありませんが、表示に関する登記は違います。建物の表題登記の場合、「新築した建物または区分建物以外の表題登記のない建物を取得した者は、その所有権を取得した日から1カ月以内に申請しなければならない」と不動産登記法(47条1項)で定められているのです。

 

不動産登記法で定める申請義務に違反した場合、10万円以下の過料の対象となるという規定もあります。実際には過料を受けないケースが大半ですが、だからといって申請義務に違反するのはよいとはいえません。

 

このようなことから、可能な状況であれば登記をしておきたいところです。

 

 

 

A 登記をしなければならない場合

 

 

以下の状況にある場合、未登記の建物の登記手続きをしなければなりません。

 

 

@ 未登記の建物を担保に入れて融資を受ける場合

 

銀行などの金融機関が不動産を担保に資金を融資する場合、基本的にその担保不動産に抵当権を設定します。抵当権の設定登記をするには、その不動産の所有権の登記がなければなりません。そのようなことから、建物が未登記である場合、登記をしなければならないのです。

 

 

A 未登記の建物を売却する場合

 

不動産の売買をする場合、買主の権利を保全するため、登記名義を買主に移す登記手続きをするのが通常です。しかし、そのためには、売買による所有権移転登記をするときまでに売主の登記名義になっていなければなりません。したがって、未登記の建物を売却するには、あらかじめ登記をしておく必要があるのです。

 

 

B 建物の敷地が借地である場合

 

借地上に建物がある場合、登記がなければ借地権を地主以外の人に主張することができません。そのようなことから、この場合も未登記の建物の登記が必要になります。

 

 

 

B 未登記の建物の登記手続き

 

 

未登記の建物は、登記記録がまだおこされていない状態にあります。そのため、まず表示に関する登記手続きを行ったうえで、権利に関する登記の手続きをしなければなりません。

 

具体的には、建物の登記記録の表題部をおこすために「建物の表題登記」をした後、権利部の甲区に「所有権保存登記」をすることになります。

 

→ 所有権保存登記の手続きについてはこちら

 

未登記の建物(戸建ての場合)の建物表題登記と所有権保存登記は、その建物の所有者が申請人となって手続きを行います。

 

また、未登記の建物(戸建ての場合)が相続物件である場合、相続した相続人が申請人となって建物表題登記と所有権保存登記をすることになります。

 

 

 

C 所有している未登記の建物の調べ方

 

 

所有している建物が未登記の状態であるか否かを把握していない方も少なくありません。所有している建物が未登記の状態にあるのか否かを調べるには、どのようにすればよいのでしょうか。

 

まず、未登記の建物の所在地にある役所で、固定資産評価証明書と名寄帳を取得します。その後、固定資産評価証明書と名寄帳に記載のある建物を指定して、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得します。

 

そこで、登記事項証明書を取得できない建物がある場合、それが未登記の建物になります。

 

また、固定資産評価証明書や名寄帳に未登記の建物が記載されている場合、その建物の登記面積は0uで家屋番号もないので、この2点によっても確認が可能です。

贈与の登記をするにおいての注意事項

夫婦や親子の間で不動産を贈与しようと考えるケースもめずらしくありません。不動産を贈与する場合、贈与者(財産を譲り渡す人)から受贈者(財産を譲り受ける人)へ「贈与」を原因とする所有権移転登記を行います。

 

→ 贈与の登記についてはこちら

 

ただ、不動産の贈与登記をする際、契約などの法律上の面と税金面において注意しなければなりません。具体的にどのような点に注意をすればよいのでしょうか。

 

 

 

@ 不動産の贈与登記をする際には贈与契約書を作成したほうがよい

 

 

贈与者と受贈者の間で不動産を無償で譲り渡す旨の合意が整えば、それだけで贈与契約が成立します。しかし、不動産を贈与する場合、贈与契約書を作成したほうが好ましいでしょう。なぜなら、贈与契約書を作成しておくことで、法律上の面や税金面において、問題の発生を回避できるからです。

 

贈与契約書を作成するメリットとして、具体的に以下のような点があげられます。

 

 

@ 贈与契約書を作成しておけば当事者間で契約成立後に契約を解除できなくなる

 

書面を作成しないで贈与を行った場合、当事者間で契約上の履行が終わった部分を除き、解除(2017年の債権法改正前の民法では撤回)することができると定められています。そのため、契約書を作成していないと、成立した贈与契約が解除されてしまう可能性があります。

 

しかし、贈与契約書を作成して書面による不動産の贈与をすることで、契約成立後に当事者間で契約解除ができないようにすることが可能となるのです。

 

 

A 贈与契約に関する当事者間のトラブルを防ぐことができる

 

口頭だけで贈与契約をした場合、当事者間で契約条項を明確にすることができません。そのため、当事者間で契約内容に関するトラブルになってしまう可能性もあります。

 

ですが、贈与契約を締結する際、贈与契約書を作成しておけば、当事者間でその契約条項を明確にできます。そのため、契約内容に関するトラブルの発生を防ぐことができるのです。

 

 

 

A 不動産の贈与登記の際に考慮する必要のある税金

 

 

不動産の贈与登記を行う際、その手続きによって発生する、または発生する可能性のある税金について考慮しなければなりません。なぜなら、贈与する不動産の金額によっては、発生する税額も高額となり、予想外の出費を強いられることもあるからです。

 

不動産の贈与登記の手続きをするまえには、以下の税金についての考慮が必要です。

 

 

@ 贈与税

 

贈与税とは、個人の相手から財産をもらった人に対して課税される税金です。

 

贈与税は、原則として暦年課税によって課税されます。暦年課税とは、ある人が年間(1月1日から12月31日の間)に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額である110万円を差し引いた金額に課税する方式のことです。

 

そのため、数百万円から数千万円単位の額の不動産を贈与すると、贈与税の課税対象になることも多く、さらには高額な税金が発生してしまうこともあります。

 

贈与税の配偶者控除や相続時精算課税制度を活用することで、贈与税の発生を回避できるケースもありますが、それぞれ適用要件が定められています。

 

→ 贈与税の配偶者控除についてはこちら

 

→ 相続時精算課税制度についてはこちら

 

したがって、不動産の贈与登記の手続きをするまえに、税務署に問い合わせをしたり、税理士さんへ相談したりして、贈与税の対象になるか否かの確認をしておいたほうがよいでしょう。

 

 

A 不動産取得税

 

不動産取得税とは、不動産の権利を取得した人に対して課税される税金です。具体的には、売買、贈与、交換などで不動産の権利を取得した場合、この税金の課税対象となります。一方、相続によって不動産の権利を取得したときは、この税金の課税対象外です。

 

不動産の権利を贈与によって取得すると、軽減や免除対象にならない限り、原則として不動産取得税が課税されてしまいます。そのため、不動産の贈与登記を行う際にも、どのくらいの税額になるのかをしっかり把握しておく必要があります。

 

 

B 登録免許税

 

贈与の登記に限らず、不動産の権利に関する登記手続きをする場合、原則として登録免許税を納付しなければなりません。

 

→ 登録免許税についてはこちら

 

不動産の贈与登記をする場合に発生する登録免許税額は、課税標準の額の2%となります。たとえば、贈与登記の対象不動産の固定資産評価額が1000万円だったとしましょう。この場合、20万円の登録免許税を納付しなければなりません。

 

登録免許税は、贈与税や不動産取得税とは違い、必ずおさめなければならない税金となります。そのため、不動産の贈与登記を行うまえに、納付しなければならない登録免許税の額を把握しておいたほうがよいでしょう。

代理権限証明情報について

不動産登記を行う場合、司法書士などの専門家へ依頼して手続きをするのが一般的です。その際、本人に代わって登記申請を行う司法書士は、申請書と一緒に代理権限証明情報を提出することになります。

 

そこで、代理権限証明情報とはどのようなものなのか、具体的にみていくことにします。

 

 

 

@ 不動産登記手続きの代理権限証明情報とは

 

 

不動産の登記申請を行う際に提出する代理権限証明情報とは、登記申請代理権の存在を証明する情報(書類)のことです。司法書士が本人から不動産登記申請の委任をされた場合、手続きの際に代理権限証明情報として委任状を提出します。

 

また、未成年者や成年被後見人などの制限行為能力者が登記申請人となるとき、その法定代理人が代わりに手続きを行うのが通常です。この場合、未成年者の親(親権者)や成年後見人は、法定代理権を証明できる戸籍謄本や成年後見登記事項証明書を代理権限証明情報の一部として提出しなければなりません。

 

代理権限証明情報として提出する書類であって、市区町村、登記官その他公務員が職務上作成したものである場合、発行から3ヶ月以内のものでなければなりません。したがって、戸籍謄本や成年後見登記事項証明書を代理権限証明情報の一部として提出する場合、発行から3ヶ月以内のものを準備する必要があります。

 

一方、会社などの法人が申請人となって不動産の登記手続きを行う場合、法人の代表者の資格を証明できる書類の提出は原則不要となっています。なぜなら、不動産登記令、不動産登記規則等の一部が改正されて、2015年11月2日より、不動産登記の申請人となる法人が「会社法人等番号」を提供すれば、資格証明書(会社の履歴事項証明書、代表者事項証明書など)の提出を省略できるようになったからです。

