贈与とは、ある人が他の人へ無償で財産を与えるという内容の契約のことで、原則として贈与契約が成立した日にその効力が生じます。しかし、契約当事者間で贈与者が死亡したときにその効力が成立する内容の贈与契約を締結することも可能です。このような贈与契約のことを死因贈与といいます。

 

そこで、死因贈与にはどのような特徴があるのか、登記手続き方法と合わせてみていくことにします。

 

【ⅰ.死因贈与の特徴】

 

死因贈与は、贈与者が死亡したときに贈与の効力が生じるので、遺贈と同じような効果をもたらせます。そのため、死因贈与は、その性質に反しない限り、遺贈の規定が準用されているのです。

 

たとえば、遺言で財産を承継させようとする場合、遺言執行者を定める場合も少なくありませんが、死因贈与の契約を締結する際にも、執行者を定めることが可能です。また、法の規定の準用ではありませんが、財産を無償で承継した人が相続税の対象になる点も、死因贈与と遺贈は共通しています。

 

これに対して、死因贈与は、当事者間で合意によって行うものであるのに対し、遺贈は財産を承継させる人の一方的な意思表示によって行うものであるなど、その性質が相違する点も少なくありません。

 

そのため、遺贈の規定が準用されていない事項も一定数あります。具体的には以下のとおりです。

 

【遺言能力】

 

民法では15歳になると遺言をすることができると定められています。そのため、遺言能力があれば、成年に達しなくても遺言をすることが可能です。

 

しかし、死因贈与は遺言能力に関する規定は準用されていないので、成年に達しなければ原則として自分1人で契約を締結することができません。

 

【遺言の方式】

 

 遺言は民法の規定にしたがって遺言書を作成しなければ、原則として無効となってしまいます。

 

一方、死因贈与の場合、遺言の方式に関する規定は準用されていないので、自由な方式で死因贈与契約書を作成することが可能です。また、契約書を作成しないで、当事者間の口約束のみによって契約を締結できます。

 

【遺贈の放棄】

 

遺贈が特定遺贈の場合、受遺者は遺言者が死亡した後、いつでも放棄することができます。包括遺贈の場合は、相続放棄の規定が準用されるので、被相続人が死亡して、そのことにより自分が相続人になったことを知ったときから3ヶ月以内に放棄をすることが可能です。

 

しかし、遺贈の放棄に関する規定は死因贈与に準用されていません。少なくとも契約書を作成して死因贈与の契約をした場合、原則として受贈者1人で放棄することはできません。

 

【ⅱ.死因贈与による不動産の登記手続き方法】

 

不動産を死因贈与契約の対象とした場合、契約の効力が生じると贈与者から受贈者へ権利が移転します。そのため、不動産の名義を贈与者から受贈者へ変更する登記手続きをしなければなりません。

 

死因贈与による不動産の登記手続きは、契約の効力が発生したときに贈与者から受贈者へ所有権移転登記をする方法により行います。しかし、契約の際に受贈者名義の仮登記をした後、死因贈与の効力が発生したときに本登記をすることも可能です。

 

上記2つの具体的な登記手続き方法は、以下のとおりです。

 

【効力発生後に所有権移転登記する方法】
 

一般の贈与と同じように贈与者と受贈者が共同で登記手続きをします。しかし、贈与者はすでに死亡しているので、登記手続きに関与できません。この場合、受贈者と贈与者の相続人全員が共同で登記申請手続きを行います。

 

→ 贈与の登記手続きについてはこちら
 

→ 贈与の登記をするにおいての注意事項についてはこちら


 

死因贈与契約書に死因贈与執行者の指定がある場合、執行者が贈与者の代わりに手続きに関与します。

 

ただ、執行者を指定して死因贈与の登記手続きを行う場合、契約書を公正証書にしておいたほうが好ましいといえるでしょう。なぜなら、契約書が私署証書(私人が作成して署名捺印した文書)である場合、登記手続きをする際に、執行者の印鑑証明書だけでなく、贈与者が契約書に捺印した実印についての印鑑証明書または贈与者の相続人全員の承諾書(印鑑証明書付)を提出しなければならないからです。

 

死亡した贈与者の印鑑証明書が用意できない場合、その相続人全員から承諾書へ実印で捺印してもらったうえで印鑑証明書を準備してもらわなければなりません。贈与者の相続人のなかで非協力的な人がいる場合、手続きを進めるのに支障が出てしまう可能性も出てきます。

 

そのようなことから、死因贈与の登記手続きをスムーズに進めるために、契約書を公正証書にしておいたほうがよいのです。
 

【契約のときに仮登記をした後、効力発生したときに本登記をする方法】  
 

死因贈与の契約を締結した場合、贈与者の死亡を始期とする所有権移転仮登記の手続きをすることが可能です。上記仮登記は、死因贈与の贈与者と受贈者の共同で手続きするのが原則ですが、贈与者の承諾があれば、受贈者が単独で手続きできます。

 

死因贈与の始期付所有権移転の仮登記を受贈者の単独申請の形で手続きをする場合、贈与者の印鑑証明書を承諾書と一緒に提出しなければならないのが原則です。

しかし、死因贈与契約書を公正証書で作成し、その契約書のなかに「贈与者が死因贈与に基づく所有権移転仮登記を承諾する」旨の文言をいれておけば、贈与者の印鑑証明書を提出することなく手続きができます。

 

贈与者が死亡して、死因贈与の効力が発生した後は、受贈者と贈与者の相続人全員または執行者が共同で仮登記の本登記手続きを行います。

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