会社法には、株式会社の取締役の任期規定があるので、会社の定款に取締役の任期を定めるのが通常です。

 

→ 取締役の任期についてはこちら

 

そして、一度定款で取締役の任期を定めた後、会社の事情により、その任期を変更したいという場合も存在します。このようなとき、取締役の任期を変更することも可能です。

 

そこで、取締役の任期の変更はどのように行うのか、また、任期変更によって在任取締役の任期にどのような影響を与えるのかみていきます。

 

【ⅰ.取締役の任期の変更をするには定款変更の決議が必要】

 

株式会社では、定款で取締役の任期を定めています。そのため、取締役の任期を変更するためには、株主総会を開催して、定款変更の決議をしなければなりません。

 

株主総会の定款変更決議によって、取締役の任期を変更した後、当該株主総会の議事録を作成すれば手続き完了です。取締役の任期は登記事項ではないので、取締役の任期を変更しても、登記手続きをする必要はありません。

 

また、取締役の任期変更にともない、変更後の内容を記載した定款を新しく作成する場合、その定款について、公証人の認証を受けなくてもかまいません。株式会社の設立手続きの際に作成する定款は、公証人の認証を受けなければなりませんが、その場合とは異なります。

 

→ 株式会社設立の定款認証(電子定款認証)手続きについてはこちら

 

【ⅱ.任期変更によって在任取締役の任期に与える影響】

 

株式会社の取締役の任期を変更する際、通常、在任する取締役が存在します。そこで、取締役の任期を変更することによって、在任取締役の任期にどのような影響を与えるのでしょうか。取締役の任期を伸長した場合と短縮した場合について、それぞれみていくことにします。

 

【任期を伸長した場合】

 

取締役の任期を伸長すると、その効果は在任取締役にも及ぶのが原則です。そのため、在任取締役の任期満了前に取締役の任期を伸長した場合、その在任取締役の任期は、原則として伸長後の任期満了のときまでとなります。

 

たとえば、非公開会社(譲渡制限会社)の株式会社において、取締役の任期が、約2年(選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結のときまで)だったとします。それを約2年から約10年に変更した場合、それ以降、在任取締役の任期も約10年となるのです。(任期の起算日は、在任取締役が選任されたときになります。)そのため、上記のケースにおいて、約2年の任期満了を迎える定時株主総会の少し前に取締役の任期を伸長する変更を行うと、在任取締役の任期も伸長されるため、改選手続きをしないで済ませることができます。

 

一方、定時株主総会で取締役の任期伸長の変更決議をする際、当該総会で任期満了を迎える在任取締役にその効果が及ばないようにする方法はあるのでしょうか。

 

まずあげられるのが条件付で決議をする方法です。任期伸長の変更の効力発生時期を定時株主総会の終結後とすれば、当該総会で任期満了を迎える在任取締役にその効果を及ばないようにすることができます。

 

また、「在任取締役の後任として何某を取締役に選任した」旨を定時株主総会の議事録に記載しておくことで、任期伸長の変更の効果を在任取締役に及ばないようにすることが可能です。取締役の任期伸長の変更をする際、反対の意思表示があるなど特段の事情が存在する場合、任期伸長の変更の効果は在任取締役に及びません。そのため、上記の文言を記載しておけば、在任取締役の任期を伸長しない趣旨だと判断され、任期伸長の変更の効果を及ばないようにすることができるのです。

 

【任期を短縮した場合】

 

定款変更を行って取締役の任期を短縮した場合、在任取締役にもその効力が及んで任期が短縮されます。もし、取締役の任期を変更する旨の定款変更を行ったことにより、在任取締役の選任のときから起算した短縮後の任期がすでに満了している場合、その在任取締役は退任することになります。

 

上記のケースにおいて、在任取締役の退任日はいつになるのでしょうか。在任取締役は任期満了により退任するので、選任のときから起算した短縮後の任期満了日が退任日になるのではとも考えられます。ですが、この場合、取締役の任期を短縮する旨の定款変更を行った日が退任日となります。 

 

また、在任取締役が取締役の任期短縮にともなって退任となった場合、その際に生じた損害賠償を株式会社に請求できるのかという問題も存在します。取締役の任期短縮によって在任取締役が退任となったときの効果は、取締役を解任されたときと変わりません。会社法では、取締役が正当な理由なく解任された場合、株式会社に対し、解任によって生じた損害賠償を請求できると規定されています。(会社法339条②)そのため、取締役の任期短縮によって退任した在任取締役も解任された場合と同様、株式会社に対して損害賠償を請求できるのではとも考えられるところです。

 

東京地裁の判例(2015年6月29日判決、判例時報2274号113頁)では、取締役の任期短縮によって退任した在任取締役は、会社法339条②の規定の類推適用により、任期短縮による退任に正当な理由がある場合を除いて、株式会社に対して損害賠償を請求できるという判断が下されています。

 

株式会社が取締役の任期を短縮する場合、それによって退任となる在任取締役から損害賠償を請求される可能性があるので、その点を注意しなければなりません。

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