株式会社の資本金の額は、法律(会社法等)で規定されている一定の手続きを経た上で、減少させることができます。会社の欠損を填補したり、法人税等の税制優遇を受けたりするために、資本金の額の減少手続きをするケースが多いです。

 

また、「資本金の額」は、株式会社の登記事項になります(会社法9113項⑤)。そのため、資本金の額の減少手続きを行った場合、当会社の資本金の額も変更となるため、その旨の登記手続きもしなければなりません。

 

【資本金の額の減少の手続き方法】 

 

株式会社が資本金の額を減少するには、「株主総会等の決議」「債権者保護手続き」の二つの手続きを踏む必要があります。 

 

【株主総会等の決議】 

 

株式会社が資本金の額を減少するには、原則として株主総会の特別決議が必要です。しかし、定時株主総会で資本金の額の減少決議をする場合で、減少する資本金の額が、定時株主総会の日における欠損の額を超えないときは、普通決議で足ります(会社法4471項、3092項⑨、会社法施行規則68条)。

 

さらに、株式の発行と同時に資本金の額を減少する場合、当該減資の効力発生日後の資本金の額が、効力発生日前の資本金の額を下回らないときは、取締役の決定(取締役会設置会社の場合は、取締役会の決議)で減資の手続きを進めることが可能です(会社法4473項)。 

 

株式会社が資本金の額の減少をする場合、株主総会等の決議で以下の事項を定めなければなりません(会社法4471項)。

  • 減少する資本金の額
  • 減少する資本金の額の全部または一部を準備金とするときは、その旨および準備金とする額
  • 減資の効力発生日

 

上記事項の「減少する資本金の額」は、減資の効力発生日における資本金の額を超えてはならない旨の規定があります(会社法4472項)。

 

また、資本金の額の減少は、原則として、株主総会等の決議で定めた減資の効力発生日にその効力が生じます。ただ、後に触れる債権者保護手続きが終了していない場合、株主総会等の決議で定めた減資の効力発生日が到来しても、資本金の額の減少の効力は生じません。 

 

もし、株主総会等の決議で定めた減資の効力発生日までに債権者保護手続きが終了しないと見込まれる場合、減資の効力発生日を変更する形で対応します。具体的には、減資の効力発生日を債権者保護手続きの終了が見込まれる日以降の日に変更します。減資の効力発生日の変更は、その到来日前であれば、取締役の決定(取締役会設置会社の場合は、取締役会の決議)によって、いつでも行うことが可能です。

 

【債権者保護手続き】 

 

株式会社が資本金の額の減少をするには、債権者保護手続きを行わなければなりません。

 

株式会社の株主は、自身の出資した範囲内でのみ、会社の債権者に対して責任を負うため、株式会社と取引する債権者側からすると、会社の財産が唯一の拠り所となります。もし、会社の判断だけで資本金の額の減少ができてしまうと、会社の債権者に不利益や損害を与えてしまう可能性もあります。

 

そのようなことから、株式会社が資本金の額の減少手続きを行う際、債権者の保護を図られるように、債権者に異議を述べる機会を与えることが義務付けられているのです。 

 

債権者保護手続きは、以下の事項を官報に公告した上で、会社側が把握している債権者への個別催告をする形で行うのが原則です(会社法4492項本文)。ただし、例外として、官報以外の公告方法を定める株式会社は、官報と当会社の定めた公告方法によって、以下の事項を二重に公告した場合、債権者への個別催告の手続きを省略できます(会社法4493項)。

  • 資本金の額の減少の内容
  • 株式会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの
  • 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

 

「資本金の額の減少の内容」については、減少する資本金の額と減少後の資本金の額を掲載する形で公告するのが一般的です。具体的には、「当社は、資本金の額を300万円減少し、1,200万円とすることにいたしました。」という文言を官報公告に掲載します。

 

「株式会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの」の詳細は、会社計算規則第152条に規定されており、会社の規模や公告方法の種類によって、その内容が異なります。たとえば、大会社以外の株式会社で公告方法が官報である場合、当該会社の最終事業年度に係る貸借対照表の要旨が公告されている官報の日付および掲載頁がその内容になります。

 

→ 官報による減資公告とその手続き方法についてはこちら

 

債権者が異議を述べることができる一定の期間は、1ヵ月を下ることができない旨が法律で定められています(会社法4492項但書)。減資における債権者保護手続きを行う際、債権者が減資手続きに異議を述べることができる期間を最低1ヵ月以上設けなければなりません。もし、上記期間内に債権者が異議を述べなかった場合、当債権者は減資手続きについて承認したものとみなされます(会社法4494項)。 

 

資本金の額の減少手続きにおいて、株主総会等の決議と債権者保護手続きを行う順序に関する規定は特に設けられていません。最初に債権者保護手続きを行い、当手続き終了後に株主総会等の決議を行う形で手続きを進めることも可能です。債権者保護手続き完了後に株主総会等の決議を行う手順で手続きを進める場合、株主総会等の決議日に減資の効力を発生させることもできます。

 

【資本金の額の減少登記】 

 

株式会社が資本金の額を減少した場合、減資の効力発生日より2週間以内に、変更後の資本金の額と変更年月日を登記しなければなりません。資本金の額の減少登記の登録免許税は、1件の申請につき3万円です。

 

資本金の額の減少登記の提出書類は、減資の決議機関や債権者保護手続き方法によって、その内容が変わってきます。一般的なケース(公告方法を官報と定めている株式会社が株主総会の特別決議で減資事項を決定して、債権者保護手続き中に異議を述べた債権者がいない場合)における資本金の額の減少登記の提出書類の内容は、以下のとおりです。

  • 株主総会議事録
  • 株主リスト
  • 公告をしたことを証する書面(減資公告が掲載されている官報の原本) 
  • 催告したことを証する書面(催告書の控えに催告対象債権者のリストを合綴し、会社代表者が各債権者に催告した旨を証明した書面) 
  • 異議を述べた債権者はいない旨を代表者が証明した上申書

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