 

→ 法人が申請人となる不動産登記手続きの添付情報の変更についてはこちら

 

 

 

A 委任状への記載事項について

 

 

不動産登記手続きの代理権限証明情報として提出する委任状には、本人が司法書士へ依頼する登記手続きの内容が記載されます。具体的には、登記申請にかかる登記事項、登記申請の当事者、対象となる不動産の表示、委任の年月日などです。

 

また、不動産の登記申請の際に提出する登記原因証明情報の記載事項から、委任する登記手続きの範囲が明確になっている場合があります。このようなときは、登記原因証明情報の記載事項を援用して、委任状の記載事項の一部を省略することが可能です。

 

→ 登記原因証明情報についてはこちら

 

 

 

B 登記手続きの委任者本人が亡くなったり、法人の代表者に変更があったりした場合

 

 

本人が司法書士へ登記申請の依頼をした後、実際に手続きするまで期間があくケースもあります。その間に申請人となる本人が亡くなったり、法人の代表者が変更になったりする可能性もゼロではありません。

 

そこで、上記のような状況になった場合、申請人側からの不動産登記申請の依頼によって生じた司法書士の代理権の効力はどのようになるのでしょうか。

 

民法の規定では、本人が亡くなると代理権は消滅するとされています。しかし、不動産登記法には、登記申請代理権の不消滅に関する規定が設けられているので、不動産登記申請の依頼後、手続き前に本人が亡くなっても登記申請の代理権は消滅しません。そのため、司法書士は本人からの委任状を使用して登記手続きをすることが可能です。

 

また、登記申請人である法人の代表者が変更したときも、上記と結論は同じになります。

登記持分の訂正の手続き

不動産の権利に関する登記手続きをする際、名義人を2人以上の共有にする場合、持分を登記することになります。しかし、その後、登記した持分の訂正が必要となることがあります。

 

なぜ、そのようなことをしなければならないのでしょうか。登記持分の訂正をしなければならない理由とその手続き方法についてみていきます。

 

 

 

@ 登記の持分を訂正しなければならない理由

 

 

一度共有名義で登記した後、その持分の訂正が必要となるのは、共有名義人が贈与税の課税対象となってしまう可能性があるときです。

 

夫婦間でお金を出し合って不動産を購入する場合、夫婦が各自提供した購入資金の割合に応じて共有持分の登記をしなければなりません。

 

たとえば、2000万円のマイホームを夫婦共同で購入するとしましょう。その際、夫が1500万円、妻が500万円の資金提供をする場合、登記する持分は夫4分の3、妻4分の1にする必要があります。

 

しかし、上記のケースで夫2分の1、妻2分の1の持分で登記してしまうと、妻は500万円の資金しか提供していないのに、1000万円分の不動産を取得したことになってしまいます。それにより、妻は差額の500万円分の資金を夫から贈与を受けたと扱われて、税務署側から贈与税の課税対象と判断されてしまう場合があるのです。

 

そのようなことから、贈与税の課税を回避するため、夫婦間で提供した購入資金の割合に応じた登記持分に訂正する必要性が生じるのです。

 

 

 

 A 所有権更正登記によって訂正する

 

 

共有名義の持分を訂正するには、所有権更正登記の手続きによって行います。所有権更正登記とは、登記された内容の一部に当初から誤りがある場合、その内容を訂正するための登記手続きのことです。

 

所有権更正登記の手続きをするには、訂正する前後で登記内容の一部に同一性がなければなりません。登記持分の訂正をする場合、持分の割合に誤りがあるだけで、共有名義人の住所や氏名は同じです。そのため、登記内容の一部に同一性があるといえ、所有権更正登記によって持分を訂正する手続きができます。

 

 

 

B 所有権更正登記の手続き方法

 

 

所有権更正登記は、権利を得る人と権利の一部を失う人だけではなく、訂正の内容によっては、前の所有者の協力を得て手続きをしなければならないケースもあります。しかし、登記持分の訂正を目的とする所有権更正登記の場合、持分の変動が生じる共有名義人のみで手続きが可能です。

 

また、共有名義の不動産全体に抵当権が設定されている場合、その共有名義人の持分を訂正する目的で所有権更正登記を行うときは、抵当権者の承諾を得る必要もありません

 

不動産全体に抵当権が設定されている場合、単独名義から共有名義へするための所有権更正登記を行うと、設定されている抵当権の効力の及ぶ範囲が縮減されてしまいます。そのため、不利益を受ける抵当権者の承諾を得なければ、所有権更正登記はできません。

 

しかし、共有名義人の持分のみが変更となる場合、不動産全体に設定されている抵当権の効力の及ぶ範囲は変わりません。そのため、抵当権者に不利益は生じないので、所有権更正登記の手続きの際にもその承諾を得る必要はないのです。

真正な登記名義の回復について

登記名義が実体上の権利関係に反映していないとき、それを訂正する登記手続きを行います。登記名義を訂正する手続き方法はいくつかありますが、そのなかの1つに「真正な登記名義の回復」による登記手続きがあります。

 

そこで、真正な登記名義の回復とはどのような登記手続きなのかをみていくことにします。

 

 

 

@ 真正な登記名義の回復とは

 

 

真正な登記名義の回復による登記とは、本来の所有者以外の人の名義で登記がされている場合、その人から本来の所有者へ名義を移転させる登記手続きです。

 

たとえば、登記上ではAからBへ贈与を原因とする所有権移転登記がなされているものの、実際にAから贈与を受けたのはCだったとしましょう。この場合、真正な登記名義の回復の登記によって、BからCへ直接名義を移転させて訂正することが可能です。

 

不動産登記は、本来実体上の権利変動の過程を忠実に公示させて手続きするのが原則です。そのため、上記の場合であれば、B名義の登記を抹消してA名義にしたうえで、再度Cへ贈与による所有権移転登記をすることになります。

 

→ 贈与による所有権移転登記についてはこちら

 

しかし、原則どおりに登記手続きをするには、贈与者であるAの協力が必要になります。贈与をしてから長い期間が経過している場合、Aの協力を得られないケースも少なくありません。そのような場合、真正な登記名義の回復によってBからCへ名義を移転させる登記手続きを行うのです。

 

真正な登記名義の回復による登記は、実体上の権利変動の過程を忠実に公示させるという不動産登記の原則の例外にあたる手続き方法だといえます。

 

 

 

A 真正な登記名義の回復の登記手続き方法と必要書類

 

 

真正な登記名義の回復の登記は、名義人になる人と現在の名義人の共同申請の形で手続きを行います。@の事例の場合、登記申請人はBとCです。

 

真正な登記名義の回復の登記は、原則として以下の書類を申請書と一緒に提出して手続きしなければなりません。

 

 

・  登記原因証明情報

 

→ 登記原因証明情報についてはこちら

 

・  Bの登記識別情報または登記済証

 

→ 登記識別情報についてはこちら

 

・  Bの印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)

 

→ 不動産登記の手続きに必要な印鑑証明書についてはこちら

 

・  Cの住民票の写し

 

・  司法書士などの代理人に手続きを依頼する場合はBとCの登記委任状

 

→ 代理権限証明情報についてはこちら

 

 

 

B 真正な登記名義の回復による移転登記の利用は難しくなっている

 

 

2005年の不動産登記法が改正される前においては、申請書副本を一緒に提出すれば手続きできたので、比較的容易にこの方法で登記することが可能でした。しかし、2005年の不動産登記法改正後は、不動産の権利に関する登記申請を行う際、原則として登記原因証明情報を提出しなければならなくなりました。

 

→ 登記原因証明情報についてはこちら

 

そのため、2005年の不動産登記法改正前に比べると、この方法による登記手続きの利用が難しくなっています。

 

真正な登記名義の回復による登記手続きをする際、登記原因証明情報には、現時点でなされている登記は無効である旨実体上の所有者の権利を明らかにする事実を記載するだけではなく、真正な登記名義の回復の登記によって手続きをしなければならない合理的な理由を記載しなければなりません。

 

そのようなことから、状況によっては申請当事者の権利関係を明確にするための調査も必要となるので、容易に登記手続きができなくなっているのです。

複数回に分けて権利を取得した不動産を譲渡する際に必要となる登記識別情報(登記済証)

不動産の売買や贈与を原因とする登記手続きを行う場合、原則として売主や贈与者が権利を取得したときの登記識別情報を提供(登記済証を提出)しなければなりません。

 

→ 売買・贈与による不動産登記についてはこちら

 

そこで、複数回に分けて権利を取得した不動産を売買したり、贈与したりする際、登記手続きをするにおいて、どの登記識別情報を提供(登記済証を提出)しなければならないのかについてみていきます。

 

 

 

【事例】

 

 

2000年8月1日にAB夫婦が不動産を購入して、持分2分の1ずつの共有名義で登記しました。

 

その後、2019年9月1日にAが亡くなったので、Aの相続人である配偶者Bへ上記不動産のA名義の持分を移転させるために相続登記の手続きをしました。(登記申請日は2019年10月1日)

