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ローン完済によって抵当権が消滅してから10年以上の長期間が経過した後であっても、その当時に金融機関から発行を受けた抹消登記書類があれば、それを利用して手続きすることが可能です。
しかし、上記のようなケースで、ローン完済によって抵当権が消滅してから、抵当権抹消登記手続きをするまでの間に、金融機関の代表者が変更になっていることも少なくありません。その場合、抵当権抹消登記手続きをする時点での金融機関の代表者とローン完済時に金融機関から発行を受けた抹消登記書類(金融機関の委任状・解除証書など)に記載されている代表者名が相違することになるため、この点が手続き上で支障になるのではとも考えられます。
そこで、金融機関の代表者変更がある場合の抵当権抹消登記手続きとその方法について見ていきます。
【ⅰ.ローン完済時に発行された抹消登記書類を使用して手続きできる】
抹消登記書類の発行を受けてから抵当権抹消登記手続きをするまでの間に、金融機関の代表者変更があったとします。このような場合でも、ローン完済時に発行された抹消登記書類を使用して、抵当権抹消登記手続きができます。なぜなら、金融機関の代表者変更があっても、登記申請の代理権は消滅しないからです。
不動産登記法においては、「代理権の不消滅」の規定があります。
(代理権の不消滅) 不動産登記法17条 登記の申請をする者の委任による代理人の権限は、次に掲げる事由によっては、消滅しない。
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第4項にある「法定代理人」には、法人の代表者も含まれると解されています。登記申請の代理権は、上記第4項の規定により、法人である金融機関の代表者変更があっても消滅しません。したがって、金融機関の代表者変更があった場合でも、変更前の代表者名で作成されている抹消登記書類を使用して手続きすることができるのです。
【ⅱ.金融機関の代表者変更がある場合の抵当権抹消登記手続きの方法】
ローン完済時に発行された変更前の代表者名義で作成されている抹消登記書類を使用して手続きをする場合、その方法は通常の抵当権抹消登記の時と基本的に変わりません。しかし、手続きをする際、登記申請書上において明らかにしなければならない事項がある点で、通常の抵当権抹消登記の時と異なります。
上記方法で抵当権抹消登記の手続きをする場合、「前代表者の代表権限が消滅した旨」と「前代表者が代表権限を有していた時期」を登記申請書に記載して、その旨を明らかにしなければなりません。
また、前代表者が代表権限を有していたことを確認できる情報の提供も必要です。基本的には、金融機関の会社法人等番号を提供して対応することになります。
もし、金融機関の会社法人等番号の提供だけでは、前代表者が代表権限を有していたことを確認できない場合、その旨が確認できる閉鎖謄本などを提出する必要があります。
金融機関の代表者変更があった場合、その前に発行された抹消登記書類を使用するのではなく、現代表者名義で作成されている抹消登記書類を再発行してもらった上で抵当権抹消登記手続きをする方法もあります。
この場合、抵当権抹消登記手続きは、発行を受けた抹消登記書類を紛失してしまった時に準ずる形で進めていくことになります。
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