遺産を現物のまま相続しようとする場合、現物分割または代償分割の方法を活用して遺産分割を行います。
 

→ 現物分割についてはこちら

→ 代償分割についてはこちら
 

しかし、遺産の内容によっては、どうしても現物のままでは分けられないこともあるでしょう。そのような場合、遺産を換価して、その現金を各相続人が相続するという方法を取るのです。この手順で行われる遺産分割を換価分割といいます。

 

【ⅰ.どのような状況が換価分割に適するのか】

 

遺産分割を行う際、換価分割の方法を選択するのが適しているのはどのような場合なのでしょうか。まず、相続人全員で公平に遺産分割をしたいときです。遺産を処分して現金化し、その現金を各相続人へ法定相続分どおりに分配すればよいので、公平な遺産分割を実現できます。
 

遺産のなかに分割しにくい財産があるときも、換価分割が適しているといえるでしょう。このような場合、代償分割の方法で手続きをすることも考えられます。しかし、遺産を取得する相続人に、代償の対価を負担できる資力がなければ、代償分割の方法を利用できません。一方、換価分割の場合は代償金や代償財産を用意する必要はないので、相続人の資力の有無に関係なく手続きすることができます。
 

また、遺産分割を行う際、換価分割に適さない場合もいくつかあります。まず、相続人の一人が遺産である不動産に居住しているときです。このようなケースで換価分割を行ってしまうと、処分された不動産に居住している相続人は住む場所を失ってしまいます。
 

短期間で遺産分割を行いたい場合も換価分割は不向きです。遺産のなかには、不動産など処分して現金化するまで時間がかかるものも少なくありません。そのため、換価分割を選択すると相続手続きが長期化するケースも多いです。

 

【ⅱ.不動産を処分して行う換価分割について】

 

換価分割をする場合、遺産のなかでも分割しにくい財産を処分することになります。不動産は、分割しにくい上に数百万円から数千万円単位の価値があります。そのため、換価分割をする際、処分の対象になることも少なくありません。不動産を処分して換価分割を行う場合、考慮しなければならない問題があるので、その点を踏まえながら手続きすることが大切です。

 

【遺産分割協議と贈与税の問題】

 

不動産を処分して換価分割を行うには、その前提として相続登記をしなければなりません。相続人の名義にしておかないと、遺産である不動産を売却できないからです。各相続人が法定相続分どおりに売却代金を取得するには、相続人全員の共有名義で登記した後、相続人全員で不動産を処分しなければならないと考えられます。売却代金は不動産を処分した対価なので、各相続人は取得した売却代金の割合に相当する不動産の権利を有していなければならないからです。もし、登記名義人ではない相続人が不動産の売却代金を取得した場合、登記名義人の相続人から贈与を受けた形になります。そのため、登記名義人ではない相続人に対して贈与税が課税されるのではという問題が出てきてしまうのです。
 

しかし、単独名義で相続登記をした後、不動産を処分して換価分割を行った場合でも、原則贈与税の問題にはなりません。単独名義で相続登記をしたことが、不動産を換価するための便宜上のものであり、売却代金が遺産分割の内容にしたがって分けられていれば、贈与にならないとの見解を国税庁が示しています。国税庁への照会事例は、遺産分割調停の事例ですが、相続人全員で遺産分割協議を行ったケースでも同様に考えてよいでしょう。
 

→ 遺産の換価分割のための相続登記と贈与税(国税庁HP)についてはこちら
 

換価分割をする際、遺産分割協議書に「換価分割である旨」「相続人間の分割割合」を忘れずに記載しておくことが大切です。

 

【譲渡所得税の問題】

 

換価分割のために相続不動産を処分した場合、売却益が発生すると、原則相続人に対して譲渡所得税が課税されます。複数の相続人がいるときは、取得した売却代金の割合に応じて、譲渡所得税を負担しなければなりません。売却益は「売却価格−(取得費+譲渡費用)」で算出します。
 

たとえば、相続人2名で換価分割を行い、相続不動産を処分したとしましょう。相続不動産の売却価額が3000万円、取得費と譲渡費用が2000万円だったとすると、売却益は1000万円になります。2名の相続人が各2分の1ずつ売却代金を取得した場合、それぞれが500万円の売却益を得たと扱われます。そのため、2名の相続人は、500万円に一定の税率を乗じた額を譲渡所得税として申告しなければなりません。換価分割をして相続手続きを行うと、思わぬ出費を強いられることがあるので注意しましょう。
 

ただ、売却益が発生しても状況によっては譲渡所得税がかからないケースもあります。例えば、被相続人と同居していた相続人が相続不動産を処分したときです。この場合、相続不動産は相続人の居住用の不動産に当たります。売却した不動産が居住用であるとき、3000万円の特別控除を受けることが可能です。そのため、売却益が3000万円以下であれば、相続人に対して譲渡所得税がかかりません。
 

また、相続税が課せられるとき、負担する譲渡所得税額を少なくできる場合があります。相続税申告書の提出期限の翌日以後3年以内に換価分割で相続不動産を処分すると、納税した相続税を取得費に加えることが可能です。それにより、売却益が少なくなるので、負担する譲渡所得税額を抑えることができます。

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