 

そして、Bが住み替えのために引っ越しをすることになったので、上記不動産を他の人へ売却することになりました。

 

その際、売買による所有権移転登記を申請するためにBはどの登記識別情報を提供(登記済証を提出)しなければならないのでしょうか。

 

 

 

【答え】

 

 

売買による所有権移転登記を行う場合、登記義務者である売主がその不動産の権利を取得したときに発行されたすべての登記識別情報を提供(登記済証を提出)しなければなりません。

 

売主であるBは、2000年8月1日に不動産を購入した際、持分2分の1の権利を取得しています。また、2019年10月1日にAの死亡に基づく相続登記を行い、Aの持分である2分の1の権利を取得して単独所有者となりました。

 

そのため、2000年8月1日に登記申請をしたときに発行された登記済証(2005年の不動産登記法改正前であるため、登記識別情報制度はまだ設けられていません。)と2019年10月1日に登記申請をしたときに発行された登記識別情報両方必要となるのです。

 

上記2つのうち、どちらか1つを紛失または失念してしまった場合、登記識別情報を提供(登記済証を提出)できないときの代替の方法で登記手続きしなければなりません。

 

→ 事前通知制度についてはこちら

 

→ 資格者代理人による本人確認情報制度についてはこちら

手続きに必要な書類を紛失してしまった場合の抵当権抹消登記

住宅ローンを完済した場合、借入先の金融機関が設定した抵当権も消滅することになります。それにより、住宅ローンの借入に基づいて設定された抵当権の登記も外すことが可能となり、金融機関から抵当権抹消登記の手続きをするための必要書類を発行してもらえます。

 

しかし、金融機関から書類を発行してもらったものの、つい抵当権抹消登記の手続きを後回しにしてしまい、そのまま長い期間手続きをしないで放置してしまうこともあります。その後、抵当権抹消の登記手続きをしなければならない状況になり、手続きをしようと考えても、当時発行してもらった書類をなくしてしまったというのもよくある話です。

 

そこで、上記のように手続きに必要な書類を紛失してしまった場合、どのように抵当権抹消の登記手続きをするのかみていきます。

 

 

 

@ 抵当権抹消登記の手続き書類を金融機関から再発行してもらう

 

 

抵当権抹消の登記手続きをする際、以前発行してもらった必要書類を紛失してしまった場合、金融機関へ書類の再発行手続きの依頼をします。書類の再発行の依頼は、原則として当事者本人自身で行わなければなりません。

 

依頼を受けた金融機関は、当事者本人の住宅ローンの利用実績や完済状態にある旨を確認したうえで、書類の再発行の手続きをしてくれます。

 

再発行の手続き開始後、数週間程度で書類を準備してくれるのが通常です。抵当権抹消の登記手続きに必要な書類がすべて整った場合、当事者本人が金融機関の店舗まで出向いて書類を受領することになります。

 

 

 

A 再発行してもらえる書類とできない書類がある

 

 

抵当権抹消の登記手続きをする場合、一定の書類を申請書と一緒に提出しなければなりません。

 

→ 抵当権抹消登記に必要な書類についてはこちら

 

そして、金融機関側は、抵当権抹消の登記手続きに必要な書類をすべて再発行してくれるわけではありません。再発行してもらえる書類と再発行できない書類があります。

 

抵当権解除証書などの登記原因証明情報金融機関側の登記委任状などの書類は再発行してもらえます

 

→ 登記原因証明情報についてはこちら

 

→ 代理権限証明情報(登記委任状)についてはこちら

 

しかし、抹消対象の抵当権の設定登記をしたときに発行された登記識別情報または登記済証(登記済の赤い判がある抵当権設定契約書など)は再発行してもらえません

 

→ 登記識別情報についてはこちら

 

 

 

B 書類を紛失した場合の抵当権抹消の登記手続き方法

 

 

抵当権抹消の登記申請をする際、抹消対象の抵当権の設定登記がされたときに発行された登記識別情報を提供(登記済証を提出)しなければならないのが原則です。

 

しかし、抵当権抹消登記の手続きに必要な書類を紛失してしまい、金融機関に再発行の手続きをしてもらっても、登記識別情報または登記済証を再発行することはできません。そのようなことから、登記識別情報を提供(登記済証を提出)できないときの代替の方法によって、抵当権抹消の登記手続きをする必要があります。

 

→ 登記識別情報を失念(登記済証をなくした)ときの登記手続き方法についてはこちら

 

上記の代替の手続き方法には、事前通知制度と資格者代理人による本人確認情報制度があります。

 

→ 事前通知制度についてはこちら

 

→ 資格者代理人による本人確認情報制度についてはこちら

 

抵当権抹消登記の場合、事前通知制度を利用して手続きするのが一般的です。

 

また、抵当権抹消登記を事前通知制度または資格者代理人による本人確認情報制度を利用して手続きする場合、抵当権者である金融機関側の登記委任状には、実印が捺印されていなければならないので注意が必要です。

 

そのため、事前通知制度または資格者代理人による本人確認情報制度を利用して抵当権抹消登記を申請する際、金融機関の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)も提出しなければなりません。

 

→ 不動産登記の手続きに必要な印鑑証明書についてはこちら

 

金融機関の印鑑証明書は、抵当権抹消登記の必要書類の再発行手続きの際、一緒に用意してもらえます。

数十年前に設定された抵当権の抹消登記手続き

金融機関から発行を受けた抵当権抹消書類を紛失した場合でも、抵当権抹消登記の手続きはできますが、通常よりも少し手間がかかります。

 

→ 手続きに必要な書類を紛失してしまった場合の抵当権抹消登記についてはこちら

 

抵当権抹消登記の必要書類を紛失してしまう原因は人それぞれですが、そのなかでも住宅ローンを完済した後、抵当権抹消登記の手続きをしないまま長期間が経過し、発行された書類がどこかにいってしまったというケースが多いです。

 

当事務所においても、そのような状況にある方からご相談があり、実際に手続きさせていただいたケースがいくつかありますが、その事例の1つを紹介させていただきます。

 

 

 

【事例】

 

 

夫が亡くなり、夫名義の不動産を妻へ相続登記をして欲しいというご依頼があり、手続きをさせていただくため登記情報を確認したところ、以下の名義で抵当権が1つ設定されていました。

 

 

住 所   東京都品川区西五反田一丁目3番8号

 

抵当権者  ファミリー信販株式会社

 

(1983年に抵当権設定)

 

 

こちらの業者からの借入はかなり前に完済しており、抵当権抹消登記の手続きだけされていないという状況でした。

 

そのため、上記の抵当権の抹消登記も、当初ご依頼いただいた相続登記といっしょに手続きさせていただくことになりました。(ご依頼の受託は2013年度)

 

 

 

【当事務所でのお手続き】

 

 

抵当権抹消登記のお手続きをさせていただくためには、金融機関から発行してもらった書類が必要となります。そのため、借入を完済されたときに金融機関より発行してもらった抵当権抹消登記書類を探していただきました。その結果、登記済の判のある抵当権設定契約書だけ発見していただくことができました。

 

登記済の判のある抵当権設定契約書は、抵当権者側の登記済証にあたります。そのため、抵当権者である金融機関にその他の書類を再発行してもらえば、手続きが可能という状態であることがわかりました。

 

→ 登記済証がないときの登記手続き方法についてはこちら

 

上記ご依頼の抵当権抹消の登記手続きをさせていただくためには、まず抵当権者であるファミリー信販側に登記済証(登記済の判のある抵当権設定契約書)以外の書類を再発行してもらう必要があります。そのため、まずこの業者がどのような状態なのか調査させていただきました。

 

調査の結果、ファミリー信販は、オリックスクレジット株式会社へ社名を変更していたことがわかりました。その後、抵当権抹消登記の書類の再発行手続きについて、オリックスクレジット株式会社のローン担当者の方に連絡しました。

 

担当者の方からは、設定されている抵当権が把握できる登記情報を送っていただき、ご依頼者の借入や完済に関する履歴を確認できれば、ご対応する旨の回答をいただきました。ただ、抵当権抹消登記の書類は当事務所側で作成したものにオリックスクレジット株式会社側が署名捺印をして書類を返送するという形にしてほしいとのことでした。

 

相手の金融機関が銀行などの場合、当事者本人からのご連絡がないと、抵当権抹消登記の書類の再発行に応じてくれないケースも少なくありません。ですが、この業者は当事務所からのご連絡だけで対応してもらえたので、その点はスムーズに手続きを進めることができました。

 

当事務所側でファミリー信販名義の抵当権が設定されている登記情報を送った後、オリックスクレジット株式会社側から借入と完済の履歴の確認がとれた旨の連絡がありました。その連絡を受けて、当事務所側で作成した抵当権抹消登記の書類を送付し、その数日後に署名捺印していただいた書類を含む抵当権抹消登記の書類一式を送っていただきました。

 

そして、相続登記の申請の準備が完了した後、一緒に登記手続きをさせていただき、無事ファミリー信販名義の抵当権を外すことができました。

農工銀行の抵当権抹消登記

農地の相続登記の手続きのご依頼を受ける際、その対象不動産に農工銀行名義の抵当権が設定されているケースが散見されます。通常の抵当権抹消登記であれば、手続きをする際、それほど困難が生じることは基本的にありません。

