取締役が任期満了となる定時株主総会で再選されない場合、退任することになるので、原則として取締役の退任登記の手続きを行います。取締役が辞任して退任した場合も同様です。

 

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しかし、取締役が任期満了や辞任により退任した場合であっても、退任登記をすることができない場合があります。それは、当該取締役が権利義務取締役に該当する場合です。

 

そこで、権利義務取締役について具体的にみていきます。

 

【ⅰ.権利義務取締役とは?】

 

権利義務取締役とは、退任した取締役がその後も取締役の権利義務を有している人のことをいいます。

 

取締役が任期満了または辞任によって退任した場合、それによって、取締役がいなくなったり、法令や定款で定めた取締役の員数を欠く状態になったりしたとしましょう。このような場合、会社法では、退任した取締役が後任の取締役が就任するまで、引き続き権利義務を負わなければならないと定めています。(会社法346条①)そのような規定があることから、任期満了または辞任によって退任した取締役が権利義務取締役に該当する場合、後任の取締役を選任しなければ、退任登記をすることができません

 

取締役と同様に代表取締役も権利義務代表取締役になる場合があります。具体的には、取締役の任期満了または辞任により退任したときや代表取締役の地位のみを辞任したときなどによって、代表取締役がいなくなったり、定款で定めた代表取締役の員数が欠けたりした場合です。(会社法351条①)

 

しかし、代表取締役としての地位は、取締役の地位を有していることが前提となります。そのため、上記のようなケースでも、取締役を退任して権利義務取締役とならない場合、権利義務代表取締役にもなりません。たとえば、取締役がAとBの2名、代表取締役がAという役員構成の株式会社(取締役会を設置していない会社)があったとしましょう。この場合、Aが取締役を辞任した場合、取締役の権利義務を承継することなく、確定的に退任します。それにより、取締役の地位を前提とする代表取締役の地位も退任することになります。これにより、代表取締役がいなくなってしまいますが、Aは権利義務代表取締役にはならないのです。

 

【ⅱ.複数の取締役が退任したときの権利義務取締役について】

 

複数の取締役が同時に退任した際、どの退任取締役が権利義務取締役となるのでしょうか。

 

たとえば、定款で取締役の員数が3名以上と定めている取締役会設置会社でA、B、C、Dの4名の取締役が在籍していたとします。このうち、取締役A、B、Cの3名が同時に退任し、その後任者を選任しなかった場合、取締役が2名不足することになります。そのため、退任した取締役A、B、Cの3名のうち、2名を権利義務取締役として取り扱えばよいとも考えられるところです。

 

ですが、上記のケースでは、退任した取締役A、B、C全員が権利義務取締役となります。同時に複数の取締役が退任した場合、どの取締役が権利義務取締役に該当するのかという区別をすることができません。そのようなことから、同時に退任した取締役全員を権利義務取締役として扱うことにしているのです。(S37・8・18民事甲2350号)

 

【ⅲ.権利義務取締役の権限】

 

権利義務取締役は、取締役の退任後も引き続きその権利義務を負っている人のことをいうので、通常の取締役と同じ権限を有しています。そのため、取締役会の構成員になって、会社の業務執行の決定を行うことが可能です。また、権利義務取締役が代表取締役となって、会社の業務執行をすることもできます。

 

【ⅳ.権利義務取締役の退任日はいつか?】

 

退任した取締役が権利義務取締役となっている場合、その後、後任の取締役が就任すれば、退任した取締役は、その権利義務から解放されます。それにより、取締役の退任登記を申請することも可能となります。

 

そこで、権利義務取締役についての退任登記をする場合、その日付はいつになるのでしょうか。権利義務取締役が取締役を退任したのは、任期満了日または辞任した日です。そのため、任期満了日または辞任した日をもって、権利義務取締役の退任登記を行います。

 

また、権利義務取締役が代表取締役に選定されていて、その後、権利義務取締役の後任の取締役が就任したときの退任日はどのようになるのでしょうか。この場合、取締役の退任日は上記と同じです。一方、代表取締役の退任日は、権利義務取締役ではなくなった日になります。

 

【ⅴ.権利義務取締役の辞任および解任は可能か?】

 

権利義務取締役の地位は、法律の規定によって与えられたものです。そのため、権利義務取締役を辞任したり、解任したりすることができません

 

また、株主による取締役の解任の訴え(会社法854条)によっても、権利義務取締役の解任請求することはできないという最高裁の判例もあります。(最判H20・2・26判決)もし、権利義務取締役をその地位から退かせたいのであれば、後任の取締役を選任するなどして対応する必要があります。

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