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登記手続きの対象となるのは、原則として配偶者の終身を目的とする配偶者居住権のみです。配偶者短期居住権は、登記手続きの対象に含まれません。
また、配偶者居住権の登記手続きには、以下の種類があります。
【ⅰ.配偶者居住権の設定登記】
配偶者は、相続発生後、遺産分割、遺贈、死因贈与によって配偶者居住権を取得することになります。このようなとき、「遺産分割」、「遺贈」、「死因贈与」を登記原因として、配偶者居住権の設定登記を行います。配偶者居住権の設定登記の登記原因日付は、それぞれ以下のとおりです。
登記原因 | 登記原因日付 |
登記原因が「遺産分割」の場合 | 遺産分割協議・調停の成立日、遺産分割審判の確定した日 |
登記原因が「遺贈」の場合 | 遺贈の効力が発生した日 |
登記原因が「死因贈与」の場合 | 死因贈与契約における贈与者が死亡した日 |
配偶者居住権の取得原因は、「遺産分割」、「遺贈」、「死因贈与」とされているため、特定財産承継遺言(相続させる旨の遺言)によって、配偶者居住権を取得できません。
しかし、配偶者に配偶者居住権を相続させる旨の記載がされた遺言書があった場合、登記実務においては、当遺言書の全体の記載内容から遺贈の趣旨であると解することに特段の疑義が生じない限り、配偶者居住権を配偶者に相続させる旨の記載を遺贈の趣旨と解して、配偶者居住権の設定登記できる旨の取扱がなされています。
配偶者居住権の設定登記は、配偶者と建物所有者の共同で申請手続きをするのが原則です。配偶者が「遺贈」を原因として配偶者居住権を取得した場合において、遺言執行者があるとき、当遺言執行者は登記義務者の法定代理人としての立場で、配偶者と共同して配偶者居住権の設定登記の申請手続きができるものと解されています。
その一方で、遺産分割の審判で配偶者が配偶者居住権を取得することが定められ、建物所有者に対してその旨の設定登記手続きをすることが命じられている場合、共同申請の原則の例外として、配偶者側が単独で登記手続きできます。
また、配偶者居住権の設定登記をする際、その前提として「相続」や「遺贈」を原因とする所有権移転登記がされていなければなりません。(以上:令和2年3月30日法務省民二324号)
【ⅱ.配偶者居住権の登記の抹消】
配偶者居住権を設定する際、存続期間についての別段の定めをすることも可能です。もし、存続期間についての別段の定めがされている場合、その定められた期間が満了すると、配偶者居住権は消滅します。(存続期間は配偶者居住権の登記事項であるため、存続期間についての別段の定めがあるか否かに関わらず、存続期間の登記がなされます。)
また、配偶者居住権は、配偶者の一身専属権にあたります。そのため、権利者である配偶者が亡くなった場合、その時点で配偶者居住権が消滅することになります。その他、配偶者と建物所有者の合意があったり、用法順守義務違反や無断増改築などで権利の消滅請求がなされたりした場合も、配偶者居住権が消滅します。
上記であげた原因によって、配偶者居住権が消滅した場合、登記を抹消する手続きをしなければなりません。
配偶者居住権の抹消登記は、原則として配偶者と建物所有者の共同で申請手続きを行います。ただ、配偶者が亡くなって配偶者居住権が消滅したときは、不動産登記法69条の規定に基づいて、建物所有者が単独で抹消登記の手続きをすることが可能です。(令和2年3月30日法務省民二324号)
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