 

→ 抵当権抹消登記の手続きについてはこちら

 

ですが、農工銀行の抵当権は、明治、大正、昭和初期くらいの年月日で設定されています。そのため、どのように抹消登記の手続きを行えばよいのかよくわからないという方も多いです。

 

農工銀行名義の抵当権が設定されている農地を相続した後に売却しようとする場合、農工銀行の抵当権設定登記の抹消登記の手続きをしなければならないのが原則です。そのため、今のうちに抹消登記の手続きをしておいたほうが好ましいといえます。

 

そこで、農工銀行名義で設定されている抵当権の抹消登記の手続き方法についてみていきます。

 

 

 

@ 農工銀行について

 

 

農工銀行とは、農工業の改良発達のための貸付を目的とした特殊銀行で、1900年8月以降、北海道を除く全府県に各1行ずつ設立されました。

 

しかし、1921年に日本勧業銀行と農工銀行の合併に関する法律が制定されて、その後、全国各地の農工銀行はすべて日本勧業銀行に合併されました。

 

農工銀行は、以下のような経緯をたどり、現在ではみずほ銀行がその権利義務を承継しています。

 

@ 1921年から1944年の間にかけて各都府県の農工銀行が日本勧業銀行に合併される

 

A 1971年に日本勧業銀行が第一勧業銀行に銀行名を変更

 

B 2002年の銀行再編の際、第一勧業銀行がみずほ銀行に銀行名を変更

 

C 2013年にみずほ銀行はみずほコーポレート銀行に合併される

 

D Cの合併と同時にみずほコーポレート銀行はみずほ銀行へ銀行名を変更

 

 

 

A 農工銀行名義の抵当権抹消登記手続き

 

 

@のとおり、農工銀行の当時の権利義務は、みずほ銀行へ承継されています。そのため、農工銀行名義の抵当権の抹消登記手続きも、みずほ銀行へ連絡して手続きを進めていくことになります。

 

具体的な手続きの流れは以下のとおりです。

 

 

@ 農工銀行抹消登記書類の発行請求

 

みずほ銀行へ連絡をした後、農工銀行名義の抵当権が設定されている土地の登記情報を提供したうえで、抹消登記書類の発行を請求します。

 

請求を受けたみずほ銀行側は、提供した登記情報などを確認したうえで、抹消登記書類発行手続きのための書類(抵当権抹消依頼書 借用書)を出してくれます。

 

上記2つの書類に必要事項を記載したうえで、みずほ銀行へ提出します。

 

 

A 農工銀行抹消登記書類の発行および受領

 

抵当権抹消依頼書と借用書を提出後、みずほ銀行側は書類の発行手続きを進めてくれます。農工銀行からみずほ銀行への権利承継を証明する書類を準備することになるので、書類発行まで1週間から2週間程度かかるのが通常です。

 

書類が整ったら、みずほ銀行側からその旨の連絡があります。その後、みずほ銀行の店舗まで出向いて、書類を受領する形になります。

 

 

B 農工銀行の抵当権抹消登記手続き

 

 

みずほ銀行より、農工銀行の抵当権抹消登記書類を発行してもらった後、登記手続きを行います。

 

農工銀行からみずほ銀行へ権利承継される過程で2回合併しています。そのため、抹消登記の原因日付によっては、合併移転の登記をしてから、農工銀行の抵当権抹消登記の手続きをしなければなりません。

 

しかし、みずほ銀行側で合併移転の登記が不要となる日付を登記原因日付して、抵当権抹消登記の手続きをすることを認めてくれます。そのため、1件の申請で抵当権抹消登記の手続きをすることが可能です。

 

ただ、農工銀行の抵当権が設定されたときに発行された登記済証は、再発行してもらえません。そのため、登記済証を提出できないときの代替の方法で手続きをすることになります。

 

→ 登記済証をなくしたときの登記手続き方法についてはこちら

 

農工銀行の抵当権抹消登記の場合、事前通知制度を利用して申請手続きを行います。

 

→ 事前通知制度についてはこちら

 

事前通知制度を利用して登記手続きを行う場合、手続き完了までの時間が長くなるのが通常です。特にみずほ銀行の本店所在地(東京都)から遠方の場所にある法務局へ登記手続きをする際には、申請から完了まで2週間程度かかってしまうケースもあります。

 

 

 

B 当事務所での農工銀行の抵当権抹消登記手続き

 

 

当事務所においても、農工銀行の抵当権抹消登記の手続きを受託させていただいております。

 

当事務所の所在地(埼玉県狭山市)近辺の方だけではなく、遠方からのご依頼も承っております。

 

 

当事務所へ農工銀行の抵当権抹消登記のご依頼をいただいた際、以下の費用でお手続きをさせていただきます。

 

司法書士報酬                         50,000円(税抜)

・実費(登録免許税、書類発行手数料など)   10,000円〜15,000円程度

・交通費                          数千円〜

 

受託させていただいている事案にもよりますが、総額費用は70,000円前後になるのが通常です。

 

ただ、遠方所在地の土地の抹消登記手続きの場合、交通費の金額が数万円単位になる場合もございます。(具体的内容は下記Bをご参照お願い致します。) このような場合、お手続き費用の額が上記よりも高くなります。

 

 

また、当事務所で農工銀行の抹消登記の手続きをさせていただく際、以下の点をご了承いただけますようよろしくお願い致します。

 

 

@ 抹消登記書類発行の際に手数料がかかります

 

みずほ銀行から農工銀行の抵当権抹消登記に必要な書類を発行してもらう際、手数料(5,000円+消費税)がかかります。当該発行手数料は、ご依頼者の方のご負担となっております。

 

 

A 通常の抵当権抹消登記手続きよりも完了まで時間がかかります

 

農工銀行の抵当権抹消登記の手続きをさせていただくには、みずほ銀行より必要書類を発行してもらう必要があります。同手続きの取扱い数はそれほど多いというわけではございません。そのため、みずほ銀行の担当者の方によっては、不慣れが原因で書類の準備に時間がかかってしまうケースもございます。

 

また、通常、事前通知制度を利用して登記手続きをさせていただくので、その点でも時間がかかってしまいます。

 

ご依頼内容によっては、お手続きから完了まで1カ月以上かかってしまう可能性もございます。そのようなことから、お手続きを急ぎたいという方は、なるべく早めにご依頼いただいたほうが確実です。

 

 

B 書類再発行先の支店までの往復分の交通費が発生します

 

農工銀行の抵当権抹消登記書類の再発行請求は、お手続き対象の土地の所在地を管轄する支店に対して行うのが原則です。

 

そのため、お手続き対象となる土地の所在地にあるみずほ銀行の支店まで出張させていただき、農工銀行の抵当権抹消登記書類を受領させていただく必要がございますので、上記の基本手数料の他、現地までの往復分の交通費が別途発生いたします。

死因贈与の登記

贈与とは、ある人が他の人へ無償で財産を与えるという内容の契約のことで、原則として贈与契約が成立した日にその効力が生じます。しかし、契約当事者間で贈与者が死亡したときにその効力が成立する内容の贈与契約を締結することも可能です。このような贈与契約のことを死因贈与といいます。

 

そこで、死因贈与にはどのような特徴があるのか、登記手続き方法と合わせてみていくことにします。

 

 

 

@ 死因贈与の特徴

 

 

死因贈与は、贈与者が死亡したときに贈与の効力が生じるので、遺贈と同じような効果をもたらせます。そのため、死因贈与は、その性質に反しない限り、遺贈の規定が準用されているのです。

 

たとえば、遺言で財産を承継させようとする場合、遺言執行者を定める場合も少なくありませんが、死因贈与の契約を締結する際にも、執行者を定めることが可能です。

 

また、法の規定の準用ではありませんが、財産を無償で承継した人が相続税の対象になる点も、死因贈与と遺贈は共通しています。

 

これに対して、死因贈与は、当事者間で合意によって行うものであるのに対し、遺贈は財産を承継させる人の一方的な意思表示によって行うものであるなど、その性質が相違する点も少なくありません。

 

そのため、遺贈の規定が準用されていない事項も一定数あります。具体的には以下のとおりです。

 

 

@ 遺言能力

 

民法では15歳になると遺言をすることができると定められています。そのため、遺言能力があれば、成年に達しなくても遺言をすることが可能です。

 

しかし、死因贈与は遺言能力に関する規定は準用されていないので、成年に達しなければ原則として自分1人で契約を締結することができません。

 

 

A 遺言の方式

 

 遺言は民法の規定にしたがって遺言書を作成しなければ、原則として無効となってしまいます。

 

一方、死因贈与の場合、遺言の方式に関する規定は準用されていないので、自由な方式で死因贈与契約書を作成することが可能です。また、契約書を作成しないで、当事者間の口約束のみによって契約を締結できます。

 

 

B 遺贈の放棄

 

