2021年に、不動産登記の公示機能向上を目的として、「形骸化した登記の抹消手続きの簡略化」、「登記簿の附属書類の閲覧制度の見直し」に関する改正がなされました。

 

上記改正は、202341日から施行されています。 

 

【ⅰ.形骸化した登記の抹消手続きの簡略化】 

 

所有権以外の権利において、登記がなされているものの中には、実体的な権利は既に消滅しているにも関わらず、その登記が抹消されないまま長期間放置されているものも存在します。そのような登記においては、名義人が所在不明の状態となっているケースも少なくありません。

 

抹消登記を含む不動産の権利の登記手続きは、法令で定められている例外を除き、登記権利者(登記手続きをすることで利益を受ける人)と登記義務者(登記手続きをすることで不利益を受ける人)が共同で行うことになります。

 

→ 不動産の権利に関する登記の申請形態についてはこちら

 

しかし、登記名義人が所在不明である場合、共同申請の方法で権利の抹消登記の手続きを行うことができません。また、不動産登記法には、登記名義人が所在不明である場合の抹消登記手続き方法も規定されていますが、時間や手間がかかり、申請者の手続き的な負担も重いことから、うまく活用されていないのが実情です。 

 

そのようなことから、より簡易的な形で形骸化した登記の抹消手続きを行えるようにするための改正がなされました。当改正により、以下の三つの規定が設けられています。

 

【買戻特約に関する登記の単独抹消】

 

買戻特約に関する登記がなされている場合、買戻特約がされた売買契約の日から10年経過しているときは、不動産の所有者が単独で抹消登記の申請手続きができるようになりました。

 

買戻特約とは、売買契約と同時に、売主が買主に対して受領した売買代金額(売主と買主で別段の合意をした場合は、合意によって定めた額)および契約の費用を返還して、売買契約の解除ができる旨を合意する特約のことです。

 

買戻特約で定められる期間は最長10年で、その後に期間の延長をすることができません。つまり、登記されている買戻特約が当特約のされた売買契約の日から10年経過している場合、当権利は期間満了により効力を失っていることは明らかです。 

 

効力を失っていることが明らかな買戻特約に関する登記であれば、不動産の所有者が単独で抹消登記の申請手続きを行っても問題ないため、このような規定が設けられました。

 

【存続期間が満了している地上権等の登記の単独抹消】 

 

地上権、永小作権、質権、賃借権、採石権に関する登記の存続期間および買戻特約に関する登記の買戻期間が満了している場合、法務省令の定める方法で相当の調査を行っても、抹消対象の登記名義人の所在が明らかにならないときは、不動産の所有者が単独で抹消登記の申請手続きができるようになりました。

 

登記された買戻特約の買戻期間が10年未満であり、既にその期間が満了している場合も、この規定に基づいて抹消登記の申請手続きをすることが可能です。

 

当規定による手続きを行うために求められる相当な調査とは、戸籍、住民票などの公的書類による所在調査のことです。抹消対象の登記名義人の所在確認のため、現地調査まで行う必要はありません。 

 

上記方法による調査の結果、抹消対象の登記名義人が所在不明である場合、裁判所に公示催告の申立を行います。当申立後、裁判所から除権決定を受けることで、不動産所有者の単独による抹消登記の申請手続きができるようになります。

 

【解散した法人の担保権等に関する登記の単独抹消】 

 

解散した法人の担保権等に関する登記につき、当法人の清算人が所在不明である場合、当法人が解散してから30年経過し、かつ、被担保債権の弁済期から30年経過しているときは、供託等を行わなくても、不動産の所有者が単独で抹消登記の申請手続きをすることができるようになりました。

 

不動産登記の原則に基づいて、解散した法人の担保権の抹消登記を共同申請の方法で行う場合、不動産所有者と当法人の清算人が手続きに関与する必要があります。もし、当法人の清算人が所在不明の場合、新たに清算人を選任した上で、担保権の抹消登記の申請手続きを進めることになります。

 

しかし、当法人で清算人を選任することが困難な状況にある場合(例:解散法人が清算結了済で、すでに法人の実態がない場合等)は、裁判所に申立をした上で清算人を選任してもらう必要があるため、担保権の抹消登記の申請手続きを円滑に進めることが難しくなります。

 

また、不動産登記法には、担保権等の登記名義人が所在不明である場合、供託による担保権抹消登記の特例規定が設けられていますが、手続き的な負担が重い上に、担保権等の登記名義人が法人の場合、当規定の適用対象外となるケースも多いです。 

 

そのようなことから、より簡易的な形で申請手続きができるように、解散した法人の担保権等に関する登記の単独抹消規定が設けられたのです。

 

【ⅱ.登記簿の附属書類の閲覧制度の見直し】 

 

当法改正により、土地所在図等の図面以外の登記簿の附属書類につき、正当な理由がある場合に、その対象部分に限って閲覧できることになりました。この規定により、閲覧の可否は、その対象となる文書の性質ごとに検討・判断されることになります。また、自己を申請人とする登記記録に係る登記の附属書類については、無条件で閲覧できる旨の規定も設けられました。

 

当法改正前において、土地所在図等の図面以外の登記簿の附属書類を閲覧できるのは、利害関係の有する部分に限るとされていました。しかし、この「利害関係を有する部分」とは、具体的にどの範囲のことを指すのか不明確でした。

 

また、個人のプライバシーへの配慮の要請が年々強くなり、その影響を考慮した上で、登記簿の附属書類の閲覧の可否を検討・判断していく必要があります。 

 

そのような理由で、当法改正により、登記簿の附属書類の閲覧制度の規定が見直されました。

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