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2021年(令和3年)4月28日に民法等の一部を改正する法律が公布されて、2023年(令和5年)4月1日より、具体的相続分による遺産分割を行える時期が制限されました。
【ⅰ.具体的相続分による遺産分割の時的制限の内容と当規定が設けられた理由】
当法改正により、相続開始時から10年経過した後に行う遺産分割は、具体的相続分ではなく、法定相続分または指定相続分によることとなりました。(民法904条の3本文)。
この規定により、相続開始時から10年経過した後は、原則として法定相続分または指定相続分に基づいて遺産分割を行うことになります。特別受益や寄与分を考慮に入れた具体的相続分による遺産分割は、原則として、相続開始時から10年以内に行わなければなりません。
当法改正前まで、具体的相続分による遺産分割の時的制限がなかったため、手続きが長期化しても、特別受益や寄与分を考慮に入れた遺産分割を希望する相続人に不利益は生じませんでした。それにより、遺産分割を早期に行うことによる相続人のインセンティブも働きにくいため、相続発生後、遺産分割の手続きが進まないまま長期間経過してしまうケースもありました。
しかし、このような状況が続くと、数次相続の発生で相続人も多数に膨れ上がってしまい、遺産分割を行ったり、遺産の管理や処分をしたりすることが困難となる場合も出てきてしまいます。さらに、相続人同士が疎遠状態でお互い連絡を取ることが難しい状況にある場合、所有者不明土地の発生につながる可能性も生じるため、好ましくありません。
また、相続開始時から遺産分割の手続きが進まないまま長期間経過すると、特別受益や寄与分に関する書類を紛失したり、相続人の記憶が薄れたりすることにより、具体的相続分の算定が困難になるという問題もあります。
そのようなことから、上記の問題を解消するため、具体的相続分による遺産分割を希望する相続人に早期の分割請求を促す効果を期待して、当規定が設けられたのです。
【ⅱ.具体的相続分による遺産分割の時的制限規定の例外】
具体的相続分による遺産分割の時的制限規定の例外に該当する場合、相続開始時から10年経過した後でも、具体的相続分による遺産分割を行えるケースもあります。
当規定の例外に該当する事由は、具体的に以下のとおりです。
相続開始時から10年経過前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき |
相続開始時から10年の期間満了前の6ヶ月以内の間に、遺産分割請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合、当事由が消滅したときから6ヶ月経過前に、当相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき |
相続開始時から10年経過後に、具体的相続分による遺産分割を行う旨の相続人全員の合意がある場合 |
【ⅲ.施行日「2023年(令和5年)4月1日」前に発生した相続も適用対象】
具体的相続分による遺産分割の時的制限規定は、当改正法の施行日である2023年(令和5年)4月1日より前に発生した相続における遺産分割も、その適用対象となる点に注意が必要です。
当改正法の施行日前に発生した相続においての具体的相続分による遺産分割の時的制限期間は、経過措置により、相続開始時から10年経過時または当改正法施行時から5年経過時のいずれか遅い時までと定められています(当改正法附則3)。
たとえば、2018年(平成30年)2月1日に相続が発生した場合、相続開始時から10年経過した時が当法改正施行時から5年経過した時よりも前に到来します。そのため、この場合の具体的相続分による遺産分割の時的制限期間は、当改正法施行時から5年経過した時までです。
一方、2023年(令和5年)2月1日に相続が発生した場合、当改正法施行時から5年経過した時が相続開始時から10年経過した時よりも前に到来します。したがって、このケースで具体的相続分による遺産分割を行えるのは、相続開始時から10年経過した時までということになります。
【当改正法施行日前に発生した相続の具体的相続分による遺産分割の期限】
相続開始時と当改正法施行時の関係 | 遺産分割の期限 |
施行日時点で相続開始時から10年経過している場合 | 当改正法施行日から5年経過した時まで |
相続開始時から10年経過した時が当改正法施行時から5年経過した時よりも前に到来した場合 | 当改正法施行日から5年経過した時まで |
当改正法施行時から5年経過した時が相続開始から10年経過した時よりも前に到来した場合 | 相続開始時から10年経過した時まで |
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