遺贈が特定遺贈の場合、受遺者は遺言者が死亡した後、いつでも放棄することができます。包括遺贈の場合は、相続放棄の規定が準用されるので、被相続人が死亡して、そのことにより自分が相続人になったことを知ったときから3ヶ月以内に放棄をすることが可能です。

 

しかし、遺贈の放棄に関する規定は死因贈与に準用されていません。少なくとも契約書を作成して死因贈与の契約をした場合、原則として受贈者1人で放棄することはできません。

 

 

 

A 死因贈与による不動産の登記手続き方法

 

 

不動産を死因贈与契約の対象とした場合、契約の効力が生じると贈与者から受贈者へ権利が移転します。そのため、不動産の名義を贈与者から受贈者へ変更する登記手続きをしなければなりません。

 

死因贈与による不動産の登記手続きは、契約の効力が発生したときに贈与者から受贈者へ所有権移転登記をする方法により行います。しかし、契約の際に受贈者名義の仮登記をした後、死因贈与の効力が発生したときに本登記をすることも可能です。

 

上記2つの具体的な登記手続き方法は、以下のとおりです。

 

 

@ 効力発生後に所有権移転登記する方法

 

一般の贈与と同じように贈与者と受贈者が共同で登記手続きをします。しかし、贈与者はすでに死亡しているので、登記手続きに関与できません。この場合、受贈者と贈与者の相続人全員が共同で登記申請手続きを行います。

 

→ 贈与の登記手続きについてはこちら

 

→ 贈与の登記をするにおいての注意事項についてはこちら

 

死因贈与契約書に死因贈与執行者の指定がある場合、執行者が贈与者の代わりに手続きに関与します。

 

ただ、執行者を指定して死因贈与の登記手続きを行う場合、契約書を公正証書にしておいたほうが好ましいといえるでしょう。なぜなら、契約書が私署証書(私人が作成して署名捺印した文書)である場合、登記手続きをする際に、執行者の印鑑証明書だけでなく、贈与者が契約書に捺印した実印についての印鑑証明書または贈与者の相続人全員の承諾書(印鑑証明書付)を提出しなければならないからです。

 

死亡した贈与者の印鑑証明書が用意できない場合、その相続人全員から承諾書へ実印で捺印してもらったうえで印鑑証明書を準備してもらわなければなりません。贈与者の相続人のなかで非協力的な人がいる場合、手続きを進めるのに支障が出てしまう可能性も出てきます。

 

そのようなことから、死因贈与の登記手続きをスムーズに進めるために、契約書を公正証書にしておいたほうがよいのです。

 

 

A 契約のときに仮登記をした後、効力発生したときに本登記をする方法  

 

死因贈与の契約を締結した場合、贈与者の死亡を始期とする所有権移転仮登記の手続きをすることが可能です。上記仮登記は、死因贈与の贈与者と受贈者の共同で手続きするのが原則ですが、贈与者の承諾があれば、受贈者が単独で手続きできます。

 

死因贈与の始期付所有権移転の仮登記を受贈者の単独申請の形で手続きをする場合、贈与者の印鑑証明書を承諾書と一緒に提出しなければならないのが原則です。

 

しかし、死因贈与契約書を公正証書で作成し、その契約書のなかに「贈与者が死因贈与に基づく所有権移転仮登記を承諾する」旨の文言をいれておけば、贈与者の印鑑証明書を提出することなく手続きができます。

 

贈与者が死亡して、死因贈与の効力が発生した後は、受贈者と贈与者の相続人全員または執行者が共同で仮登記の本登記手続きを行います。

贈与税の配偶者控除

他の人へ自分の財産を贈与する場合、対象財産の額が基礎控除額(年間110万円)以上になると、受贈者(財産をもらう人)に対して贈与税が課せられるのが原則です。そのため、長い間一緒に生活してきた配偶者(結婚相手)に対して、感謝の気持ちとして自分の財産を贈与しようとしても、贈与税がネックとなってなかなかできない方も少なくありません。

 

しかし、居住用の不動産であれば、状況によって無税で自分の配偶者に対して贈与できる場合があります。配偶者へ居住用の不動産を贈与する際、贈与税の配偶者控除の適用を受けられる場合があるからです。

 

そこで、贈与税の配偶者控除とはどのような制度なのかについてみていきます。

 

 

 

@ 贈与税の配偶者控除とは?

 

 

贈与税の配偶者控除とは、夫婦間居住用の不動産または居住用の不動産を取得するための金銭の贈与がされたとき、一定の条件を満たす場合に贈与税の課税価額から2,000万円の控除ができる制度です。

 

贈与税には、年間110万円の基礎控除の制度が設けられていますが、贈与税の配偶者控除と併用して適用を受けることができます。そのため、最大で2,110万円の控除を受けられるのです。

 

居住用の不動産を購入してからある程度の期間が経過した場合、その価額が2000万円以内になっているケースもめずらしくありません。そのため、贈与税の配偶者控除の制度を利用すれば、贈与税が課税されない状態で配偶者へ居住用の不動産の権利を移転できることも多いです。 

 

贈与税の配偶者控除の適用を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

 

 

@ 婚姻期間が20年経過した後に行われた贈与であること

 

贈与税の配偶者控除の適用が受けられるのは、婚姻から20年経過した後に行われた配偶者への贈与になります。ここでの「婚姻」とは、戸籍上で婚姻関係があることを意味します。内縁などの事実婚の場合、贈与税の配偶者控除の適用は受けられません。

 

また、贈与税の配偶者控除の適用対象となる贈与財産は、居住用の不動産そのものだけではなく、居住用の不動産を取得するための金銭も含まれます。

 

それから、2018年の相続法改正により、婚姻期間が20年以上である夫婦のうち、一方の配偶者が他方の配偶者に対して、居住用の建物またはその敷地を遺贈または贈与した場合、特別受益の持戻し免除の意思表示があったものと推定する旨の規定が設けられました。

 

→ 特別受益についてはこちら


→ 特別受益の持戻し免除の意思表示に関する推定規定についてはこちら

 

この規定も、贈与税の配偶者控除の条件である「婚姻期間が20年以上経過した」に合わせて決められています。

 

 

A 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその居住用の不動産に住んでいること

 

配偶者から贈与を受けて取得した居住用の不動産または配偶者から贈与を受けた金銭で取得した居住用の不動産に贈与を受けた年の翌年3月15日までに住んでいることが必要です。

 

また、贈与を受けた年の翌年3月15日に住んでいるだけではなく、その後も住み続ける見込みであることも要件となっています。

 

 

B 贈与税の申告をしたこと

 

贈与税の配偶者控除の適用を受けるためには、贈与税の申告をしなければなりません。

 

受贈者である配偶者は、財産の贈与を受けた日から10日経過した以後に発行された戸籍や戸籍の附票、居住用の不動産の贈与を受けたことを証明できる登記事項証明書、固定資産証明書などの書類を一緒に提出して申告します。

 

 

C 贈与税の配偶者控除の適用による配偶者への贈与が初めてであること

 

贈与税の配偶者控除の制度は、同じ配偶者への贈与に対しては一度しか利用できません。そのため、以前にこの制度の適用を受けて配偶者へ贈与をしていないことが条件となります。

 

 

 

A 居住用不動産の範囲について

 

 

贈与税の配偶者控除の対象となる居住用不動産とは、受贈者である配偶者が居住の用に供する国内の家屋またはその家屋の敷地のことです。また、家屋の敷地は、所有権だけでなく借地権も含みます。

 

この控除の適用を受けるには、家屋と家屋の敷地を一括して贈与しなければならないわけではありません。家屋または家屋の敷地のどちらか一方の贈与でも控除の対象となります。

 

 

 

B 贈与税の配偶者控除の適用を受ける際のメリットとデメリット

 

 

贈与税の配偶者控除の適用を受けて贈与した財産は、贈与者の相続が発生したとき、相続税の計算において有利な扱いを受けられます。

 

相続が発生する前の3年以内に被相続人が他の人へ贈与した場合、その贈与財産の額は、相続税の課税価格に加算されるのが原則です。しかし、贈与税の配偶者控除の適用を受けて贈与した場合、その財産額は相続税の課税価格に加算されません

 

そのようなことから、贈与税の配偶者控除の適用を受けて贈与を行うと、贈与者の相続に関する相続税対策になるというメリットがあります。

 

 

一方、贈与税の配偶者控除の適用を受けて居住用の不動産を贈与した場合、通常の贈与と同様、受贈者に対して登録免許税が課税されます。また、不動産取得税も課税対象となるのが原則です。手続きの際にこれらの税負担をしなければならない点がデメリットになります。

 

居住用の不動産の贈与契約および登記手続きをする際には、この点について事前に把握しておく必要があります。

 

→ 不動産の贈与の登記手続きについてはこちら

 

→ 不動産の贈与の登記手続きをするにおいての注意事項についてはこちら

不動産の親子間贈与と相続時精算課税制度

親から子へ不動産を贈与する場合、贈与を受ける子に対して贈与税などの税金がかかるのが原則です。そのため、税負担の金額がどのくらいになるのかを考慮したうえで贈与をするか否かを決めなければなりません。

 

→ 贈与をする際の注意事項についてはこちら

 

しかし、不動産の親子間贈与を行う際、贈与税の負担なしで手続きを進められる場合があります。相続時精算課税制度を活用することで、贈与税の支払いを回避できる場合があるのです。

 

そこで、相続時精算課税制度とはどのようなものなのか、活用する際の注意点と合わせてみていくことにします。

 

 

 

@ 相続時精算課税制度とは?

