〒350-1308 埼玉県狭山市中央三丁目6番G-206号
遺産を現物のまま相続しようとする場合、現物分割の方法を選択して遺産分割を行うのが通常です。
また、物理的に分割するのが難しい財産や分割しにくい財産が被相続人の遺産の中に含まれていて、各相続人の遺産の取得割合を調整する必要性が生じた場合、代償分割の方法で遺産分割を行うケースもあります。
しかし、物理的に分割するのが難しい財産や分割しにくい財産が被相続人の遺産の中に含まれていて、なおかつ相続人が他の相続人に代償金を支払う資力がない場合、現物分割や代償分割の方法で遺産分割ができないケースも出てきます。
このような場合、被相続人の遺産の中に含まれる物理的に分割するのが難しい財産や分割しにくい財産を処分(売却等)をして現金化した上、各相続人が法定相続分等の一定の割合でその現金を相続する内容の遺産分割が行われることもあります。この手順で行われる遺産分割を換価分割と言います。
【ⅰ.換価分割が適する場合と適さない場合】
遺産の種類や内容、相続人の数・状況、各相続人の遺産を相続する意思の有無等によって、遺産分割を行う際、換価分割を選択するのが適する場合と適さない場合があります。
【換価分割が適する場合】
各相続人の遺産の取得割合が平等になる形で遺産分割を行いたい場合、換価分割が適しています。換価分割は、被相続人の遺産の中に含まれる財産を処分(売却等)をして現金化した上、その現金を各相続人が取得する形の遺産分割方法です。現金であれば、各相続人が望む遺産の取得割合にしたがって分けることが容易であるため、公平な形での遺産分割を実現できます。
被相続人の遺産の中に分割が困難な財産が含まれていたり、相続人全員から相続を望まれていない財産があったりする場合も換価分割に適していると言えます。
被相続人の遺産の中に分割が困難な財産が含まれているケースでは、代償分割の方法で手続きすることも考えられますが、遺産を取得する相続人に代償の対価を負担する資力がなければ、当方法による遺産分割はできません。ですが、換価分割の場合は、相続人における代償の対価を負担する資力の有無に関係なく手続きすることが可能です。
また、空き家となっている実家や相続人の自宅から遠方にある更地等が被相続人の遺産の中に含まれている場合、使用予定がない上、物件の維持費や税金等の負担も重なることを理由に、相続人全員がこれらの財産の相続を望まないケースもあります。このような場合でも、換価分割の方法を活用すれば、遺産を処分(売却等)して現金化する形で相続手続きを進められます。
納税資金の確保が必要なケースにおいても、換価分割は適しています。高額な不動産が被相続人の主な遺産で、相続税の課税対象となる場合、相続人の自己資金や遺産の中に含まれる現金・預貯金等の資金だけでは、納税資金の確保が難しい時もあります。このような場合、換価分割の方法で、被相続人の一部の遺産を処分(売却等)後に現金化した上、各相続人が現金を取得することで納税資金の確保が可能となります。
【換価分割が適さない場合】
被相続人の遺産を現物のまま相続したいと考える相続人がいる場合、換価分割の方法は適しません。たとえば、被相続人A、相続人はB(Aの妻)、C(Aの子)の2名で、相続発生前までBはA名義の土地・建物にAと同居していたとします。このような場合、換価分割の方法を選択して、現金化のために遺産であるA名義の土地・建物を処分しまうと、Bは住む場所を失ってしまうため好ましくありません。
また、相続発生から短期間で遺産分割を行って相続手続きを進めたい場合も換価分割は不向きです。遺産の種類の中には、不動産等処分(売却等)して現金化できるまで時間がかかるものもあります。そのようなことから、換価分割を選択して遺産分割協議を行うと、相続手続きが長期化してしまうケースも少なくありません。
【ⅱ.不動産を処分して行う換価分割について】
換価分割をする場合、遺産の中でも現物での分割が困難な財産や分割しにくい財産を処分(売却等)の対象にするのが通常です。不動産は、物理的に分けるのが難しい上に、数百万円から数千万円単位の価値があります。そのため、換価分割をする際、不動産が処分(売却等)の対象になることも少なくありません。
不動産を処分(売却等)して換価分割を行う場合、考慮しなければならない問題があるため、その点を踏まえながら手続きすることが大切です。
【遺産分割協議と贈与税の問題】
被相続人の遺産である不動産を処分(売却等)して換価分割を行うには、その前提として相続登記をしておかなければなりません。相続人の名義にしておかないと、遺産である不動産を処分(売却等)できないからです。