 

 

相続時精算課税制度とは、60歳以上の親または祖父母から20歳以上の子どもや孫へ財産を贈与した際に選択できる贈与税の制度です。相続時精算課税制度を選択した場合、それ以降に受けた贈与財産の合計額から2,500万円の特別控除額を差し引いた部分が贈与税の課税対象となります。そのため、贈与する財産の価額が2,500万円以下であれば、贈与税の負担なしで贈与できるのがこの制度の特徴です。

 

→ 相続時精算課税制度の詳細(国税庁HP)についてはこちら

 

不動産の価額は、数百万円から数千万円単位の金額のなるのが通常です。そのため、親子間で不動産の贈与をする際、暦年課税制度によって贈与税を算出する(年間の贈与額の合計から110万円を控除して計算する)ことにしてしまうと、贈与税の課税対象になってしまう可能性のほうが高くなります。贈与する不動産の価額によっては、課税される贈与税の金額が高額なる可能性もあります。

 

しかし、上記のようなケースでも、相続時精算課税制度を選択すれば、贈与税の支払いを回避できる場合も多いです。そのため、親子間で不動産の贈与を行う際、この制度を活用して手続きしようと考える方も少なくありません。

 

ただ、相続時精算課税制度を活用する際の注意点もあるので、その点を考慮しながら選択したほうがよいでしょう。

 

 

 

A 相続時精算課税制度を活用する際の注意点

 

 

相続時精算課税制度を適用して贈与をした財産価額は、贈与者が亡くなった際に計算する相続税の相続財産の価額に加えられます。それにより、将来的に相続税の申告が必要になると考えられる場合にこの制度を選択してしまうと、逆に納税額が多くなってしまうケースも出てきてしまうのです。その際、相続時精算課税制度から暦年課税制度へ変更したいと考えてもそれはできません。したがって、相続時精算課税制度の選択によって生じる不利益を考慮しながら、この制度を活用するか否かを決めていく必要があります。

 

それから、遺留分との関係にも注意したほうがよいでしょう。遺留分とは、法定相続人に保証された一定割合の相続分のことです。

 

→ 遺留分についてはこちら

 

贈与の受贈者である子は贈与者の親の相続人であるのが原則です。贈与を受けた人が相続人である場合、相続開始前より10年間に特別受益にあたる生前贈与がされた分は、遺留分算出の基礎財産に含まれます。

 

相続時精算課税制度によって親から子になされた不動産の生前贈与は、生計の資本としての贈与として特別受益にあたるのが原則です。そのため、親の相続開始前より10年間に親子間による不動産の生前贈与がなされた場合、遺留分算出の基礎財産にその贈与不動産の価額が含まれてしまうのが通常です。

 

したがって、相続時精算課税制度を活用して贈与を行う際、贈与者の相続人の遺留分のことも考慮したうえで手続きするか否かを決めることが大切です。

抵当権抹消登記の申請人や申請方法

住宅ローンを完済後、銀行などの金融機関から書類を発行してもらった後、抵当権抹消登記の手続きを進めていきます。単独所有不動産の抵当権抹消登記であれば、その所有者と抵当権者が一緒に手続きを行えばよいでしょう。

 

しかし、不動産の所有者が複数人、つまり共有である場合もめずらしくありません。また、抵当権設定後、設定者に相続が発生するケースもあります。

 

そこで、このような場合の抵当権抹消登記の申請人や申請方法についてみていきます。

 

 

 

@ 設定者が共有の場合

 

 

不動産登記の手続きは、登記手続きによって利益を受ける人(登記権利者)と不利益を受ける人(登記義務者)が共同して行うのが原則です。そのため、共有者全員と抵当権者が抵当権抹消登記の申請人になります。

 

→ 不動産登記の手続き方法の原則についてはこちら

 

しかし、この場合、必ずしも共有者全員が抵当権者と共同で手続きを行わなければならないわけではありません。抵当権設定者が共有である場合、共有者の一人が抵当権者と共同で抵当権抹消登記の手続きができます(登記研究425・127等)。抵当権抹消登記の手続きは、民法252条但書の保存行為にあたるとされているからです。

 

ただ、申請書には、抵当権設定者として共有者全員の住所と氏名を記載しなければなりません。

 

 

 

A 抵当権が消滅した後に設定者が亡くなった場合

 

 

設定した抵当権が消滅した後、抵当権抹消登記の手続きをする前に設定者が亡くなったとします。その際、抵当権抹消登記の手続きをする前に、設定者の相続登記をする必要があるのでしょうか。

 

このようなケースでは、相続登記をすることなく、設定者の相続人と抵当権者が共同して抵当権抹消登記の手続きをすることが可能です(登記研究661・225等)。設定者の相続人が複数である場合、そのうちの一人が抵当権者と共同して抵当権抹消登記の手続きを行うことができます。

 

一方、設定者が亡くなった後、抵当権が消滅した場合、いきなり抵当権抹消登記の手続きはできません。このようなときは、まず設定者の相続登記をした後、抵当権抹消登記の手続きをする必要があります。団体信用生命保険によって住宅ローンが完済になった場合、この手順により抵当権抹消登記の手続きを行います。

 

→ 団体信用生命保険と抵当権抹消登記の手続きについてはこちら 

法人が申請人となる不動産登記手続きの添付情報の変更について

不動産登記令、不動産登記規則等が一部改正され、2015年11月2日より、法人が申請人となる不動産登記手続きの添付情報が変更となりました。

 

 

 

@ 法人の資格証明書について

 

 

これまで、会社などの法人が申請人となって不動産登記手続きを行う際、原則として代表者事項証明書や登記事項証明書など代表者の資格証明書を提出しなければなりませんでした。

 

しかし、2015年11月2日より、原則として申請人となる法人の「会社法人等番号」を提供すれば、代表者の資格証明書を提出する必要がなくなりました。会社法人等番号とは、商業法人登記をしている会社等の法人に対して付される12桁の識別番号のことです。会社法人等番号は、登記申請書の申請人欄のところに記載して提供することになります。

 

ただ、例外として、申請人となる法人の発行後1カ月以内の登記事項証明書を提出することで、会社法人等番号の提供に代えることができます。法人が会社法人等番号を提供して不動産登記の申請をする際、手続きの遅延が発生しないようにするため、このような例外の制度を設けたのです。

 

法人が会社法人等番号を提供して不動産登記の申請を行った場合、法務局側は当該法人の登記情報を閲覧して代表者を確認します。しかし、その前に当該法人の登記が申請されているときは、登記情報を閲覧して当該法人の代表者を確認できません。そのため、当該法人登記の手続き完了後、登記情報が閲覧できる状態になってから申請された不動産登記の審査に入るのです。それにより、通常より不動産登記の手続きが遅れてしまうケースも出てきてしまいます。

 

上記のような状況が生じても、発行後1カ月以内の登記事項証明書を提出して法人が不動産登記の申請を行えば、法務局側はそれを元に審査するのでスムーズに手続きが進めることが可能となります。それにより、不動産登記の手続き遅延を防ぐことができるのです。

 

 

 

A 法人の住所証明書について

 

 

不動産の所有権を取得して、所有権保存登記や所有権移転登記を行う場合、原則として登記名義人になる個人や法人の住所証明書を提出しなければなりません。新たに所有権登記名義人になる個人や法人が、実在しているか否かを確認する必要があるからです。

 

法人が所有権登記名義人となる登記手続きを行う場合、これまでは代表者事項証明書または登記事項証明書を住所証明書として提出していました。しかし、2015年11月2日より「会社法人等番号」を提供することにより、住所証明書の提出を省略できるようになっています。

 

 

 

B 法人の変更証明書について

 

 

不動産の登記名義人である法人が本店移転を行った場合、それにともなって当該法人の住所変更の登記をします。その際、原則として法人の住所変更の経緯を確認できる登記事項証明書や閉鎖事項証明書などの変更証明書を提出しなければなりませんでした。しかし、2015年11月2日より「会社法人等番号」を提供することで変更証明書の提出を省略することが可能となっています。

 

ただ、省略できるのは、法人の現在の会社法人等番号で変更事項を確認できるものに限られます。2012年5月20日(外国会社にあっては2015年3月1日)以前に、他の法務局の管轄区域内への本店移転登記等を行っていた場合には、会社法人等番号が変更されていました。もし、2012年5月20日以前に他の法務局の管轄区域内への本店移転登記を行っていた場合、変更前の会社法人等番号が記録された登記記録に法人の住所変更の経緯がのることになります。そのため、現在の会社法人等番号を提供しただけでは、法務局側で法人の住所変更の経緯を確認できません。

 

したがって、このようなときは、現在の会社法人等番号の他、法人の住所変更の経緯が確認できる閉鎖登記事項証明書または閉鎖登記簿謄本等を提出する必要があります。

増築による償金請求債務の代物弁済とその登記手続き

自宅の経年劣化やライフスタイルの変化などを理由に、リフォームを検討する人もいることでしょう。自宅をリフォームして増築すると、その後の権利関係によっては税務上の問題が発生するケースがあるので注意しなければなりません。

 

そこで、自宅をリフォームする際にどのような税務上の問題が生じるのか、その対処方法とともにみていくことにします。

 

 

 

@ 家の名義人以外の人が資金提供して増築した後の権利関係

 

 

たとえば、子が資金を提供して親名義の家を増築工事したとしましょう。その際、増築した部分の所有権は誰が取得するのでしょうか。

 

この場合、増築した部分の所有権を取得するのは、原則家の名義人である親です。民法242条本文において、「不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する」という不動産の付合の規定が設けられています。増築した部分は、原則として家の本体部分に付合したとされます。したがって、増築工事資金の提供者が子であっても、増築した部分の所有権は親が取得するのです。

 

ただ、この場合、子は増築工事資金を提供したにもかかわらず、増築した部分の所有権を取得できないという不利益を被ってしまいます。そのため、この不公平な状況を解消するため、子は不動産の所有者である親に対して償金請求(提供した増築工事資金の返還請求)ができるようになっているのです。

 

 

 

A 増築工事による税務上の問題には注意が必要

 

 

増築工事の際、不動産の付合によって損失を受けた子は、不動産の所有者である親に対して償金請求をするか否かは基本的に自由です。家庭の事情によっては、償金請求しないことも考えられます。しかし、子が親に対して償金請求をしない場合、税務上の問題が生じてしまいます。具体的には、親に贈与税が課せられてしまう場合があるのです。

 

親はなぜ贈与税の課税対象になってしまうのでしょうか。それは、親が資金を負担することなく増築した部分の所有権を取得したことになるからです。その結果、親は子から増築工事資金の贈与を受けたとみなされてしまいます。したがって、不動産の所有者以外の人が資金を提供して増築工事をする場合、税務上の問題にも注意しなければなりません。

 

 

 

B 税務上の問題を回避するには

 

 

増築工事による税務上の問題に対してどのように対処すればよいのでしょうか。すでに増築をしてしまった場合は、自宅の所有権の一部を親から子へ移す方法があります。具体的には、自宅全体の評価額に対する子が提供した増築工事資金額の割合の所有権持分を親から子へ移転させるのです。これにより、親が子に対して償金債務を履行したと扱われ、増築工事資金も親が負担したことになります。その結果、増築工事による親の贈与税の課税問題を回避できるのです。

 

なお、上記の所有権持分を親から子へ移転させる原因は、「代物弁済」になります。代物弁済とは、債務者が債権者との契約により、本来負担していた給付に代えて別の給付方法によって債務を消滅させることをいいます。親が子に負担する償金債務を、現金払いに代えて自宅の所有権の一部を移転させる方法で消滅させているので代物弁済となるのです。

 

この場合の登記手続きですが、まず増築による建物表題変更登記を行います。その後、償金債務の代物弁済による所有権の一部移転登記をして、自宅の所有権の一部を親から子へ移転させます。

胎児を名義人とする登記手続き

妻が妊娠している状態で、夫が亡くなったとします。この場合、胎児はすでに生まれたものとみなされる(民886条1項)ので相続人になります。そのため、胎児も相続登記の名義人になることが可能です。

 

→ 相続人に胎児がいる場合についてはこちら

 

そこで、胎児が相続人となったとき、その後の登記手続きはどのように行うのかみていきます。

 

 

 

@ 胎児を含めて行う法定相続による相続登記

 

 

法定相続による相続登記であれば、胎児を名義人とする登記手続きをすることが可能です。登記手続きの方法は、通常の法定相続による相続登記と基本的には変わりません。ただ、胎児が名義人になることから考えなければならない点がいくつかあります。

 

まず、胎児の登記名義の表記ですが、「亡被相続人名妻何某胎児」です。たとえば、夫A、妻BでAが亡くなり、Bとその胎児が相続人になる場合、胎児の登記名義の表記は「亡A妻B胎児」になります。

 

それから、胎児はまだ生まれていないので実際に登記申請の手続きができません。この場合、胎児の代わりに妻が法定代理人として申請手続きを行います(S.29・6・15民甲1188)。

 

また、胎児を含めた法定相続による相続登記をするとき、胎児の存在を証明しなければならないのかという問題もあります。この場合、医師などが発行する懐胎を証明する書類を提出する必要はないという見解が出ています(登記研究191号72)。

 

 

 

A 胎児が出生したときの登記手続き

 

 

胎児を名義人とする相続登記をした後、妻が無事に出産したとしましょう。その際、出生した子の氏名を登記記録に反映させなければなりません。そのため、胎児の名義から子の氏名に変更する登記手続きをすることになります。

 

また、胎児が出生した場合、氏名変更だけではなく住所変更の登記手続きもしなければなりません。たとえ、すでに登記されている胎児の住所と出生後の子の住所が同じであっても住所変更の登記手続きを要します。

 

なお、胎児が出生したときに行う所有権登記名義人住所氏名変更登記は、子の法定代理人(子の母)が申請人となって手続きをします。

 

 

 

B 胎児が生まれたときに死亡していた場合の登記手続き

 

 

胎児名義の法定相続による登記をした後、胎児が死亡した状態で生まれたときはどのような登記手続きをするのでしょうか。この場合、相続の際に「胎児はすでに生まれたものとみなす」という規定が適用されなくなる(民886条2項)ので、最初から胎児は存在しなかったものと扱われます。

 

そのため、胎児を含む法定相続による相続登記に一部誤りがあることになるため、それを訂正する登記をしなければなりません。具体的には、所有権更正の登記手続きをすることになります。

混同による仮登記の抹消

相続登記のご依頼を受ける際、その対象となる不動産に仮登記が残った状態のままであるケースが散見されます。当事務所へご依頼いただいた相続登記の案件のなかに、以下のような権利関係の不動産がありました。

 

(甲区)

1番 所有権移転           大正15年12月20日売買   所有者A

2番 所有権移転請求権仮登記  昭和28年7月22日贈与予約   権利者B

余白

3番 所有権移転           昭和36年11月7日相続    所有者B

 

 

今回、不動産の所有者であるBが亡くなりました。(相続人はCとD)。そこで、Bの相続人の1人であるCの名義にする相続登記とともに、順位2番で登記されている所有権移転請求権仮登記の抹消手続きをすることになったのです。

 

このような場合、C名義への相続登記を行った後、どのような方法で順位2番の仮登記の抹消手続きをすればよいのでしょうか。

 

 

 

@ 混同による仮登記の抹消手続きを行う

 

 

上記の事例では、Bが昭和36年11月7日に相続を原因として不動産を取得したことにより、順位2番の仮登記の権利は混同により消滅しています。そのようなことから、この場合は、混同による仮登記の抹消手続きを行います。

 

混同とは、同一物について複数の物権あるいは債権債務関係が同一人に帰属した場合、存続させておく必要のない権利を消滅させるという法律の規定です。たとえば、借地人が借地の所有権をした場合、原則として混同により借地権は消滅します。

 

上記の事例でも、Bは昭和28年7月22日にAと贈与予約をして、将来贈与によって所有権を取得できる権利を得ました。しかし、昭和36年11月7日にBはAを相続して不動産の所有権を取得したことにより、贈与予約の権利を存続させておく必要性がなくなりました。そのようなことから、順位2番の仮登記の権利は、混同によって消滅することになるのです。

 

混同による仮登記の抹消は、原則として現在の所有権登記名義人と抹消する仮登記の名義人が共同で申請手続きを行います。そのため、相続登記によって所有権登記名義人になったCが登記権利者、仮登記の名義人であるBの相続人CとDが登記義務者となって順位2番の仮登記を抹消します。

 

一方、上記の事例でもしBが生存している場合は、Bが単独で「権利混同」を原因として順位2番の仮登記の抹消手続きをすることが可能です(登記研究360・92)。

 

 

 

A 権利証(登記識別情報)がない場合の手続き方法

 

 

混同による仮登記の抹消をする際、原則として仮登記名義人の権利証(登記識別情報)が必要となります。しかし、上記の事例のように、仮登記の権利を取得した時期が昔で権利証をなくしてしまっているケースも少なくありません。

 

このような場合、事前通知制度を利用したり、本人確認情報を提供したりして手続きをすることが考えられます。

 

→ 事前通知制度についてはこちら

 

→ 資格者代理人による本人確認情報についてはこちら

 

しかし、上記の事例ではこれらの方法を利用しなくても順位2番の仮登記を抹消できます。なぜなら、仮登記は利害関係人による単独抹消が認められているからです(不登法110条後段)。

 

仮登記上の利害関係人とは、仮登記の本登記を行う際、それによって自己の権利が否定されたり、不利益を受けたりする人をいいます。仮登記の抹消登記の登記権利者(上記の事例では新たに相続登記によって名義人になったC)も仮登記上の利害関係人にあたります。そのため、利害関係人による単独抹消の方法によって、Cは順位2番の仮登記の抹消手続をすることが可能です。