不動産を換価後、各相続人が法定相続分の割合で現金を取得するには、相続人全員の共有名義(持分は法定相続分の割合)にする形で相続登記を行った上、相続人全員で不動産を処分(売却等)しなければならないものと考えられます。売却代金は不動産を処分(売却等)した対価なので、各相続人は取得した売却代金の割合に相当する不動産の権利を有していなければならないからです。
もし、登記名義人ではない相続人が不動産の売却代金を取得した場合、登記名義人の相続人から贈与を受けた形になります。仮に特定の相続人の単独名義で相続登記を行った上、不動産を換価した後、売却代金を相続人全員で法定相続分のとおりに分けた場合、登記名義人とならなかった相続人に対して贈与税が課税されるのではという問題が生じます。
しかし、特定の相続人の単独名義で相続登記をした上、不動産を換価後、複数名の相続人間で現金を分ける旨の換価分割を行った場合でも、一定の要件を満たせば、贈与税の課税は問題にならないと考えられます。特定の相続人の単独名義で相続登記をしたことが、不動産を換価するための便宜上のものであり、売却代金が遺産分割の内容にしたがって分けられていれば、贈与にならない旨の質疑事例の回答が国税庁からなされています。当質疑事例は、遺産分割調停の事例ですが、相続人全員で遺産分割協議を行ったケースでも同様に考えてよいでしょう。
→ 遺産の換価分割のための相続登記と贈与税(国税庁HP)についてはこちら
上記内容の換価分割を行った場合、不動産を換価後、各相続人間へ売却代金を分配した行為が贈与ではなく、遺産分割の中での手続きとしてなされたことを外部に証明できるようにしておく必要があります。そのようなことから、遺産分割協議書に「換価分割である旨」と「相続人間の分割割合」を忘れずに記載しておくことが大切です。
【譲渡所得税の問題】
換価分割のために相続不動産を処分(売却等)した場合、売却益(譲渡所得)が発生すると、原則として、相続人に対して譲渡所得税が課税されます。複数の相続人がいる時は、相続不動産を換価後、各相続人が取得した現金(売却代金)の割合に応じて、譲渡所得税を負担しなければなりません。売却益(譲渡所得)は「売却価額−(取得費+譲渡費用)」で算出します。
たとえば、相続人2名で換価分割を行い、相続不動産を処分(売却等)したとしましょう。相続不動産の売却価額が3000万円、取得費と譲渡費用が2000万円だったとすると、売却益(譲渡所得)は1000万円になります。2名の相続人が各2分の1ずつ売却代金を取得した場合、それぞれが500万円の売却益(譲渡所得)を得たと扱われます。そのため、2名の相続人は、それぞれ500万円に一定の税率を乗じた額を譲渡所得税として申告しなければなりません。換価分割をして相続手続きを行うと、思わぬ出費を強いられることがあるので注意が必要です。
ただ、一定の要件を満たした場合、売却益(譲渡所得)から特別控除額を差し引けるため、相続不動産の換価によって売却益(譲渡所得)が発生しても、譲渡所得税がかからないケースもあります。たとえば、被相続人と同居していた相続人が相続不動産を処分(売却等)した時です。
この場合、相続不動産は相続人の居住用の不動産に当たります。売却した不動産が居住用である時、3000万円の特別控除を受けることが可能です。そのため、売却益(譲渡所得)が3000万円以下であれば、相続人に対して譲渡所得税がかかりません。
→ 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(国税庁HP)についてはこちら
また、相続税が課せられる時、負担する譲渡所得税額を少なくできる場合があります。相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに換価分割で相続不動産を処分(売却等)すると、処分(売却等)した相続不動産の相続税評価額に対応する相続税額を「取得費」に加えることが可能です。それにより、売却益(譲渡所得)が少なくなるため、負担する譲渡所得税額を抑えることができます。
担当:佐伯(さえき)
受付時間:9:00~18:30
定休日:土日祝祭日
遺産相続相談、遺言・相続手続き、遺言書作成のご相談、相続、売買、贈与、抹消などの不動産登記手続き、会社設立、役員変更などの会社の登記手続きは、実績のある埼玉・狭山の佐伯司法書士事務所にお任せください。
親切・丁寧な対応をモットーとしております。お気軽にご相談ください。
対応エリア | 狭山市、日高市、入間市、鶴ヶ島市、所沢市、川越市、飯能市、坂戸市、その他埼玉県、東京都など関東地方全域 |
---|
一般の相続関連業務
家庭裁判所で行う相続関連業務
不動産登記関連業務
会社・法人登記関連業務
業務に関するQ&A等
改正情報
お役立ち情報
相続に関する知識
遺言に関する知識
お客さまの声
事務所紹介
狭山市、日高市、入間市、鶴ヶ島市、所沢市、川越市、飯能市、坂戸市、その他埼玉県、東京都など関東地方全域