 

この方法で仮登記の抹消をする場合、仮登記名義人が抹消手続きに承諾したことを証明する情報(印鑑証明書も必要)を提供して行います。しかし、手続きをする際、仮登記名義人の権利証(登記識別情報)は必要ありません。そのため、仮登記名義人の権利証(登記識別情報)がない場合でも、事前通知制度や本人確認情報制度を利用しないで手続きすることができるのです。

 

当事務所がこの案件のご依頼を受けたときも、仮登記上の利害関係人による単独抹消の方法で手続きを行っています。ただ、法務局によっては、この方法による手続きを認めてくれないところもあるようです。そのため、仮登記上の利害関係人による単独抹消の方法を利用する場合、事前に法務局へ確認をしてから手続きをしたほうがよいでしょう。

利益相反行為(親と未成年の子のケース)

私生活のなかでは、親子間で財産を譲渡したり、共同で相続したりするケースが少なくありません。その際、子が未成年である場合、利益相反の問題が生じます。不動産の売買や相続に関する登記手続きをする際にも、親と未成年の子の利益相反行為に関する問題が絡んできます。

 

そこで、親と未成年の子の利益相反行為について詳しくみていきましょう。

 

 

 

@ 親と未成年の子の間で利益相反が生じたときは特別代理人を選任する

 

 

利益相反行為とは、複数当事者間で一定の行為をする際、一方に利益が生じた場合に他方が不利益となるような行為をいいます。法律上の行為で生じる利益相反行為はいくつかありますが、親と未成年の子の間で行われる法律上の行為はその一例です。

 

未成年の子は、原則自分1人で法律上の行為をすることができません。有効な法律行為をするためには、法定代理人である親の同意を得る必要があります(民5条@)。また、親は未成年の子の親権者にあたります(民818条)。そのため、親が代理人となって未成年の子の法律行為をすることが可能です(民824条本文)。

 

しかし、未成年の子と親との間で法律上の行為をする場合、親が未成年の子の代理人となって取引できるとすると、未成年の子に不利益が生じてしまう可能性があります。なぜなら、一方では親が当事者として、もう一方では未成年の子の代理人としての立場になり、事実上親だけでその内容を決められる状態となるからです。しかし、それでは公平性が保たれないので好ましくありません。

 

そこで、上記のような親と未成年の子の間で利益相反が生じるケースでは、家庭裁判所に申立てをして特別代理人を選任してもらうことになります(民826条@)。選任された特別代理人が、利益相反の状態にある親の代わりに未成年の子の代理人となり、法律上の行為をするのです。これにより、法律上の行為をするにおいての未成年者の利益が守られます。

 

 

 

A 親と未成年の子の利益相反行為の具体例

 

 

親と未成年の子の間で法律上の行為をする際、利益相反の状態が生じるのは具体的にどのような場合でしょうか。

 

まずあげられるのは、未成年の子の財産を親へ譲渡したり、親の財産を有償で未成年の子へ譲渡したりするときです。たとえば、父親の所有する不動産を未成年の子へ売却するとしましょう。この場合、父親と未成年の子との間で利益相反の状態が生じます。そのため、不動産の売買契約を締結する場合、父親に代わって特別代理人が未成年の子を代理することになります。また、両親がいる場合、原則父親と母親が共同で親権を行使しなければなりません(民818条B本文)。したがって、母親と特別代理人が共同で未成年の子を代理して、父親と不動産の売買契約を締結することになります。

 

不動産売買の登記を行う際、親子間の利益相反が生じたとき、手続きにはどのような影響があるのでしょうか。特別代理人が登記手続きに関与する場合、その代理権を明らかにするために選任審判書の添付が必要となります。その他については、通常の場合と変わりません。

 

それから、相続の場合でも親と未成年の子の間で利益相反となるケースがあります。たとえば、相続が発生して、親と未成年の子が同時に法定相続人になったとしましょう。その際、親と未成年の子が遺産分割協議をすると利益相反となります。

 

→ 法定相続人のなかに未成年の子がいる場合の遺産分割についてはこちら

 

また、親が未成年の子に代わって相続を放棄するときも、親自身が同時に放棄しない限り、利益相反行為となってしまうのです。

 

 

 

B 利益相反行為の判断基準と効力

 

 

ある法律上の行為が利益相反にあたるか否かは、その行為の外形上で判断されます。その行為の内面的な要素については基本的に考慮されません。たとえば、共同相続人となった親と未成年の子が、遺産分割協議をすることになりました。このような場合、仮に未成年の子にとって有利な協議内容であったとしても利益相反行為になってしまいます。

 

また、利益相反にあたる場合で、特別代理人を選任することなく親と未成年の子で法律上の行為をするとどのような効力が生じるのでしょうか。この場合は、無権代理行為となり、原則無効となります。しかし、未成年の子が成年に達した後、その無権代理行為を追認して、その効力を有効にすることが可能です。

利益相反行為(会社と取締役のケース)

不動産登記の手続きをする際に生じる利益相反の問題は、親と未成年の子との関係だけではありません。

 

→ 利益相反行為(親と未成年の子のケース)についてはこちら

 

会社と取締役が取引の当事者となったり、関与したりする場合も、利益相反の問題が生じます。

 

そこで、どのような場合に会社と取締役が利益相反の状態となるのか、また、会社と取締役が利益相反となった場合、不動産登記の手続きにどのような影響を与えるのか見ていきます。

 

 

 

@ 会社と取締役間の利益相反とは

 

 

法律上、会社は「法人」として取引の主体となる資格があります。ただ、会社が実際に取引をするか否かを決めるのは、その業務執行機関となる取締役などです。また、その一方で取締役自身も「個人」として取引の主体になれます。そのため、会社とその取締役が同じ法律上の取引の当事者となったり、関与したりする場合、利益相反となるケースがでてくるのです。

 

会社法という法律で、取締役は、株式会社のために職務を忠実に行わなければならないと定められています(会社法355条)。そのため、法律上の取引をする際も、取締役は自身が役員になっている会社に不利益を及ぼすような行為をしてはいけないということになります。したがって、取引において会社と取締役間で利益が相反する場合、一定の制限がされているのです。具体的には、法律上の取引で会社と取締役間で利益が相反する場合、原則として株主総会または取締役会の承認決議を得なければなりません(会社法356条1項AB 365条1項)。

 

 

 

A 会社と取締役の利益相反行為の具体例

 

 

会社と取締役の利益相反行為には、直接取引と間接取引があります。

 

直接取引とは、取締役が自己または第三者のために会社(株式会社)と取引しようとするケースのことです(会社法356条1項A)。取締役自身が会社の相手当事者となって取引するときだけではなく、他の会社の代表者となって、自身が取締役をしている会社と取引する場合も含みます。

 

直接取引の具体例としてどのような場合があげられるでしょうか。まずは、会社と取締役間で売買などの有償契約をするときです。会社が取締役へ特定のものを贈与する場合も直接取引の利益相反行為にあたります。その他、会社が取締役に貸付をしたり、会社が取締役の債務を免除したりしたときなどです。

 

また、同じ人が代表取締役であるA社とB社の間で取引をする場合も直接取引による利益相反行為になります。なぜなら、ある会社(A社)の取締役(代表取締役)をしている人が、他の会社(B社)の代表者(代表取締役)となって、ある会社(A社)と取引をしているからです。この場合、原則A社とB社の双方で株主総会または取締役会の承認を得る必要があります。

 

一方、間接取引とは、会社(株式会社)が、その会社(株式会社)の取締役以外の人と取引をする際、その会社(株式会社)の取締役と利益が相反する場合のことです。(会社法356条1項B)。代表的な例として、取締役の債務を担保するために会社の不動産に抵当権などの担保権を設定する行為があげられます。また、担保設定者となる会社の取締役が、債務者となる会社の代表者であるときも、間接取引による利益相反の関係が生じます。

 

 

 

B 会社と取締役の利益相反行為と登記手続き

 

 

会社と取締役の利益相反の問題が絡んでくる場合、不動産登記の手続きにはどのような影響がでてくるのでしょうか。

 

会社と取締役間で利益相反の生じる取引をする場合、原則として株主総会または取締役会の承認を得なければなりません。そのため、不動産登記の手続きを行う際にも、それを証明する書類を提出することが求められます。具体的には、利益相反行為を承認した株主総会または取締役会の議事録を提出します。

 

また、承認議事録が株主総会議事録の場合は作成者、取締役会議事録の場合は出席した取締役及び監査役がそれぞれ実印で承認議事録に押印しなければなりません。そのため、会社と取締役が利益相反となる不動産登記手続きをする際、押印者の印鑑証明書の提出も必要です。代表取締役が押印者である場合は会社の印鑑証明書、平取締役や監査役が押印者である場合は個人の印鑑証明書を提出します。

 

その他、承認議事録の押印者の資格証明に関する書面や情報を提供する必要があります。しかし、こちらは会社法人等番号の提供によって代えることが可能です。

 

→ 会社法人等番号による資格証明書などの代替についてはこちら

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